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世界一の司令塔ダン・カーターが語る、勝負強さの作り方。【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
決定的なドロップゴール。(写真:ロイター/アフロ)

 今季からトップリーグの神戸製鋼に加わったダン・カーターは、ニュージーランド代表112キャップを持つ希代のスター。通算個人得点を世界歴代1位の1598に伸ばすなど安定したパフォーマンスを発揮してきた。

 代表引退前には、大勝負におけるビッグプレーでも光った。

 2015年10月30日、イングランドはトゥイッケナムスタジアム。自陣最後の出場となったワールドカップの決勝で、後半29分頃に40メートル超のドロップゴールを決める。

 この日は試合中盤までに大量リードも、対するオーストラリア代表の猛反撃で一時4点差に迫られていた。ところがカーターが自らの足でスコア差を7に広げ、34―17で勝ってニュージーランド代表を大会2連覇に導いた。

 いったいなぜ、カーターはこうも勝負強いのか。7月16日、神戸市内でおこなわれた入団会見後の囲み取材時にそのバックグラウンドを語っている。すべてのスポーツ愛好家、若手スポーツ選手の参考になるかもしれない。

 本稿ではこの囲み取材時に発した言葉のほとんどを紹介している。

 以下、共同取材時の一問一答の一部(編集箇所あり)。

――ビッグゲームでいいプレーをするには。

「その試合がある週の準備が大切になります。高いプレッシャー下でいいプレーをするために、色々なことをやっています」

――ニュージーランドのクラブ、クルセイダーズに在籍していた時の恩師、ロビー・ディーンズさんは現在、日本のパナソニックで指揮を執っています。日本で対戦の可能性があります。

「ディーンズさんはパナソニックでもいい結果を出しています。私がプロとして最初に加わったのがディーンズさんのチームでした。数年を経て、彼が指導するチームと対戦できます。ただ、対戦するのは初めてではありませんね。彼はオーストラリア代表を率いたこともあり、その時私はオールブラックス(ニュージーランド代表)でした」

――ジェイミー・ジョセフ、トニー・ブラウンが指導する日本代表をどう見るか。また、日本代表が結果を出すには。

「ハイランダーズでも結果を出している(2015年スーパーラグビーで優勝)、取り組み方の素晴らしいハードワークするコーチ陣だと思います。彼らはおそらく、選手たちがリーダーシップを取れる環境を作ろうとしています。日本人には素晴らしい選手がいますが、状況判断力が課題となっています。ジョセフは、選手たちが状況判断をできるような環境を作ろうとしているのでは。ワールドカップではセカンドチャンスがないので、1試合、1試合、大事にすべきと考えています。これから新しい選手が加わると思いますが、チームの層を厚くすれば、より良い結果を出せる」

――冒頭の質問にも重なるかもしれませんが、状況判断力はどうつけるか。

「状況判断をしなくてはならないような形の練習をすると、試合で状況判断がしやすくなる。練習でプレッシャーがないと、外から見てすばらしく映ったとしても試合になるとよくなくなる場合が多い。練習でプレッシャーをかけ合うことで、試合のなかでの状況判断ができるようになると思います」

――同じ街のサッカーチーム、ヴィッセル神戸にはスペイン代表のアンドレス・イニエスタ選手が加入しました。

「あの選手のことはよく知っています。スペイン代表のレジェンド。彼のいたバルセロナの試合はよく観に行ったことがあり、バルセロナが一番好きなサッカーチーム。彼のいないバルセロナには違和感を覚えるかもしれませんが、日本できっといい活躍をすると思います」

――フランスのシーズン終了後、どう過ごしていたか。日本の暑さについては。

「フランスのシーズン後はリカバリー。ニュージーランドで家族との時間を取り、日本に来ました。完全に休んだわけでなく、トレーニングは続けていました。フィットネスもある状態です。

 ニュージーランド、本当に寒いんですよ。だから、この暑さのなかでできるのはいいことです。湿度が高いので、そこへのチャレンジはありますが」

――神戸製鋼のスタンドオフには、サンウルブズで活躍したヘイデン・パーカー選手がいます。ゴールキックに定評があります。

「4~5年前に対戦したことがあります。若い選手で、数年来、成長してきている。彼はフランスでもトップ選手になれると思います。彼と一緒にプレーできることは楽しみですし、彼がさらに成長できるような取り組みをしていきたいです」

 夏が終わる前の8月31日、今季のトップリーグが開幕する。カーターのクールな判断がスタンドに熱気をもたらす。

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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