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ゴールキック10割成功のヘイデン・パーカーが、サンウルブズの試合運びを解説。【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
レフティーが躍動。(写真:アフロ)

 国際リーグのスーパーラグビーに日本から参戦のサンウルブズが5月12日、開幕から10戦目にして今季初勝利を挙げた。レギュラーシーズン中は最後の国内開催試合となった東京・秩父宮ラグビー場での第13節で、レッズに63-28で勝利。ヘイデン・パーカーは12度あったゴールキックの機会をすべて成功させるなど活躍した。

 ニュージーランド出身の27歳。身長175センチ、体重82キロと小柄も、司令塔のスタンドオフとして地域代表選手権のオタゴ代表、スーパーラグビーのハイランダーズなどでプレーしてきた。今季新加入のサンウルブズでは、ハイランダーズ時代から指導を受けていたジェイミー・ジョセフヘッドコーチ、トニー・ブラウンアタックコーチらのもとでプレー。首脳陣が打ち出すキック主体の戦法に慣れている。

 2015年には日本のトップリーグにあるパナソニックに在籍し、リーグ戦からプレーオフまで蹴ったすべてのゴールキックを成功させている(28本連続)。

 

 この日は前半2、7分にペナルティーゴールを決めて6-0とリードし、その後は自陣から敵陣へのキックを放ってその後の防御で相手に圧力をかけた。チームは19日、香港で南アフリカのストーマーズとぶつかる。

 以下、共同取材時の一問一答の一部(編集箇所あり)。

――ゴールキックについて。

「いつもと同じように、任されたショットを蹴るのみでした。すべて決まると気持ちがいい。いつもこうなるわけではないので、きょうのような日はしっかり喜ぼうと思います。キックが決まり続けると自信がつき、他のプレーもよくなります」

――試合運びについて。

「きょうはキックを多く使い、相手と対峙することを念頭に置いていました。頭を使う部分で、よくできた。アタックは得点するためのものだと思っていますが、同時にアタッキングキックもボールを前に進めるため、攻撃中に自分たちがしたいコンペティションをするための有効な手段だと思います」

 キックによる「攻撃中に自分たちがしたいコンペティション」。最たる例は、前半33分の自らのトライシーンだろう。

 自陣10メートル線付近のスクラムから球が出ると、パーカーら後方のバックスラインは左右へ拡散する。

 右にパスがつながると、途中出場で元ハイランダーズのジェイソン・エメリーが相手防御の裏へキック。慌てて駆け戻るレッズ陣営に対し、大外の快速ウイングである福岡堅樹が勢いよく弾道を追う。結果、敵陣中盤あたりで球を確保できた。

 能動的に球を手放し、能動的に相手と球を奪い合う。そんな「自分たちがしたいコンペティション」の末、サンウルブズは左へ大きく展開する。乱れた防御を切り裂きにかかる。

 パスはやや後退したが、中央にいたナンバーエイトの姫野和樹が飛び込んでくるタックラーを蹴散らしたことで前進。その次は左サイドのスペースを攻略する。最後は抜け出したインサイドセンターのマイケル・リトルをパーカーがサポート。インゴールへ飛び込んだ。

 ここでは自身のゴールも決まってスコアは28-14。序盤の流れを決定づけるシーンでもあった。

 パーカーはこうも応じる。

――選手と首脳陣は、ここまでどう連携を図ってきましたか。

「選手としては、コーチの意図していることは理解していると思います。きょうはそれを形にでき、やりたいことが十二分にできた。それはボールの運び方、プレッシャーの与え方などです。きょうは、コーチの考えることを選手が実行に移したいい例の試合だったと思います」

 今後の注目点は、蹴られた後の戻りが速い相手にもこの日のようなキックキングゲームができるかになろう。

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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