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ニュージーランド代表の息子で元群馬県民のマイケル・リトル、日本代表へ。【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
自陣深い位置からも果敢に仕掛ける。好物は焼き肉と寿司。(写真:アフロスポーツ)

 群馬県で幼少期を過ごしたニュージーランド人ラグビー選手のマイケル・リトルが、将来の日本代表入りを視野に入れる。他国代表およびそれに準ずるチームでのプレー経験がなく、当該国で3年以上続けて住んだ選手は、出身地以外の国でも代表選手になれる。

 カールのかかった金髪が印象的なリトルは、2018年から国際リーグのスーパーラグビーでプレーしている。

 このリーグへ日本から加わるサンウルブズの一員として第4節でデビューを果たすと、休止した第7節を挟んで4戦連続で先発出場中だ。身長183センチ、89キロと一線級にあっては大柄ではないが、日本代表の指揮も兼ねるジェイミー・ジョセフヘッドコーチのもとコンタクトシーンの多いセンターに入る。豪快に駆ける。開幕6連敗のチームにあって、一筋の光を灯す。

 4月14日は、東京・秩父宮ラグビー場での第9節でブルーズを迎え撃つ。遡って10日は共同取材に応じ、日本代表入りへの思いなどを語った。ちなみに父は元ニュージーランド代表センターのウォルター・リトル。名選手の遺伝子を継ぐリトルは、「父を偉大だと感じる思いは、自分が年を重ねるたびに強くなっています」とも話している。

 以下、共同取材時の一問一答の一部(編集箇所あり)。

――改めて、2度目の来日までの経緯を。

「子どもの頃の来日時は、ラグビーをしていませんでした。弟たちと家でプレーしていただけです! 帰国後は、グリーンフィールドという父と同じクラブにいました(その後、ニュージーランドの地域代表選手権でのノースハーバーでプレー)。

 以前どこかでお話ししたかもしれませんが、サンウルブズには世界中の色々な国から選手が集まっています。複数の文化があります。それが、いいところです。各選手の試合への取り組み方なども異なっていて、それぞれがひとつひとつ異なる方法を知れる。それが、チームをひとつにする要素になっています。面白いことは、いつもあります。

 それぞれの育ちも違いますが、なかでも日本人は最もナイスな人たちだと感じます。ニュージーランド人とオーストラリア人はお互いにライバル視しています。かつてはオーストラリアのチームと激しくやり合っていましたが、いまはオーストラリア人のチームメイトがいて、逆に、いい友達になっています。こんなに多様性に富んだチームは他になく、素晴らしい経験ができています」

――なかなかチームは勝てませんが。

「調子はいいと思います。全体的に、すべきことにフォーカスし、ハードにトレーニングしています。グラウンドに出れば、できることを精一杯に表現しています。毎週、毎週、それを続けることが大事です」

――スーパーラグビーで戦える自信はついたか。

「自信は前からありました。素晴らしいプレーヤーと戦えることは嬉しく思っています。毎週、自分のポジションを死守できるように働きます。敵チームのみならず、味方にも素晴らしい選手がいます。中村亮土選手、立川理道選手からも多くのことを習っています」

――事前キャンプ中の怪我から復帰してから、先発出場を続けています。

「身体はきついですが、試合に出る機会をもらえているのはありがたいことです。フィジカルトレーナーやドクターが身体をケアしてくれていて、それにも感謝をしています」

――希望ポジションは。

「(ポジションを問わず)試合に出ること自体が最も楽しいことです。センターが最も合っているポジションだとは思っていますが。

 センターはインサイド、アウトサイドともにプレーできます。(どちらに入るかは)もう1人のセンターとの兼ね合いにもよると思いますし、試合に出られればどちらでも。どちらも似た役割だと考えています。与えられた役割を果たすだけです」

 小学校3、4年の頃、同部の本拠地である群馬県に在住。父が三洋電機でプレーしていたためだ。

 帰国後に競技生活を本格化させ、「いつか日本へ来ると思っていた」。2017年、三菱重工相模原の新外国人選手として再来日。その延長線上に、サンウルブズとの契約があった。

――ジェイミー・ジョセフヘッドコーチからはどんな評価を受けていますか。

「インサイドセンターなのだから、ディフェンスに集中しろ、と、言われています。ワラターズ戦で2回あったミスタックルを注意されました。今週は、というか、常に成功率100パーセントを目指します。ここが大きな目標です。

 父はジェイミーをいい人だと言っていました。ジェイミーは、私によくしてくれています。トニー・ブラウンアタックコーチを含め、素晴らしいコーチたちです。コーチが選手を成長させ、変化を作るというのはその通りだと思います」

――ブラウンコーチのよさとは。

「ブラウンは、信じられないくらい、いい。グラウンド上でどう攻めるかを明確に示してくれ、細かいところも丹念に見ます。スキルトレーニングもたくさんします。地元ニュージーランドで受けたコーチングとは、違います。

 毎週、12、13番(相手のセンター)についての分析もしてくれていて、防御ラインの裏にスペースがあるということも認識し始めています。試合中はそこを突いて攻撃しています。今週はまた違う相手と試合をするので、作戦は変わってきますが」

――次の相手となるブルーズは2016年に所属していたチームです。

「特別な思いはないです。毎週、違う相手と戦いますし、いまはサンウルブズでサンウルブズのことにフォーカスしています。よく知っている仲間と試合ができるのはエキサイティングなことですが、そもそも毎週エキサイティングだと感じています」

 スーパーラグビーでその才能を発揮しているリトルが視野に入れるのは、テストマッチ(国際真剣勝負)での活躍だ。幼少期に過ごしたこの国を「ホーム」と捉え、「日本代表に呼ばれればノーとは言わない」。リトルが日本代表資格を得られるのは2020年となる見込み。ワールドカップ日本大会の翌年で、その時は26歳になっている。

――将来の日本代表入りに向けて。

「将来のことを考えるのは難しいのですが、日本代表に呼ばれればノーとは言いません。ここが私のホームです。楽しんでいます。(資格を得られるのは)数年先の話だと思いますが、機会が訪れればテイクします」

――ちなみにリトル選手は、イタリア生まれでフィジーにもルーツがあります。

「フィジー代表には何度かキャンプへ行って話したことがありますが、いまは興味がありません。イタリア代表のことも考えていません。たくさんの国の代表になれるのはラッキーなことですが、先ほど機会と申し上げたのは、日本代表についてのことです」

 未来の新戦力候補は、スーパーラグビーという舞台で国際的選手の素地を作る。

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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