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サンウルブズ0勝6敗、雰囲気はどうか? 会見で直撃。【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
ジョセフ(左)と流(右)。

 国際リーグのスーパーラグビーへ日本から参戦して3季目のサンウルブズが、開幕6連敗を喫した。

 4月8日、東京・秩父宮ラグビー場での第8節で優勝経験のあるワラターズに29―50で大敗。攻め込んでの落球や防御の乱れが目立った。試合後、ジェイミー・ジョセフヘッドコーチとスクラムハーフの流大・共同キャプテンが会見した。

 以下、公式会見中の一問一答(編集箇所あり)。

――戦前「最初の20分で勝負を決める」と発言した通り、勢いのある立ち上がりでした。しかし、チャンスを逃すや失点してしまいます。

「アタック自体は、機能していました。仕掛けて、外にプレッシャーをかけられました。しっかりとスペースを見極めてボールを後ろに入れる(おとりの選手の後方へパスをする)こともできた。最後のフィニッシュのところまで、もうちょっとボールキープできていれば。ここでパスミスをしたりボールを失ったりしたところが変わっていれば、展開が変わっていた。そこら辺の遂行力が、(失点した)原因のひとつになってしまった」

――その後の防御は…。

「そうですね。まだレビューできていないのでわからないので、またレビューしたいと思います」

ジョセフ

「被ターンオーバーが14回(スーパーラグビーの公式ホームページ上では18回)。さらにそこでの攻守の切り替えでも苦戦しました。これだけターンオーバーされた後にディフェンスをするのは、特にでかい選手がいる相手には苦戦すると思います。相手の大きな11番(タンゲレ・ナイヤラボロ)へのタックルは、全員苦戦していました。

 1対1のタックルの精度も向上させなくてはならないですが、被ターンオーバーが14本もなければシステム上は問題ない。あとは、裏に蹴られた時に戻って(守備位置を)セットする際、フォワードがラックに寄り過ぎてしまい、防御網の幅が作れずに苦しんだという場面があった。

 ポゼッションはほぼ五分五分で、ゲインライン突破率は77パーセントで、ペナルティー数も相手の15に対し3と規律もよかった。トライは取れる能力があった。ですので、ディフェンスの改善が最重要課題だと思います」

――ディフェンスの改善が進まない理由。

ジョセフ

「私の目から見ると改善は見えているが、対戦相手が強くなっているのも事実。ワラターズにはワラビーズ(オーストラリア代表)が11人いて、これから戦うブルーズ、クルセイダーズにもオールブラックス(ニュージーランド代表)がいる」

――やや改善されたように映るラインアウトについて。ワラターズ側はミスなし。サンウルブズのミスは失点に繋がった。

ジョセフ

「4本中3本が強風のためノットストレート(まっすぐ投げ入れない反則)でした。様々な問題がありますが、今回以前の試合ではロックに姫野和樹やヴィンピー・ファンデルヴァルト(本来はフランカーなどを務める。身長は180センチ台後半で、世界的なロックに比べると小さい)がいた。試合後などの会見でラインアウトのうまくいかない理由を聞かれた時、『けが人が多い』ということは言いたくないのですが、それも現実です。南アフリカ遠征でも生粋のロックがあまりいませんでした。今週は本当のロックが徐々に戻り、サム・ワイクス、ジェームズ・ムーアが入りました。ムーアはこのレベルでの経験がないが、1回のミス以外はいいプレーをしていました。ラインアウトのミスの原因は、フッカーが日本代表55キャップを持っているにもかかわらず、オーバーボール(捕球役の頭を越えるボール)、ノットストレートを投げてしまったということです。対策は何か。訓練だけだと思っています。

 こうして強いチームと毎週闘わなくてはいけないのは度胸や勇気がいる。いい個性、いい人間が揃っていないとできない。うまくいっていない時に本性が現れるが、流やほかの選手を観るといい個性が揃っていると思います」

 毎年ヘッドコーチが代わるサンウルブズは、今季、日本代表も率いるジェイミー・ジョセフにヘッドコーチ兼務を依頼。日本代表との連携をより強化するなか、海外出身者を増やして準備期間を見直し。シーズン5位以内を目指すと宣言していた。

 ところがふたを開ければ、試合ごとの選手の入れ替えなどもあり攻防を乱している。

 一般論として、負けが込むと選手、スタッフを含めたチーム内での信頼関係の維持が難しくなるが…。

――そのあたりのことは、どうご覧になっていますか。

ジョセフ

「確かに負けが込んでいます。それが現実です。この状況だからこそ、コーチと選手はしっかりと連携を図り、週の頭からキャプテンの流と意見を交換し、意識を合わせながら1週間を過ごしています。チーム全員がこのリーグがタフだとわかっていますし、すべき課題についても自覚しています。きょうは、選手たちが全身全霊でチームにコミットしているところが現れた。ポテンシャルを発揮できなかった前回のチーフス戦(3月24日、秩父宮で10―61で大敗)時になかった気持ちが、現れていました。どの試合でもミスは多いですが、メンタル的に落ち着いた状態でアタックしている時は、ラグビーを楽しめている。あとはディフェンスが課題です」

 ジョセフはこう声明を発する間、流の足にぽん、と手を置く。終始シビアな表情だった流がほんの少しだけ笑顔を作る。

「苦しい時こそ選手が団結して、スタッフともいいコミュニケーションを取って、次のタスクに向けてやるべきことをやるだけだと思います。チーフス戦の後は悪いところから目をそらさずにレビューして、コーチ陣からのレビューもあって、今週はどうやれば勝てるかを明確にしてすごくいい準備ができたという感覚があった。それが最後のところで結果に表れなかったけど、過程はいいものだった。続けていきたいと思います。来週は、ホームの皆さんの前で勝ちたいと思います」

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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