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サンウルブズ5連敗。姫野和樹は「劣っているとは思わない」。【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
国内外で出ずっぱりで疲れを認めるが、成長も実感。(写真:アフロスポーツ)

 国際リーグのスーパーラグビーへ日本から参戦して3季目のサンウルブズは、開幕5連敗中。前年度の国内トップリーグで新人賞を獲得している姫野和樹は「負け続けで、チームにはフラストレーションもたまっています。ただ、勝ちを獲れば自信をつけられる」とする。

 3月24日、東京・秩父宮ラグビー場。5試合目にあたる第6節をおこない、ニュージーランドのチーフスに10-61で敗れた。南アフリカ遠征中だった現地時間17日には昨季準優勝のライオンズに38-40と迫っていたが、この日は空中戦のラインアウトや大外のスペース管理で後手を踏んだ。

 姫野は身長187センチ、体重112キロの23歳。帝京大学からトヨタ自動車へ加わった昨季は同部でキャプテンを務め、日本代表デビューも果たしている。

 チーフス戦ではロックとして身体を張ったが、試合後の取材エリアでは神妙な顔つきだった。

 以下、共同取材時の一問一答の一部(編集箇所あり)。

――南アフリカ遠征から19日に帰国。4日間の準備で試合に臨んでいました。

「準備期間が足りなかったとは思います。南アでやって来たことをチームに落とす時間もありましたが、うまく今週やることを落とし込むということについて、準備不足だったかなと」

 前半19分頃だ。自陣10メートル線エリア左の接点付近から、スクラムハーフの田中史朗がキック。姫野は、アウトサイドセンターのラファエレ ティモシーとともに弾道を追う。捕球役をタックルで倒し、その近辺で防御網を敷く算段だった。

 ところが向こうの捕球役、スタンドオフのダミアン・マッケンジー(D・マッケンジー)は、サンウルブズ勢の圧力に屈せず左後方の味方へパス。姫野とラファエレもすぐに反応し、パスの弾道へ足を向ける。

 ところが、パスを受け取ったフルバックのマーティー・マッケンジー(M・マッケンジー)は姫野とラファエレのタックルを外し、前進。この頃、最初にキックを捕ったD・マッケンジーはM・マッケンジーのさらに左へ大回りしていて、再度ボールを得るや目の前の空洞を一気に駆け抜ける。ソロモン・アライマロのトライをおぜん立てし、直後のゴールキックは自ら決めた。ここでスコアは0―28。

 サンウルブズにとっては、名手のスキルとボディバランスで計画を狂わされた格好か。相手を仕留めきれなかった格好の姫野はこう振り返る。

「チーフスはアンストラクチャー(セットプレーを介さないプレー)が得意。そこでパスを2つ、3つとパスを通させないようにとやってきたのですけど、外との連携も取れず繋げられてしまった。(周りで防御に入る選手との)コミュニケーション不足だったと思います」

――序盤に失点が重なった。

「チームとしてもそこから修正できなかった。自分たちのプレーができなかった。それは本当に残念で。色々な要因はあると思うんですけど、それをひとつひとつ解消したい」

――要所で自軍ラインアウト(タッチライン際での空中戦)のミスもありました。

「ブロディ・レタリック(ニュージーランド代表ロックで身長204センチ)のような素晴らしい選手がいるなか、反応して捕っていくことが大事。まずはボールを獲得しないことには話にならないので、修正が必要だと思います」

――相手との身長差を前提に自軍ボールを確保するには。

「そこで勝っていくにはスピード、(相手防御の)分析。背は伸びないので」

――ニュージーランドのチームとの初対戦でした。

「オフ・ザ・ボールのところでうまくずる賢くやること、ボールの動かし方がうまい。そうしたところで上回られたのかなと思います。南アはすごくフィジカルですが、ニュージーランドのチームはスマートにやるというイメージが強かったです」

――ここまでの5戦を振り返って。

「満足していないです。まずは勝利という結果が欲しいです。負け続けで、チームにはフラストレーションもたまっています。ただ、勝ちを獲れば自信をつけられる。バイウィーク(1週間の休止期間)、しっかりとリフレッシュして臨みたいです。自分たちのプレーができれば通用するし、劣っているとは思わないです。ただ、ちょっとしたところ、チームの成熟度などのところで、まだまだだな…と思います」

 敵陣でのタックルミスがトライに繋がったチーフス戦の19をはじめ、失策がスコアボードを左右するシーンはゼロではない。

 

 もっとも個々のぶつかり合いは、コンタクト時の姿勢さえ違わなければ互角に持ち込めそう。攻防のシステムが保たれている時などは、姫野の「劣っているとは思わない」も決して大げさではない。

 再建の第一歩として、チーフス戦で顕在化した穴を埋めたいところか。チームは1週間の休止期間を経て、4月7日にオーストラリアのワラターズとぶつかる(秩父宮)。

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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