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サンウルブズ、前半で3人故障離脱。ジェイミー・ジョセフヘッドコーチは何と?【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
流キャプテン(右)は終始、シビアな顔つき(著者撮影)。

 国際リーグのスーパーラグビーへ参戦3季目のサンウルブズは、東京・秩父宮ラグビー場で第3節をおこない、レベルズに17―37で敗戦。チームにとっての初戦にあたる第2節に続き、開幕2連敗を喫した。

 犯した反則数はサンウルブズの「3」に対してレベルズは「16」。その分だけ多くの攻撃権を得たサンウルブズだが、好機でのミスに泣いた。

 立ち上がりからラインアウトのエラーを連発して迎えた前半9分、タッチキックを捕球されたところから攻められ、先制トライを許す(0―5)。続く12分にはハーフ線付近右でのラインアウトを後方へそらし、攻守逆転。防御ラインの穴が開いた左サイドを、対する日本代表ナンバーエイトのアマナキ・レレイ・マフィに走られた(0―10)。

 サンウルブズは26分、インサイドセンターの中村亮土のペナルティーゴールで3―10と迫る。続く35分には、ウイングで先発のウィリアム トゥポウ(故障者の穴埋めでインサイドセンターに入った)が自陣10メートル線エリア左でのインターセプトからインゴールまで駆け抜けるなどし、10-10と同点に追いついた。サンウルブズはせり上がる防御の裏へのキックも冴え、再三、チャンスメイクする。

 しかし前半のうちにアウトサイドセンターのラファエレ ティモシー、スタンドオフのヘイデン・パーカー、ウイングの山田章仁が相次ぎ故障離脱。急造ラインを組んだチームは、以後、攻め込んでからの落球などを重ねてしまう。

 それに対してレベルズはハーフタイムにゲームプランを再確認し、後半2分には接点周辺を攻略するなどして攻め込みペナルティーゴールを獲得。10-13と勝ち越す。以後は8分、5分、12分と、いずれもスクラムを起点にボールを継続してトライを決めた(10-30)。

 サンウルブズは相手が一時退場処分で1人少なくなった38分にナンバーエイトのエドワード・カークのトライなどで17―30としたが、時すでに遅し。後半ロスタイムにペナルティートライを喫し、ノーサイドを迎えた。

 サンウルブズは昨季まで通算3勝も、今季は日本代表の指揮も執るジョセフのもと5位以内を目指している。故障者が続いた現象を踏まえ、ジョセフは改めて「準備期間の短さ」について言及した。

 以下、共同会見中の一問一答(編集箇所あり)。

――後半の入り。失点が続いた。

「おっしゃる通りで、後半の最初に簡単な形で取られてしまいました。バックスのけが人が多く出て、やって来たコンビネーションじゃないポジションをカバーしていた選手もいたので、コミュニケーションが取れないまま一発で取られるというシーンもありました。けが人が出た時に対応できたらよかったのですが、1週間やって来たことと違うことをしてしまったのが、トライを取られた原因です」

――対するスクラムハーフ、ウィル・ゲニア選手のプレーについては。サンウルブズの失点時は彼の動きやパスの長さが効いていたような。

「それくらいのことはやれる選手と思って、そこ(リズムある攻撃)までに行かないようなプレッシャーのかけ方を準備していたのですが、メンバーが変わったことでうまくいかなかったところがあったと思います」

――攻め込んで取り切れなかったシーンもあったが。

「最後フィニッシュのところは精度のところ(問題)もありますし、相手のペナルティーで最後の得点のところへいけないところもあって、明らかに故意的なものもあった…。僕はレフリーとコミュニケーションを取って『ペナルティーが多すぎる』『場合によってはイエローカードではないか』と話していました。そこで仕留めきれなかったのは、こちらにも原因はあります」

――けが人が多く出た。

ジョセフ

「シーズン序盤、集合時からけが人も多く、先週は6名が負傷。これはどんなチームにも抱える問題で、スーパーラグビーでは怪我が増えると予想しています。ただ、キープレーヤーでここまでけが人が増えるとタフな状況に追い込まれる。今日はバックス3枚が抜けました。急遽、ウイングに入った徳永祥尭はいい仕事をして大外でフィジカル差がものを言って助かった場面もあったと思います」

――けが人はともかく、ラインアウトのエラーをどう捉えるか。

ジョセフ

「セットプレーのミスは非常にあった。こだわってやって来たのにこういうミスが起きたのは残念です。前半も敵陣22メートルエリアに入ったにも関わらず、ラインアウトで細かいミスをしてしまった。レベルズは多大なるプレッシャーをかけてきたことで軍配が上がりましたが、ラインアウトは私の責任でもあるので、残念に思っています。

 スーパーラグビーではこういうプレッシャーでミスが起きることもある。対策としてはシンプルに 落ち着かせて、勢いを取り戻さなければいけない。苦戦する時間帯にどう勢いを取り戻すかという対処法を、もっと早く身に付けないといけない」

――今季初陣となった日本代表のリーチ マイケル選手、立川理道選手について。

ジョセフ

「まだじっくり評価できるほどではないが、いま言えることで言うと、リーチは、ラインアウトのところで責任があるので、その出来を見れば考察できます。

 立川はコントロールという責任があったが、10番(スタンドオフのヘイデン・パーカー)が早々に怪我で退場。本来12番(インサイドセンター)だった立川が違う役割を担うこととなり、きつい部分もあったと思います。アタックではいいコントロールができましたが、ディフェンスでは改善が必要。経験、スキルも非常にあるプレーヤーですが、そのあたりの改善点は挙げられると思います。

 選手の退場の原因ですが、ラファエレ、山田、後半に退いたロックのサム・ワイクスはノックアウト(脳震盪)です。スーパーラグビーはこれだけフィジカルが強いということです。それに対してサンウルブズは、準備期間が足りないというところもあった。他のチームは2か月半ほどプレシーズンを送り、身体を鍛えてきています。ブランビーズ戦でも明らかなフィジカルの違いがあり、今週もそうでした。接点で負けてしまっている。これが継続的に起こると、苦戦すると思います。

 だからこそ、流キャプテンは小さい(身長166センチ)ですが、だからこそ重要なキャプテン。どんな試練をも乗り越えてくれる」

――今回バックスキックを使う。戦術的だったか

ジョセフ

「先週のレベルズ対レッズでもスペースが裏にあった。流れのキックでゲニアを孤立させた。しかしボックスキックで負けるところはありました。そこへも対応する作戦を持っていたが、なかなか機能できなかった。キックで相手を背走させた部分はあったが、本来であればそこからスコアに繋げたかった。スーパーラグビーでは、そうしたチャンスをものにしなければならない」

 前年より延びた準備期間については、他チームとの比較から「短さ」を指摘するジョセフ。自らが教えるラインアウトでエラーが起きたとあり、悔しさは募るか。チーム調べによる入場者数は前年より約3000人少ない「11181人」だった。次のホームゲームは3月24日のチーフス戦(第6節)だが、それに先立って計2試合の南アフリカ遠征が組まれている。

※記録は参考

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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