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世界選抜に完敗…。日本代表リーチ マイケルの示す「課題」とは。【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
ラン、タックル、サポートへと獅子奮迅の活躍(写真中央。今年6月)。(写真:FAR EAST PRESS/アフロ)

 2019年のワールドカップ日本大会を2年後に控えるラグビー日本代表は、10月28日、福岡・レベルファイブスタジアムで世界選抜と対戦。激しい雨が降るスタジアムにあって、27―47と大差で敗れた。

 就任2年目を迎えるジェイミー・ジョセフヘッドコーチのもと、今秋はワールドカップ優勝経験のあるオーストラリア代表など多くの強豪と対戦予定。JAPAN XVの名義でおこなった世界選抜戦はその前哨戦で、ジョン・プラムツリー新ディフェンスコーチの唱えるシステムなど、多くの試験項目があった。

 試合後にジョセフとともに会見したリーチ マイケルキャプテンは、前向きな言葉で完敗から見た光明を明かす。

 以下、共同会見時の一問一答の一部(編集箇所あり)。

ジョセフ 

「まだ細かく試合を検証できてないのですが、いい局面もあった。特にディフェンスでは前に激しくプレッシャーをかけられていました。そこで2トライを取られたのは、相手の有利になるようにボールが転がり、繋がれたというところ(から)でした。けれどもいい場面があったので、ディフェンスはいい形で遂行できる兆しが見えています。

 両チームとも非常にミスが多かったと思います。プレッシャーがかかっていたからだと思います。我々は、このコンビネーションで戦うのが初めてで(代表未経験者が6名メンバー入り)、桜のジャージィを初めて着る選手も多かった。ただ、この試合に対するコミットメントは見えたと思います。

 また両チーム、試合をコントロールができていたかといえば、できていなかったと思います。世界選抜は自陣22メートル線以内でプレーをし過ぎていた。そこで我々は圧力を与えたのですが、得点を奪うことができなかった。ただ世界選抜は、我々が自陣22メートル線以内に入った時は得点を与える結果となりました。でも、まさにこのような相手と試合をしたかった。なぜかというと、11月はオーストラリア代表戦、トンガ代表戦、フランス代表戦と続くのですが、オーストラリア代表戦が大きな試練となるからです。それに向け、きょうはいい準備ができた」

リーチ

「きょうは台風のなか、たくさんの福岡の人がレベルファイブスタジアムを満員に近い状態(公式入場者数は10303人)にしてくれて嬉しく思います。ワールドカップに向け、皆さんの応援の力が本当に必要です。

 きょうの試合を振り返ると、27-47と、点数的に開いた試合だと思います。しかしそのなかでいい部分もあったし、逆に課題も新しく出てきて。目標はオーストラリア代表戦に勝つこと。その大事な試合の前にこの試合ができたことは、日本代表にとってとてもいいことでした。オーストラリア代表戦に向けて、この1週間でやるべきことを明確にする。特に、ブレイクダウン(接点)の質を上げないといけない。ブレイクダウンをちゃんとやらないと、自分たちのラグビーはできない。この1週間、キャプテンの仕事は、ブレイクダウンで皆に意識を高く持たせるような練習をしたいと思っています。

 あとは、ワールドカップまでの限られた試合のなかで、きょうの試合をポジティブに捉えています。1試合、1試合、大事にしないといけないなか、たくさんいい課題が出てよかったです」

――ジョン・プラムツリー新ディフェンスコーチが唱えるシステムは、きょうが初めて新たなディフェンスシステムについて。

リーチ

「ストラクチャーからのディフェンスは割とよくできたと思います。ただ、アンストラクチャーの時(攻守逆転の直後やキックを蹴った後など)のディフェンスが足りていない。それはシステムより、タックルが悪い。タックルがしっかりできていれば、システムは機能します」

――タックル成功率を高めたいようですが、きょうは満足できたか。

ジョセフ

「(試合直後とあって)まだ数値をそこまで検証していないので、コメントはできません」

――相手チームに元日本代表、あるいは日本代表資格を得そうな選手などがいましたが。

ジョセフ

「そうですね。世界選抜の選手はスキル高く優秀。さらに勝つプレッシャーがかかっていなくて、リラックスして試合に挑めた。ただ日本代表は国を背負うので、色んな責任がありました。それに、若い選手が耐えられなかったりもします。お互い全く違う準備をした側面があると思います。そのうえで質問にお答えすると、世界選抜には何人かよかった選手がいるし、だからこそ(なかには)サンウルブズでも起用しようとしている選手もいるわけです」

リーチ

「スコッドの層を強くするには、下からのプレッシャーは欲しい。でも、いまの日本代表に入るのは難しい。バックスには上手な選手が多く、フォワードにはプレーもリーダーシップもある選手がいる。でも、(世界選抜の藤田)慶和、ゴローさん(五郎丸歩)は、少しアピールできたとは思います」

――試合序盤にスクラムハーフの田中史朗選手、ウイングの山田章仁選手といった経験豊富な選手が怪我で抜けてしまいましたが。

リーチ

「実は前日、若い選手、9番、10番の選手(司令塔団)を集めて、最悪な状況になった時にどう対応するかを話しました。実際、2人がいなくなって、(若い)2人が入ってきてプレーした。そんなにプレーの質は変わらず、自分たちのやりたいプレーはできたと思います」

――お話を伺うと、個人のタックルとブレイクダウンをよくしたかったとお考えのようです。今後、その点をどう改善したいか。

リーチ

「ジャパンのやりたいラグビーは、ブレイクダウンがうまくいっていればできる。今後、やんないといけないのは、雨の中でのプレースタイル。きょう、ドライ(な天候)だったら、きょうの試合も勝てた。ボールをもっと動かせた。雨に対応しないといけない、ということはひとつ、学んだ。2019年のワールドカップの時は、雨が多い。それにどう対応するか…。雨が降っているから負けたなんて、言い訳にならないから、残り2年間でどう対応するか考えなきゃいけないです」

 リーチは2015年のワールドカップイングランド大会でもキャプテンを務め、歴史的3勝を挙げた。その後は心身の疲れなどから一時代表を離脱も、今年、復帰。秋からキャプテンにも返り咲いた。

 日本代表は、従来の形に微修正を加えた攻撃システムを採用。もっともどのシステムを運用するにも、ボール保持者とサポートプレーヤーが作る「ブレイクダウン」からのテンポのよい球出しは必須。世界選抜戦での攻撃が消化不良に終わったとしたら、その原因は相手の強力なタックラーに「ブレイクダウン」を制圧されたからだろう。

 その「ブレイクダウン」に関する質問が続くなか、リーチは「雨のなかの戦い」にも言及。エディー・ジョーンズ前ヘッドコーチのもとイングランド大会に臨んだ前体制では、石鹸水を付けたボールで練習するなどして雨対策を施していた。果たして現体制は、パスを回しにくくなりがちな悪天候時へどんな準備をしてゆくのだろうか。

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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