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明治大学・田中澄憲ヘッドコーチは、「自分が成長しないと選手も成長しない」? 【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
紫紺のジャージィ、復権なるか。(写真:アフロスポーツ)

 過去に大学選手権で12回の優勝を成し遂げてきた明治大学ラグビー部。覇権から20シーズンも遠ざかっているいま、新任ヘッドコーチとして汗をかくのがOBで元サントリーチームディレクターの田中澄憲氏だ。

 1997年度のキャプテンを務めた田中ヘッドコーチは、スクラムハーフとして日本代表に選ばれるなど活躍。サントリーで2010年度までプレーした後は、同部で新戦力の採用や首脳陣のサポートなどに尽力。昨季の優勝までの道のりを陰で支えた。

「前へ」を部是とする明治大学ラグビー部は、前年度、関東大学対抗戦Aで3位、大学選手権では1回戦敗退と不完全燃焼に終わっている。

 復活へ向けての手ごたえは。学生を指導する難しさは。長野・菅平合宿の終盤、田中ヘッドコーチが胸中を明かした。

 以下、単独取材時の一問一答(編集箇所あり)。

――8月14~28日の夏合宿では、昨季の全国4強のうち3チーム(帝京大学、東海大学、天理大学)とトレーニングマッチを実施。2勝を挙げました。

「この時期にトップ4のチームとやれたことは大きいです。まだ向こうが本気でないにしても、そのうち2試合で勝ったことは自信になります。チームとしてはまだまだ荒いですが、ファイティングスピリッツの部分はよかった」

――東海大学戦のスムーズな攻めを拝見する限り、夏合宿中に攻撃のフォーマットをアップデートしたようにも映ります。

「まだ、そこまできっちりとはやっていません。ただ、上のグレードの選手が自主性を持って、しっかりとコミュニケーションを取ってやれるようになってきた。少しずつ、成長しています」

――選手の自主性、どこで感じますか。

「よく自分たちでミーティングをするようになってきました。以前は全く考えてないでプレーしていましたが、いまは試合中の修正力が、少し、は、ついてきたかなと。帝京大学さんや東海大学さん(上位2チーム)に比べたらまだまだですけど、皆、1試合、1試合、ひとつずつ成長していると思います」

――改めて、母校の指導者として迎える初めての合宿でした。いかがでしょうか。

「疲れますね。むちゃくちゃ、疲れます。この2週間はいままで経験した合宿よりも、長く感じました。まぁ、学生なので色んな事件が起こる。そういう部分はトップリーグでは味わえない。…自分が成長しないと、選手は成長しないと思います」

――「自分が成長しないと、選手が成長しない」。そう思うわけは。

「選手には高いレベルを期待しなくてはいけませんが、だからといって彼らをトップリーガーと比べちゃいけない。選手の少しの成長を見つけてあげるようにならないといけないのかな…と。それをするには自分自身の根気強さが必要だなと思います」

――確かに年齢が若い選手ほど、自分なりに成長した点を指導者に認めて欲しい。逆に、それを見抜いてもらえなかった時にやってくる落胆も大きいような…。

「乗せなくてはいけないし、言いたくないことも言わなくてはいけない。感情的に怒ることはしないけど、指摘はしなくては。怒らないって、自分にとっても楽なんです。でもそれじゃ、(学生の)成長はない。自分自身も、勉強です」

 人を見る。人に関与する。その難しさと大切さを痛感しながら、学生の指導にあたっている。

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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