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日本代表・堀江翔太、ルーマニア代表戦後半の苦しみは「気持ちの問題」?【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
戦術への理解をチーム内で共有したい(写真は5月)。(写真:アフロ)

ラグビー日本代表は6月10日、熊本・えがお健康スタジアムでルーマニア代表とのテストマッチ(国際真剣勝負)を33-21で制した。堀江翔太キャプテンが会見し、収穫と課題を明かした。

堀江はスクラム最前列中央のフッカーに入る31歳。2013、14年にレベルズの一員としてスーパーラグビー(国際リーグ)に挑むなど豊富な海外経験を誇る。日本代表としてはワールドカップには2大会連続で出場し、この日通算50キャップ(テストマッチ出場数)に到達した。

昨秋着任のジェイミー・ジョセフヘッドコーチは、キックを交えたち密なコンビネーションを標榜。攻守逆転の瞬間や相手キックの捕球からのアンストラクチャーの攻めに一定のロジックを落とし込んでおり、この日はそれが奏功した。33-9と大きくリードを奪った終盤は、相手のパワープレーに気圧され連続失点していた。

チームは17、24日にアイルランド代表と2連戦をおこなう(場所はそれぞれ静岡・エコパスタジアム、東京・味の素スタジアム)。アイルランド代表は、2019年にあるワールドカップ日本大会の予選プールで日本代表と同組。もっとも今回は日程上、主力を多く欠く。引き続き白星が期待される。

以下、共同会見時の一問一答の一部(編集箇所あり)。

「これまでやってきた戦術、戦略、ゲームプランを信頼して、勇気を持ってやっていたのが前半です。それを遂行していれば、うまいことプレーできた。

後半は自分たちで首を絞めて、相手のゲームスピードに付き合っちゃったかな、と。ただ、ディフェンスで我慢して、修正できたのはよかった(33-21とされてからは陣地を挽回する場面もあった)。もっともっと後半入りの部分で、ゲームプランを考え、それをキープしていきたい。次のチームもセットプレー(スクラムなどのプレーの起点)が強い。修正していきたいと思います」

――試合直後のインタビューで、「フィジカルを高めていかないといけない」と発言しましたが。

「後半、向こうの流れになった時にそういう部分が少し見えた。焦ってペナルティーをして、向こうのペースにしてしまった。次は、前後半、フィジカルの高いところでやれるようにとは思いました」

――ワールドカップ以降、まとまったフィジカル強化の時間が取れていないと思います。その影響は。

「全然、関係ないです。気持ちの問題でしょ。後半頭にできなくて、最後に改善しているというのは。向こうの流れの時にどれだけできるかという部分では、リーダーが率先して、声かけるべきだったかなとは思いますね」

日本代表と連携を取るサンウルブズも、国際リーグのスーパーラグビーで試合中盤以降にしばしば失点。コンタクトフィットネスとの関係性を指摘されるが、多くの選手は判断力や集中力の向上で改善できると話している。

堀江は続ける。

――2015年のワールドカップでキャプテンを務めたリーチ マイケルは、この日が現体制下で初の試合でした。また東海大学4年の野口竜司は、今回が強豪相手のテストマッチでの初先発でした。

「リーチは前半からディフェンスでチームを熱くさせてくれた。勇気づけるようなプレーをしてくれた。短い間で戦術を理解してくれて、色々と声かけてくれたり、声を出してくれているので、助かっています。野口は、大切なポジション(グラウンド最後尾のフルバック)なんですけど、しっかりコミュニケーションを取ってチームを動かしてくれた。不安もなくできた」

――スクラムについて。

「本数は少なかったんですけど、向こうは駆け引きがうまかった。こちらがいい形で当たれた時に向こうが引いたり、こちらが引いたら崩れたり…。そこはもっと修正できたら」

――熊本で試合ができたことの意味。

「良かったですよ。雰囲気も良くてお客さんもたくさん入ってくれた。こういうゲームで勝てて、何かを感じてもらえたのかな、と思います」

――ワールドカップで予選同組となる可能性が高いルーマニア代表(ヨーロッパ予選で1位だった場合)に勝利。再戦が叶った場合に向け、どんなことを考えますか。

「印象はまぁ、想定した通りフィジカルでどんどんくるチームだった、と。あとはワールドカップに入るとチームが変わる。それぐらいワールドカップって特別なので。相手も、僕たちも全然、変わってくる。いまからワールドカップにどうのこうのというのは考えていないです。その辺は近くになってから。いまはジェイミーを信頼して、ついていきたい」

0-6とリードされ迎えた前半12分ごろ、堀江のワンプレーが勝ち越しを促した。

グラウンド中盤左。狭いエリアの防御網を破られかけたところをカバーした堀江が、対する右プロップのアンドレイ・ウルサケへ強烈なタックルを仕掛けたのである。

その言葉通り、その後はタッチラインの外へ転がった球を、スクラムハーフの田中史朗が素早く投入。逆側へ展開し、最後はアウトサイドセンターのティモシー・ラファエレのキックをウイングの山田章仁がキャッチ。すいすいと走りインゴールへダイブした。直後のコンバージョン成功もあって、7-6と勝ち越しが決まったのだ。

ち密な連動のきっかけとなったプレーを、堀江はどう振り返るか。

「本来、あそこらへん(タックルをした地点)は僕のポジショニングではなかった(他選手の担当区域)んですけど、顔を上げたら(日本代表の)薄かったので。相手の大きな選手がいて、必死に…という感じです。最後はバックスがいい判断でトライを取ってくれたと思いますね」

かねて「ゲームは、予測していないものが起こりうるもの」と発す船頭役が、得がたき存在感を示したのだった。

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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