Yahoo!ニュース

イングランド代表エディー・ジョーンズ、「死の組? 出て行って」会見の中身は。【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
ジョーンズ(左)とクッツェー(右)。2人とも日本の楕円球ファンにはおなじみ。(写真:ロイター/アフロ)

2019年に日本で初めて開催される第9回ラグビーワールドカップの予選リーグの組み合わせ抽選会が、5月10日、京都迎賓館であり、元日本代表ヘッドコーチのエディー・ジョーンズ氏がイングランド代表の指揮官として出席。オーストラリア代表のマイケル・チェイカヘッドコーチ、南アフリカ代表のアリスター・クッツェーヘッドコーチとともに記者会見に応じた。

イングランド代表は4つある予選プールのうち、プールCに入った。アルゼンチン代表、フランス代表など強豪と同組となり、海外メディアからは「死の組に入った」との質問が飛んだ。日本代表時代からビビッドな受け答えで知られたジョーンズ氏は、「死の組と言う人はここから出て行ってください。ここで死ぬ人はいません」と笑顔。その談話は各種メディアで伝えられた。

なお、プール組分けの詳細は以下の通り。

■ プールA:アイルランド代表、スコットランド代表、日本代表、ヨーロッパ予選1位、ヨーロッパ予選2位-オセアニア予選3位のプレーオフ勝者

■プールB:ニュージーランド代表、南アフリカ代表、イタリア代表、アフリカ予選1位、敗者復活予選優勝

■プールC:イングランド代表、フランス代表、アルゼンチン代表、アメリカ予選1位、オセアニア予選2位

■プールD:オーストラリア代表、ウェールズ代表、ジョージア代表、オセアニア予選1位、アメリカ予選2位

以下、当該発言のあった会見中の一問一答の一部(編集箇所あり)。

――フランス一緒のグループ。死のグループではあるが、どうですか。

ジョーンズ

「難しいグループであることは確かですが、ここを勝ち抜きたい。予選敗退した2015年のイングランド代表もそうでしたが、大事なのは最初のゲーム。タフなゲームになるが、いい準備をする。必ず勝ちます。フランス代表は進境著しく、アルゼンチンも強くなった。楽しみです」

――死のプールでも、ポジティブな気持ちなのですね。

ジョーンズ

「(笑みを浮かべ)死のプールなんて言う人はここから出て行ってください! ここで死ぬ人はいません。簡単ですよ。いい準備をして戦いに挑むだけ。アルゼンチン代表とは今後、2つテストマッチをします。本番では経験が豊富な状態で臨みます」

――抽選会のあった京都への印象をお願いします。

チェイカ

「個人的に初めて京都に来ました。オーストラリアではたくさんの仕事があり、ややストレスを抱えてきたんです。ただ、まだ48時間しか京都にいませんが、リフレッシュできています。静かな街で、人も素晴らしい。いい経験ができています。これからお気に入りのいい場所を発見できる」

クッツェー

「2015年は神戸製鋼で仕事をしていたのですが、京都は始めてきました。いい歴史の勉強ができました。ワールドカップも楽しみになりました」

ジョーンズ

「(質問者に対し)あなたは、京都出身ですか? 確認しただけです。…京都は美しい、素晴らしい場所で、日本の歴史も背負っているうえに、新しい日本を代表してもいる。両方の面がある。ここで抽選会があったことは、素晴らしい歴史的な試みです(過去はすべて大英帝国で開催されてきた)」

――日本での指導経験が本大会でどう活きるか。

クッツェー

「日本のチームを過小評価してはいけない。それは2015年に私たちの国が、厳しい経験から学んだことです(イングランド大会で黒星)。基本ができるチームで、セットプレーも改善している。スーパーラグビーのサンウルブズ(日本チーム)を見ても一目瞭然です。ワールドカップでは国と国との間のギャップはなくなってきたかもしれない。その意味で2019年は非常にエキサイティングです。いま、我々は、ラグビーチャンピオンシップを通して数名のプレーヤーが怪我をして、そんななかで次のステージに進むためのチームを作っている」

ジョーンズ

「日本人がイングランド代表を支援しているのを知っています。また、私は刺身のおいしいお店を知っている。天候は重要です。9月は湿度が高く蒸し暑い。ただ10月にはピッチも固くなる。大会期間中、異なった2つのスタイルのラグビーが見られることになります。その条件に対する準備が必要だとわかります。日本で試合をしたことのないチームを、どう準備させるか、適応させるかが重要です」

――オーストラリア代表は今秋、日本代表と対戦します。

チェイカ

「貴重な機会。日本はスーパーラグビーでも活躍するなど進化を遂げている。競争力もぎりぎりまで高める可能性が強い。手ごわい試合になるでしょう。しかし会場は(決勝戦のおこなわれる)横浜国際競技場。素晴らしい試合にもなる。我々ワラビーズを支援するファンもそこにいることを、願っています」

――日本代表には、「イングランド代表と試合をしたい」という選手が多いが。

ジョーンズ

「たくさん夢を持つことは問題ない。ただ、そうしたことは彼らが準々決勝に行ければ、という話です」

――オーストラリア代表の入った組はたやすいか。

チェイカ

「他のチームがどこにいるかは気にせず、我々の準備をする。国際レベルに来ると、どこのチームが簡単、難しいといったことは関係ない。国家を歌い、お互いに相当な熱意で試合をする。想定と違ったことが起こる。自分たち自身にフォーカスをして、自分たちのラグビーをするしかない」

日本代表がワールドカップで初の3勝を挙げた際の指揮官、ジョーンズは、イングランド代表就任後にテストマッチ18連勝を記録。その実務能力は世界随一だ。苛烈な勝負根性を笑顔でくるみ、刺激とユーモアに富んだ発言を繰り返す。この日も同じだった。

もともとは、日本代表の職を離れたのちはスーパーラグビーのストーマーズを率いる予定だった。もっとも現職のオファーを受けて突然、コードチェンジ。いまに至る。

この日の会見では、隣同士になった南アフリカ代表のクッツェーとアイコンタクトを交わす場面が多かった。クッツェーは神戸製鋼の指揮官に着任する前は、ストーマーズを率いていた。その次のボス候補が、ジョーンズだったというわけだ。

国際ラグビー界は広くて狭い。

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

すぐ人に話したくなるラグビー余話

税込550円/月初月無料投稿頻度:週1回程度(不定期)

有力選手やコーチのエピソードから、知る人ぞ知るあの人のインタビューまで。「ラグビーが好きでよかった」と思える話を伝えます。仕事や学業に置き換えられる話もある、かもしれません。もちろん、いわゆる「書くべきこと」からも逃げません。

※すでに購入済みの方はログインしてください。

※ご購入や初月無料の適用には条件がございます。購入についての注意事項を必ずお読みいただき、同意の上ご購入ください。欧州経済領域(EEA)およびイギリスから購入や閲覧ができませんのでご注意ください。

向風見也の最近の記事