5年目から1年目への「声」。サンウルブズ田中史朗、初勝利前日の宣言とは。【ラグビー旬な一問一答】
国際リーグのスーパーラグビーに日本から参戦2年目のサンウルブズには、頼れる経験者がいる。
田中史朗。身長166センチ、体重75キロと小柄も、スクラムハーフとして好判断で魅してきた32歳だ。
昨季までスーパーラグビーを4シーズン、経験。初の日本人スーパーラグビープレーヤーとして、ニュージーランドのハイランダーズに在籍してきた。日本代表としてワールドカップイングランド大会に挑んだ2015年には、スーパーラグビーの優勝も達成している。
4月8日、本拠地の東京・秩父宮ラグビー場。サンウルブズが、第4節で屈した南アフリカのブルズを21-20で制した。今季初白星を挙げた。2月中旬から約1か月のオフを得た田中は、この日に今季2度目の先発を果たして味わいある球さばきを披露。攻撃を滑らかにした。
それだけではない。
身体をぶつけ合うフォワード第3列の先発には、試合翌日に25歳となる徳永祥尭、24歳の松橋周平、21歳のラーボニ・ウォーレンボスアヤコが並んでいた。いずれも今季初めてスーパーラグビーに参戦する若手で、テストマッチ(国際真剣勝負)の経験者も松橋のみだった。
前列5選手のスターターなかでも、前年度以前のスーパーラグビー経験者は2人。田中は接点脇の司令塔と同時に、希少な経験者としての振る舞いも求められていた。
経験の少ない選手の潜在能力を引き出すために、どんなことを心がけたのか。試合前日の共同取材時、その要諦を明かしていた。
以下、共同取材時の一問一答の一部(編集箇所あり)。
――初勝利へのポイントは。
「コミュニケーションですね。ここを止めれば。ここでパスがつながれば。そういうところでミスをしたていり、人数が足りなかったりというところがあるので。僅差のところ。自分たちがしんどくても、相手は身体が大きいだけ自分たちよりもしんどいと思う。そこをイメージしながら、戦っていければ」
――戦術理解度は。
「皆、理解はしているんですけど、自分から(周りを引っ張る)というのができていない。そこは経験ある選手が(その都度大事なことを)伝えて行ければと思います。気になった選手には、1人ひとり声掛けをしています」
――ウォーレンボスアヤコ選手について。
「彼はポテンシャルがある。この試合で自分に自信をつけてもらえれば、世界で活躍する選手になれると思います(結局、先制トライを決めた)」
――若手選手に向けて。
「年齢は関係ない。トク(徳永)は自信を持ってプレーしているし、ボニー(ウォーレンボスアヤコ)は少し(戦術などを)理解できていないところもありますけどプレー自体はすごい。思い切りやって欲しいです」
――経験の浅い選手を、どう引っ張りますか。
「やっぱり、コミュニケーションですね。何人か、静かな選手もいるので、その選手に声をかける。その選手は、プレー自体は激しい。彼らとしっかりとコミュニケーションを取って、プレーをしやすい環境を作ってあげるのが僕の仕事かなと思います」
――合間、合間で発破をかけ、背中を押す。
「そうですね」
戦前の決意は、結果を残したことでより説得性を帯びることとなった。4月14日、クルセイダーズとの第8節でも田中は先発予定。ニュージーランドはクライストチャーチ・AMIスタジアムでの一戦において、その存在感は増すばかりだろう。