Yahoo!ニュース

リーチ前向き、五郎丸は…。ジェイミー・ジョセフヘッドコーチが日本代表発表【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
豪快にしてち密。(写真:アフロ)

2017年度最初のラグビー日本代表メンバーが4月10日、発表された。22日からのアジアラグビーチャンピオンシップ(ARC)に向け、昨秋就任のジェイミー・ジョセフヘッドコーチが都内で会見した。2015年秋のワールドカップイングランド大会でキャプテンだったリーチ マイケル、副キャプテンだった五郎丸歩らの話題も挙がった。

日本代表は2019年、自国開催のワールドカップを控える。リーチと五郎丸はイングランド大会を最後に代表の活動へは参加していない。ジョセフはリーチに関し、昨秋の活動を辞退したツイ ヘンドリック、大会後も代表にコミットするアマナキ・レレイ・マフィを含める形で「選ばれれば代表でプレーしたい」と話している選手として紹介した。五郎丸に関しては「連絡を取っていない」と続けた。

現状、ジョセフが軍師役や陣頭指揮役として関わる代表強化の柱は3つ。国際リーグのスーパーラグビーに日本から挑むサンウルブズ、肝いりの強化システムであるナショナルデベロップメントスコッド(NDS)、20歳以下日本代表を主体とした若手育成プログラムであるジュニア・ジャパンだ。今回のARCのメンバーは、この3つのカテゴリーから集められている。

ジョセフは会見したこの日、3月から約3週間おこなっていたNDSの第4回キャンプを開始させた。韓国代表、香港代表と戦うARCではサントリーのスクラムハーフである流大、同じくプロップである石原慎太郎がそれぞれキャプテンと副キャプテンを務める(メンバーは本文後段)。チームは17日から沖縄でキャンプを始め、韓国、東京、滋賀、香港といった合宿地や試合会場を渡り歩く。

会見では選手名を読み上げたのちに談話を発し、質疑応答に移った。

以下、会見中の一問一答(編集箇所あり)。

「大きなスコッドになっている理由は、けが人がいることなどです。サンウルブズのメンバーは(国内の)トップリーグが明けてすぐにチームへ合流していて、疲労が高くなっている。彼らはコンディショニングを整え直している。NDSではかなりタフなトレーニングをしてきたなか、私自身、ジャパンで戦う資質を持った選手を見極められました。ジュニア・ジャパンは3月のパシフィック・チャレンジ(PRC)で2勝という結果を残した。そのなかでポテンシャルの高い選手がいたので、それらの選手も見極めました。キャプテンは流、バイスキャプテンは石原。2人ともいいキャラクターの持ち主でリーダーシップもある。彼らがチームを引っ張るのを楽しみに出している。若い選手も多いので、彼らのリーダーシップの資質を高める意味も込めて、彼らをリーダーにしました」

――6月には、欧州6強の一角であるアイルランド代表などと戦います。そのなか、このARCの位置づけは。

「もちろん今回のARCも、代表として戦う大事な試合。育成の一環としても考えています。選手の育成の場にはサンウルブズもありますが、強化の場としてのARCも欠かせない。サンウルブズ、PRCのジュニア・ジャパン、ARCと3つのことを同時進行で強化が図れるのは素晴らしいことです。トップリーグの直後に次の大会に入るため、選手の負担が多い。これを何とかしなければいけません。(断続的に主力を休ませている)サンウルブズにとっては苦しい場面もあると思いますが、そのあたりのマネジメントもうまくできていると思います」

――ARCのメンバーにサンウルブズの選手がいるが、彼らを招集するにあたってサンウルブズ側とどんな連携を図ったか。また、現在海外遠征中のサンウルブズにけが人が出た場合は。

「自分も代表の育成に携わっているので、サンウルブズ側とも日々連携を取っています。あくまでサンウルブズには、代表強化という目標がある。それには自分が責任を持っています。一方で、サンウルブズのメンバーでありながら、いまの海外遠征メンバーには入っておらず、かつARCのメンバーではない選手もいるかと思います。それは、サンウルブズに入っているからと言って必ずしもARCに出られる確証はないというメッセージです。サンウルブズに怪我人が出たら、こちらのメンバーを送る。それに伴って空いたARCメンバーの枠は、(現代表入りをしていない)サンウルブズやNDSのメンバーなどで埋めていきます」

――知念優選手、山沢拓也選手らは、サンウルブズ、ジュニア・ジャパン、過去のNDSに選ばれていないなかスコッド入り。

「知念選手は、以前から注目はしていました。右プロップで具が怪我をしたので、それに伴って呼んだということです。NDSとPRCの時期が重なっていたので、ジュニア・ジャパンの選手は物理的にNDSへは呼べなかった。今回のメンバーにPRCの選手を入れてチャンスを与えますが、内田啓介、山田章仁のような経験者と一緒のチームで戦えるのは彼らの育成、成長に繋がると思っています」

――6月に向け、選手にどんなアピールをしてほしいか。

「アタックのマインドセットを持って、守りに入らずに思い切ってアタックをして欲しい。サンウルブズがスーパーラグビーで強豪からトライを取れているのも、そのためです」

――先日、こんな内容の記事が出ていました。「サンウルブズのメンバーがARCの日本代表に入るなどして、メンバーが流動的になる。選手に負担がかかっている。そこは成長しなければならないだ」。ジャパンのサンウルブズの兼ね合いについては、現状の形式が続くのか。

「自分はその記事を見ていないので何とも言えない。海外のスーパーラグビーのチームも毎週トップチームで戦っているわけではない。ただ海外は層が厚いので、選手を入れ替えてもレベルが落ちない。ただ現状の日本の選手層は薄いので、クオリティーが下がることもあると思います。ただ今回、レスト後にサンウルブズへ復帰した稲垣啓太、田村優、松島幸太朗は、それまでのオフでリフレッシュして、NDSでの3週間のタフなセッションを経て、4月8日、サンウルブズの今季初勝利を導いている。選手にプレッシャーや休暇を与えて、エネルギーがある時にタフなセッションを経て、試合に挑む…。そのサイクルは続けたい。

もうひとつ。今後、スーパーラグビーのチームは18から15に減り、サンウルブズは南アフリカカンファレンスからオーストラリアカンファレンスに移る。いままでは一番過酷なスケジュールと移動を課されていましたが、移動負担が軽減される。それはチームの成長に繋がる。スーパーラグビーでの成功の定義を考えるのですが…。11名のオールブラックスを入れて勝てないチームもある。楽な大会ではないと改めて実感させられる」

――江見翔太選手のように、サンウルブズで活躍したなかARCにいる選手については。

「江見は脇腹を骨折した。復帰まで1か月と聞いているのでARCの最終戦に間に合う。ARCの最終戦をやって、SRのチーターズ戦(国内第3戦目、27日)に間に合うのが理想です。治療だけに専念してそのままチーターズ戦に挑めるとは、思っていないので。NDSの合宿時は、サンウルブズで戦う力をつける意味もあってタフなセッションをやってきた。しかし、これからはやり方を変えたいです。大会への準備という位置づけで臨んでいきます。今回からセットプレー、オーガナイズをしていく。試合モードに持っていきます」

――山沢拓也選手に関して。ジョセフヘッドコーチが以前率いていたハイランダーズへ留学していました。現地でいろんな情報を聞いているのか。

「情報だけで選んでいるわけではない。ポテンシャルがあると見極めたからです。NDSに呼ばなかったのは、パナソニックと連携しているハイランダーズで経験を積むためです。10番(スタンドオフ)は競争率が高まっています。田村優が素晴らしいパフォーマンスを見せています。アピールをしている。そのうちの1人。山沢だけでなくすべての若手10番に言えるが、周りに経験者がいるなかで10番のゲームコントロールができるかが課題です。各カテゴリーでは自身に満ち溢れているのですが。逆に彼らのいいところは、スキルを持っているところ。スペースを見られて、いいところへボールを運べるし、キック力もあります」

――ARCでは大差での試合が続く。

「結果ではなく内容で評価します。自分たちの戦い方を他の選手たちより運べるか、ということ。そこの評価については、より厳しい目で見られるという自信があります。付け加えると、9月に来日にした時にいろいろな記事で読んだのは『イングランド組の多くが引退、辞退してメンバーが大きく変わった』と。ただ、ここまで6か月という時間が経って、新しいチームを作れた。今回のキャプテンは流、バイスキャプテンは石原。他でも堀江翔太、立川理道(昨秋ツアー時の共同キャプテン)というキャプテンの資質を持った人がいます。海外ではレッズのツイ、レベルズのマフィ、チーフスのリーチについては、6月の代表に参加する意思を表明してくれている。ARCの選手が、そのスタンダードでプレーできるのかを見極めていきます。ARCで何点取って勝つといったことは考えず、自分たちの戦いを遂行できるかを考えます」

――リーチらについて、詳しく。

「選ばれたら参加するという意思表明をしてくれた。いいニュースだとは思います。セレクションで、選ぶかどうかを決めます。他にいいバックローもいるので競争力が高まります」

――どんなやりとりがあったのですか。

「いたってシンプル。日本代表に選ばれればプレーしたい、と」

――五郎丸選手については。

「彼とは、連絡を取っていないです」

――4月8日、サンウルブズがブルズに勝利。どう観たか。

「あの試合で何が良かったか。それはリザーブのパフォーマンスです。リフレッシュした経験者たちがいました。矢富勇穀、布巻峻介、稲垣、田村…。冷静にプレーを引っ張ってくれた。それまでの試合は終盤、苦しかった。もう少し経験者がいたら…と思っていました。しかし今回、リザーブの働きが勝利に貢献してくれた」

――堀江翔太選手は5月のサンウルブズの試合で復帰、という計画か。

「はい」

――イングランド組でいまのサンウルブズやNDSに入っていない畠山健介選手、小野晃征については。

「全員、選考に値しますが、個人的に連絡を取っているということはないです。サンウルブズでプレーするチャンスを与えたが、それを引き受けなかった選手がいる、ということです」

――現状では昨季入っていたサンウルブズに入っていない山田選手ですが、若手の育成を主眼に置かれたARCでプレーします。

「ARCの目的は、若手育成ではない。代表強化です。彼がサンウルブズに入っていなかったのは自ら辞退したから」

――怪我からの復帰を目指す立川について。今回のNDSに帯同していますが、どんな役割を担って欲しいか。

「あくまで怪我をしているからですが、いまも我々の隣でリハビリをしています。彼もチーターズ戦に間に合えばいいかと思っています。かといって焦らせたくもないし、だからARCのスコッドにも入れていません。彼の存在感は素晴らしいものがある。沖縄合宿へも、自分から行きたいと志願してくれました。いろんな形で貢献したいと思って、言ってくれたのだと思います。私から彼に役割を与えるわけではないが、彼はリーダーとして当たり前のことをすると思います」

――ジュニア・ジャパン組への期待や選出理由について。

「ポテンシャルを見せてくれた。またそのポジションの層が薄い、ということもあります。フッカーは、堀江翔太が32歳。今後を考えると新しいフッカーを育てないといけない。山田のポジションも然りです。センターについては、トップリーグの各チームはここに外国人選手を使います。各企業が勝ちたいからと補強をしているのですが、それゆえ日本人強化が困難になっています。そのためここへ若い世代の選手を呼び、強化、育成したいと思っています」

――5月に日本大会の予選プールの組み合わせが決まります。強化が本格化するのはここからか。

「いまでも真剣ですよ。はははは! 抽選でプールが決まってから…とは」

――対戦相手へのターゲッティングは、組み合わせ決定後におこなわれるのでは、と。

「その意味でしたら、間違いなくそうです。どんな相手に挑まないといけないかが明確になる。層が厚くないなかですが、それ(対戦カード)に応じてメンバーを選ぶ…と」

<メンバーカッコ内は国内所属先、身長、体重、生年月日、キャップ数=国際真剣勝負への出場数>

■左プロップ

浅堀 航平(トヨタ自動車ヴェルブリッツ、185、120、1994/2/3、―)

石原慎太郎(サントリーサンゴリアス、181、105、1990/6/17、―)

三浦 昌悟(東海大学、180、108、1995/6/8、3)

■フッカー

坂手 淳史(パナソニック、180、104、1993/6/21、4)

日野 剛志(ヤマハ、172、100、1990/1/20、2)

堀越 康介(帝京大学、174、105、1995/6/2、―)

■右プロップ

須藤 元樹(サントリー、173、110、1994/1/28、―)

知念  雄(東芝、184、125、1990/11/18、3)

渡邉 隆之(神戸製鋼、180、120、1994/5/27、6)

■ロック

アニセ サムエラ(キヤノン、198、118、1986/8/30、4)

宇佐美和彦(パナソニック、197、117、1992/3/17、9)

大戸 裕矢(ヤマハ、188、104、1990/3/9、―)

小瀧 尚弘(東芝、194、110、1992/6/13、7)

谷田部洸太郎(パナソニック、190、107、1986/7/29、9)

■ロック、フランカー

細田 佳也(NEC、192、100、1987/8/5、1)

■フランカー

マルジーン・イラウア(東芝、187、105、1993/6/5、4)

小澤 直輝(サントリー、182、103、1988/10/8 、―)

金  正奎(NTTコム、177、95、1991/10/3、6)

松橋 周平(リコー、180、99、1993/11/24、3)

■フランカー、ナンバーエイト

徳永 祥尭(東芝、185、100、1992/4/10、―)

柳川 大樹(リコー、191、108、1989/2/19、―)

■スクラムハーフ

内田 啓介(パナソニック、179、86、1992/2/22、21)

茂野 海人(NEC、170、75、1990/11/21、3)

流  大(サントリー、166、71、1992/9/4、―)

■スタンドオフ

小倉 順平(NTTコム、172、80、1992/7/11、―)

山沢 拓也(パナソニック176、81、1994/9/21、―)

■スタンドオフ、センター

中村 亮土(サントリー、178、92、1991/6/3、8)

■スタンドオフ、センター、フルバック

松田 力也(パナソニック、181、92、1994/5/3、3)

■センター

鹿尾 貫太(東海大学、177、88、1995/9/6、―)

山中 亮平(神戸製鋼、188、95、1988/6/22、7)

■センター、ウイング

アマナキ・ロトアヘア(リコー、191、107、1990/4/14、4)

■ウイング

伊東 力(ヤマハ、173、80、1990/1/11、―)

山田 章仁(パナソニック、182、88、1985/7/26、18)

■ウイング、フルバック

江見 翔太(サントリー、180、95、1991/12/8、―)

尾崎 晟也(帝京大学、174、85、1995/7/11、―)

森田 慎也(神戸製鋼、170、73、1994/10/15、―)

■フルバック

野口 竜司(東海大学、177、86、1995/7/15、4)

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

すぐ人に話したくなるラグビー余話

税込550円/月初月無料投稿頻度:週1回程度(不定期)

有力選手やコーチのエピソードから、知る人ぞ知るあの人のインタビューまで。「ラグビーが好きでよかった」と思える話を伝えます。仕事や学業に置き換えられる話もある、かもしれません。もちろん、いわゆる「書くべきこと」からも逃げません。

※すでに購入済みの方はログインしてください。

※ご購入や初月無料の適用には条件がございます。購入についての注意事項を必ずお読みいただき、同意の上ご購入ください。欧州経済領域(EEA)およびイギリスから購入や閲覧ができませんのでご注意ください。

向風見也の最近の記事