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次の試合を観に行くためのトップリーグ週間ベスト15(第10節)【ラグビー雑記帳】

向風見也ラグビーライター
球を持った際のボディバランスも魅力の山田(写真は昨季のもの)。(写真:田村翔/アフロスポーツ)

日本最高峰のラグビートップリーグ第10節(12月3日~12月4日)の私的ベストフィフティーンを紹介します。これからラグビーを好きになってもらう方の見どころ探しに活用していただければ幸いです。備考は文末にございます。

昨秋のワールドカップなどで何となく勝手を知った方向けにまとめております。もしわからない箇所がありましたら、「まぁ、要は、そういう感じなのね」と読み飛ばしていただいてかまいません。きっと、実際の観戦時に照らし合わせられることと存じます。

トップリーグの第10節は12月10、11日、各地でおこなわれます。こちらをご確認ください。

1 左プロップ

稲垣啓太(パナソニック)…クボタとの接戦に先発。肉弾戦に身体を差し込み、ターンオーバーを誘発。石原慎太郎(サントリー)山本幸輝(ヤマハ)もスクラムと肉弾戦で身体を張った。

2 フッカー

日野剛志(ヤマハ)…豊田自動織機戦のスクラムをリードし、チェイスからのタックル、ボールへの絡み、快足を活かした中央突破と見せ場を作る。有田隆平(コカ・コーラ)の接点での強靭さも出色。

3 右プロップ

山下裕史(神戸製鋼)…サニックスに大勝したゲームに先発。スコアの定まらぬ試合序盤には、グラウンド中盤で相手ランナーを押し返す効果的なチョークタックルを放つ。流れを決したラインアウトからのモールでは、巨躯を活かして壁役に徹する。相手の防御にボールを触らせぬよう身を挺したことで、後方で組む選手が気持ちよく塊を前進させた。大川創太郎 (リコー)はホンダとのスクラムを優勢に保ちながら、タックルや抜け出した選手へのサポートでも存在感を示す。

4 ロック

ジョー・ウィーラー(サントリー)…NTTコムに快勝した日の序盤。相手がグラウンド中盤で得意のオープン攻撃を繰り出す。フォワードにとっては難儀な守備網の「外側」に入ったウィーラーは、勢いよく飛び出し対面のランナーを抱え上げる。連続してフェーズを重ねる際は、再三、球をもらって防御の壁に激突。推進力を活かした。

5 ロック

ヒーナン ダニエル(パナソニック)…退場者が出たチームにあって、だめ押しのトライを決めるなど最後まで運動量を保った。北川俊澄(トヨタ自動車)もラックを乗り越えて攻守逆転を誘うなど、下働きで光った。

6 ブラインドサイドフランカー

モセ・トゥイアリイ(ヤマハ)…敵陣ゴール前でモールを組んだ際は、相手の防御からボールを守る壁になってトライ獲得を支えた。コカ・コーラに敗れたリアム・メッサム(東芝)も球を持った際の縦への直進、防御時のチョークタックルで存在感を示した。

7 オープンサイドフランカー

ジョージ・スミス(サントリー)…ナンバーエイトとして先発し、自陣でのピンチを救うタックルや敵陣での落ち着き払った突破を披露。ともにプレーしたツイ ヘンドリック(サントリー)も、接点付近から外側へ流れる守備組織の死角を何度もえぐった。近鉄戦に途中出場の大和田立(NEC)は、防御網のギャップへ勢いよく走り込むプレーを重ねる。トライも決めた。

8 ナンバーエイト

ワイクリフ・パールー(トヨタ自動車)…攻守でビッグヒットを連発。ヤコ・クリエル(クボタ)は1点リードで迎えた後半13分、インゴールでヒーナンのトライを防ぐ。

9 スクラムハーフ

流大(サントリー)…連続攻撃を途切れさせぬ配球を続けた。アンドリュー・エリス(神戸製鋼)は徹底マークに遭いながら、迫りくる防御のもともと立っていた場所へ端的にパスを放つ。見事。

10 スタンドオフ

大田尾竜彦(ヤマハ)…スタンドオフの仕事が「1、チームを勝たせるためにスコアを狙う」「2、スコアを狙うためにチャンスを作る」「3、チャンスを効率よく作るために周囲を動かす」「4、1~3をずっとし続けるための施策をおこなう」だとしたら、この日トップリーグ100試合出場を果たした背番号10はまさにスタンドオフ。田村優(NEC)はパスでゲインラインを割り、近鉄戦序盤の得点を促す。

11 ウイング

山田章仁(パナソニック)…前半36分、自陣深い位置の左タッチライン際から駆け上がる山沢拓也へ静かに並走。山沢が相手防御に囲まれると、その相手の背後でパスをもらってインゴールへ。トライ。「味方の作ったチャンスへは敏感でいたい」との思いを具現化。

12 インサイドセンター

トニシオ・バイフ(神戸製鋼)…勢いをつけてパスをもらいながら、迫りくるタックラーをセンチ単位でかわしていた。アマナキ・ロトアヘア(リコー)は守備列の外側からせり上がる防御を連発。ビッグタックルで落球を誘い、攻守逆転からのトライを誘いもした。マレ・サウ(ヤマハ)も見事。ラインアウトからの攻撃では、最初のフェーズで防御の分厚い箇所をへっちゃらでぶち破る。守備網の目の前でボールをもらい、その勢いでトライを奪ったりもした。

13 アウトサイドセンター

リチャード・バックマン(パナソニック)…味方が防御を引きつけた先では、この人がその周辺のスペースを射抜いた。自陣からのビッグゲインでも沸かせた。後半13分、敵陣ゴール前右でウイングの北川智規のトップリーグ通算100トライをアシスト。この際は、対面のタックラーに視線を向けて真っ直ぐクラッシュすると同時にバックフリップパスを放っていた。簡単なようで難しい、「相手を引きつけて味方に気持ちよく走らせる」スキル。左中間、右中間のスペースを切れのある走りで破る。相手を抱え上げるタックルを披露するなど、守っても存在感示す。

14 ウイング

伊東力(ヤマハ)…抜け出した味方へのサポートから、連続攻撃のさなかで接点からボールをもらってから、と、さまざまなパターンから持ち前のランニングスキルを活用。そのままトライを奪った。防御網の外側から鋭く飛び出してのタックルでも魅せた。後藤輝也(NEC)は自軍キックオフの弾道を掴んでそのまま快走で1トライ目。敵陣深い位置での防御ラインに入ってインターセプトを決め、2トライ目。攻撃網に入った際のステップで前へ、前へと進む。

15 フルバック

アンドレ・テイラー(近鉄)…惜敗したゲームにあって、持ち味を発揮。例えば13点差を追う前半30分頃、自陣でキックを捕球すると、目の前にきれいに揃った相手チームのチェイスを難なくかわす。後半には自陣から5人抜きのランを繰り出しトライを決めた。一方、対面に入った吉廣広征(NEC)はラインに参加して球をもらった瞬間の一時停止の動きで、守備のひずみを創出。そこを自ら鋭利にえぐった。

<備考>

・ポジション解説は以下のURLのテキスト文中の「■」部分をご参照ください。

2019年W杯に向け…。ラグビー版「ドラフト会議」スカウティングレポート?(前編)

2019年W杯に向け…。ラグビー版「ドラフト会議」スカウティングレポート?(後編)

・背番号4、5(両ロック)、背番号6~8(フォワード第3列)と背番号11、14(両ウイング)は、ポジションの類似性から当日のゲームとは異なる背番号で選出させていただいていることがあります。

・基準は独断ですが、なるべく「その試合での勝利(もしくは勝利を目指す過程)に貢献した選手」をご紹介します。

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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