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サンウルブズのマーク・ハメットヘッドコーチ、今季限りで辞任。胸中語る。【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
現役時代はニュージーランド代表フッカーとして活躍。(写真:アフロスポーツ)

国際リーグであるスーパーラグビーに日本から初参戦しているサンウルブズのマーク・ハメットヘッドコーチが、6月27日、今季限りでの辞任を正式発表。都内で胸中を語った。かねて報道されていた通り、来季からはハイランダーズのアシスタントコーチに就任予定だ。

今回が初来日となったハメットヘッドコーチは、発足初年度のチームをけん引。この6月には日本代表のヘッドコーチ代行も務めた。4~5月に同じ仕事を務めた中竹竜二・20歳以下日本代表ヘッドコーチは、日本協会のコーチングコーディネーターの立場で「フラットな目線で日本ラグビーを観られたと思う。意見を聞きたい」と語ったことがある。くしくも今回の談話には、この国の楕円球界の課題が暗示されている。

以下、ハメットヘッドコーチの一問一答(編集箇所あり。※は当方質問)。

――2月から5月の12戦で1勝10敗1引き分けのサンウルブズが、約1か月の休息期間を経て後半戦に入ります。

「今季始まる前、次に繋げられるようなチーム作りをしようと話してきた。前半戦はその通りにできましたが、それを後半戦も続けていこうとミーティングで伝えました。ビデオを作りました。自分たちの戦い方、成績、活躍についてまとめました。それで、サンウルブズがどんなチームかを再認識しました。この後はバーベキューに行って、結束を深めたいと思います」

――退任に至った経緯は。

「まず申し上げたいのが、非常にサンウルブズでの経験は充実していたということ。この決断は辛かったです。ただ、常に目標として掲げていたのは、ニュージーランドでアシスタントコーチとして密にコーチングに携わりたいということでした。ヘッドコーチになると、どうしてもマネジメントに関わらなければならない」

――ニュージーランドに戻りたい思いもあったのか。

「自分が何を達成したいかという思いに基づいて、舞い込んできたチャンスを手にして生きています」

――サンウルブズから、来年以降のオファーもあったのか(※)。

「話はありました。そのプロセスで、色んな話をさせていただきました。いまこうして、サンウルブズをいい状態に持ってこられた。これを今後どう繋げていくか、運営の方と話しました」

――どんな話をしたのですか(※)。

「チームを、人をどう育てるか。環境をどう改善していくか。そうしたハイパフォーマンスに関する話をさせてもらいました」

――いまはないクラブハウスを作る、とか(※)。

「この4~5年をかけて、そうした拠点は作らないといけない」

――ハイランダーズからのオファーはいつ。

「ハイランダーズのことは今後の話で、いまはサンウルブズに集中したい。控えさせてもらいたいと思います。ただ、スーパーラグビーの世界は人材確保に関して競争意識の激しい場所です。監督、選手、コーチともです。そういう話が早い段階で来るのは当たり前の話です」

――ニュージーランドに戻りたい個人的な理由は。

「ニュージーランドには家族も住んでいるし、ニュージーランドを愛している。海外いる日本人が日本に帰りたいと思うのと同じ気持ちはあります」

――サンウルブズに残せた「レガシー」とは。

「皆がサンウルブズの仕事に楽しんで向かえるという状況になった。毎週タフ過ぎて心身ともにバテると、成果は出ない。選手もチームに守られていると感じてくれているでしょうし、全員が自分たちの居場所と思える空間は作れた。チーム内に色々な儀式ができたことで、個々のチームへの気持ちがより強くなっています。

もうひとつ、今回のコーチンググループがスーパーラグビーをどういうものか知れたことも大きい。選手のレベルも上がっていますし、この間の代表戦でも本来のメンバーが数名不在だったにも関わらず、あれだけの戦いをした。それもスーパーラグビーの成果です」

――6月の日本代表は、スコットランド代表との2連戦を含む3戦で1勝2敗。ナショナルチームの指揮を執った経験はいかがでしたか(※)。

「最高でした。サンウルブズから代表へすぐに移行したので、疲労はありました。ただ、最高の経験でした。一生忘れないと思います」

――日本代表のロック小瀧尚弘選手、フランカー金正奎選手が追加招集されました。

「いまは故障離脱者が多いので、選手が必要。バックスの補強も考えています」

――7月2日、東京は秩父宮ラグビー場でワラターズとの第15節に挑みます。

「楽しみです。レガシーを作り続けるには、パフォーマンスを示さなきゃならない。私にとっても日本でやる最後の試合。しっかりとした準備をしたい。テストマッチの時と同じで、暑い天候のもと、速い展開になると思います。フェーズを重ねてアタックすれば、いい戦いができると思います」

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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