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痛みをこらえスクラム。初白星の好機逃した稲垣啓太、「ショックはでかいけど」【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
国内開催試合の際の稲垣。球持てば低い前傾姿勢でタックラーを巻き込む。(写真:田村翔/アフロスポーツ)

国際リーグのスーパーラグビーに今季から初参戦する日本のサンウルブズは、現地時間の4月2日、南アフリカはポートエリザベスのネルソン・マンデラ・ベイ・スタジアムで第6節に挑み、キングスとの未勝利同士の1戦を28-33で落とした。開幕5連敗となった。

試合後、左プロップとして持ち前の突進力と運動量を活かす稲垣啓太が、右足を引きずりながら思いを語った。

同国初のゲームに臨んだサンウルブズは、ボールキープ重視のスタンスを取った。リードされた前半20、24分と、ペナルティーキックからクイックタップを選択してスコアに結び付け、15-15と同点に追いついた。

もっともセットプレーと接点で苦戦。スクラムでは前半28分に自陣22メートル線付近右での1本を押し込まれ、15-18と勝ち越し点を許した。後半開始初頭こそ五分に持ち込んだが、要所で相手の圧力を受けた。

攻め続けながらも相手の防御を前にミスを重ねて迎えた、後半38分。自陣ゴール前左から3点差をひっくり返さんとするも、起点のスクラムでターンオーバーを喫した。23-33とだめを押された。この時、稲垣は右足を強く痛めていた。3日、途中離脱することとなった。

国内では日本最高峰トップリーグで3連覇中のパナソニックに所属する稲垣は、身長183センチ、体重115キロの25歳。額の右側に30針を縫うけがを負いながらプレーを続けたこともあるなど、タフさでも知られる。

昨秋のワールドカップイングランド大会で歴史的な3勝を挙げた日本代表のメンバーでもある。南アフリカ代表戦(34-32で大会24年ぶりの勝利)で右手中指を折ったまま、以後の全試合に先発していた。

チームはここまで、3月26日のブルズとの第5節を27-30とするなど(シンガポール・ナショナルスタジアム)、接戦を演じている。

現在はシンガポール、南アフリカで4試合をおこなう長期遠征の真っただ中だ。8日にケープタウンで現在南アフリカカンファレンス首位のストマーズと、15日にはブルームフォンティンで第2節に対戦済みのチーターズ(3月12日、シンガポールで31-32と敗戦)とそれぞれぶつかる(いずれも現地時間)。

以下、キングス戦直後の稲垣の一問一答(一部編集)。

――(当方質問)最後のスクラム。周りの方曰く「稲垣は足が攣っていた」と。

「攣っていた、ならよかったんですが…。気合いでした。…(試合全体を振り返ってか)いい時と悪い時のムラッ気がある。一貫性はまだまだですね」

――スクラムは序盤から苦しんでいましたが、試合中盤、やや修正しました。

「最初は、(足元へ投入された自軍の)ボールが止まったままでした。それを(後ろへ)掻こうとしていたら、上体が上がってしまった(中盤は、その点を修正して五分に持ち込んだ)」

――いつも、あと1歩で勝てない。

「まぁ、何と言うのですかね。色んな選択肢があった。例えば、あそこ(3点差を追う試合終盤、敵陣ゴール前で好機を得た)でペナルティーゴールを狙って同点にすることもできました。ただ、あの時は皆、トライを取ろうと考えていました。取れる自信はあったんです。ただ、それが取れなかったということですね」

――(当方質問)未勝利チーム同士のゲームを落とした。心境は。

「いやぁ…ちょっと、ショックはでかいですね。でも、切り替えるしかないでしょうね。いままで接戦をやってきて、ここで崩れるわけにはいかない。来週に向けては、マインドチェンジが大事になる。来週、再来週も試合がありますし」

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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