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日本代表キャプテンのリーチ マイケル、覚醒!? トップリーグ躍動の裏に指揮官の言葉【ラグビー雑記帳】

向風見也ラグビーライター
好物はサバ塩定食(写真は11月14日の開幕節)。(写真:YUTAKA/アフロスポーツ)

これがリーチ マイケルのラグビーだ。

果敢にチームの陣形に加わっては球をもらい、守備網を突っ切り、球が出た頃には次の攻撃へ参加する。守っては試合展開を先読みし、危険地帯をカバー。10―10の同点で迎えた後半15分頃のピンチの場面、相手のナンバーエイトであるホラニ龍コリニアシにタックルし、そのままボールへ絡みつく。ランナーが球を手離さないノット・リリース・ザ・ボールの反則を誘う。

強者同士の合戦での命綱となるブレイクダウン(接点)でのせめぎ合いで、存在感を示した。「レフリーとしっかりコミュニケーションを取ること」をモットーとする27歳は、含み笑いを浮かべた。

「ブレイクダウン、面白かったですね、(この日のレフリーの平林)泰三さん、よく、吹いてくれました」

膝の打撲で前節は欠場し、この週の初めは練習ができない状態だった。週のなかばには今年の顔としてイベント出演も余儀なくされ、冨岡鉄平監督は「前半40分で交代」と思い描いていた。

ところが…。グラウンドレベルに立つスタッフに、トランシーバーを通して呟くほかない。

「代えられないな、これじゃ…」

2015年12月12日。公式入場者数「20138人」の東京は秩父宮ラグビー場。国内最高峰トップリーグの第5節に、日本代表キャプテンのリーチが東芝のフランカーとして登場。2連覇中のパナソニックとのせめぎ合いを17―17と引き分けで終えるなか、結局、フル出場を果たしたのだ。ハーフタイムに「代えなくてもいい」と言ったという本人は、幼き我が子を抱きかかえ感謝の言葉を述べるのだった。

「膝の調子も良かったし、交代しなくていい、と。東芝のメディカルスタッフやトレーナーが、いい強化をしてくれた」

9、10月のワールドカップイングランド大会で3勝を挙げ、一躍、時の人になった。帰国後は高校時代を過ごした札幌の放送局も含め、多くの番組出演や取材の依頼を受けた。本人へ直接届いたオファーも多く、最後は「携帯の電源を消す」ほかなかった。

「リラックスは、できてないですね」

トップリーグ開幕前、こうこぼした。「いったん(ワールドカップで気持ちを)頂点まで持って行って、もう一度、頂点へ行くのは難しい。少しずつ上げてゆくしかない」と心身の疲労を認めた。

周囲の心配が的中する形で、序盤はやや不振にあえぐ。11月21日、鹿児島県の鴨池陸上競技場での第2節は、同じ日本代表のナンバーエイトのアマナキ・レレイ・マフィがいるNTTコムに13―37で敗戦。しかしその直後、冨岡監督はリーチにこう声をかけた。

「皆が期待しているプレーを、期待以上に。それがリーチ マイケルだ」

リーチの疲れの色を把握したうえで、あえて、発破をかけたのだ。

「彼は日本代表のなかでも五郎丸(歩)や堀江(翔太、それぞれ副将)では背負えないようなものを背負っている。プレー、言動がそれにふさわしいものでなければならない、と。お客さんも、リーチのリーチらしいプレーが観たいでしょう」

11月28日の第3節へ向け、「冨岡監督がいいことを話してくれた」と本人。少なくとも精神面においては、充実した準備ができた。静岡はエコパスタジアムのホンダ戦では、結局、離脱の原因となる膝の怪我を負うも、指揮官は「準備の部分で満足」と笑っていた。

王者を一泡ふかすべく強行出場したリーチは、今後もゆらめきながらも自分なりの「頂点」を目指してゆく。ウェイトトレーニングで重量過多だというが、いまの適正である「110キロ」への絞り込みにも着手する(身長は189センチ)。

「誰も真似できない、オールラウンドなプレーヤーになりたい」

東海大学を卒業して間もない頃に語った「目指す選手像」は、まだまだ向こう側にある。

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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