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決勝&3位決定戦を前に…ワールドカップ取材日記10【ラグビー雑記帳】

向風見也ラグビーライター
日本だ表はすでに帰国。フィーバーの渦中だった。(写真:REX FEATURES/アフロ)

ラグビーワールドカップのイングランド大会が9月18日~10月31日まであり、ニュージーランド代表が2大会連続3回目の優勝を果たした。日本代表は予選プール敗退も、国内史上初の1大会複数勝となる3勝を挙げ、話題をさらった。

以下、日本テレビのラグビーワールドカップ2015特設サイトでの取材日記を抜粋(10)。

【10月26日】

イングランドを発つまで、あと1週間となりました。

午前11時前。ヴィクトリアから地下鉄で数分足らずのウェストミンスターへ。駅の階段を登れば、目の前にはかのビッグベンがそびえ立ちます。街にはすすけた白の石造りの建物が並び、澄んだ空と黄が混ざった緑葉が差し色でした。

束の間の観光の後、取材です。ウェストミンスター寺院近くのジャパンパビリオンへ向かいます。

ここは次回のワールドカップ開催地である日本をアピールする展示会。同国のワールドカップ組織委員会運営のもと、開催都市の紹介パネルが展示され、日本に住む外国人選手のインタビュー映像も流れ、さらにはガチャガチャや書道などのワークショップが展開されています。ジャパンのジャージィを着てトライを取る写真を撮影できるコーナーでは、アテンドしてくださった組織委員会のMさんから「やってみますか」と。断れず。意外(?)と、人の言うことは素直に聞く方です、と、言っておきます。

アパートへ帰り、やや昼寝をしたのちにこの日のリポートを執筆。

【10月27日】

この日はWi-fiの強いカフェで終日、執筆です。球っている原稿は1つや2つではありません。帰国後の仕事の段取りだって、整えなければなりません。インターネットをチェックすれば、日本代表の選手は各所属先の練習に合流しているとのこと。昨日の取材でお会いした広告代理店の方からは「きっと、浦島太郎状態ですよ」と恐ろしい助言をいただいています。帰国したら、どうなっているか。楽しみであり不安であり。

夜は早めに就寝。次の日の早朝、ある方との電話を繋ぐためです。

【10月28日】

朝4時前、起床。電話を繋ぎます。…出ません。昨日の日記通り、ある方との連絡を取る約束をしていたのですが、結局、先送りとなりました。間を繋いでくれた方からも、変更願いの連絡が入りました。不測の事態にどう対処するか。ラグビーでも必要なスキルです。僕た取った策は、2度寝でした。

決勝戦の取材申請が受理されました。これで晴れてファイナリストです。…違うか。

もっとも、3位決定戦は希望者多数のため不受理。キャンセル待ちのリストに入れていただきました。

ネットのニュースやYou tubeを眺めれば、日本代表の選手達がテレビ局をはしごしているようです。五郎丸歩選手には60件以上の取材が殺到しているとか、府中市での東芝&サントリー所属の日本代表選手のパレードにも数千人が集まっただとか、過去8年の取材歴を鑑みると(失礼ながら)にわかに信じがたい話が舞い込んできます。これをバブルというのでしょうか。

【10月29日】

夜中に「You tube」をイヤホンなしで観られます。いい加減、日本が恋しくなっています。中高生の頃に聞いていたJ popの映像ばかりを再生しています。

朝、2日ぶりにシャワーを浴びます。使う日によっては床が濡れている。天井にはいつも黒い点々。ここの共同シャワーには、「温室育ちのワーキングプア」の僕には承服しがたい要素が数多くあります。おかげでお湯を身体に当てる回数は限られてきました。週末の試合取材時、周りの方から「部屋はどんな感じ?」と聞かれれば、「男子だから平気」と答えています。

もっとも、この生活もあと3日で終わります。11月2日には帰国。残された大きな仕事と言えば、今回の取材パスを出させてくれたサイトへの決勝戦のレポート寄稿と、その1日前の、あの、電話取材です。そう。28日にキャンセルになった件です。リスケの日程は「イングランド時間朝7時」(入国時は8時間だった時差は、サマータイム終了に伴い9時間になりました)。

早く寝ます。

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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