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松島幸太朗の眼 ワールドカップ&トップリーグを語る【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
ワールドカップのアメリカ代表戦では貴重なトライを挙げた。(写真:アフロ)

9、10月のラグビーワールドカップイングランド大会で3勝を挙げた日本代表の松島幸太朗が、11月17日、単独取材に応じた。

現在はサントリーの一員として、日本最高峰のトップリーグに参戦中。ワールドカップではジャパンが挑んだ全4試合に出場し、好判断によるタックルと持ち前のフットワークを活かし、予選プールBでの3勝をもらたした。

桐蔭学園卒業後に南アフリカのシャークス傘下のアカデミーへ挑戦。日本代表に初選出された2013年、サントリーへ加入していた。

以下、一問一答の一部。

――ワールドカップを目指す日本代表には7月に合流。それまでは南半球最高峰スーパーラグビーのワラタズでプレーしていました。

「スーパーラグビーが終わって1週間ぐらいしてからの合流。それまでの合宿は、きつそうでした。『けが人が多いなか、ガチガチ(全力でぶつかり合う状態)でやっていて、それプラス走っている』。(スタンドオフの小野)晃征さん、ウッチーさん(スクラムハーフの内田啓介、後のバックアップメンバー)とかからそう聞いてはいたんですけど、実際に顔を見たら、皆、疲れていました。

ワラタズもガチガチな練習が多かった。ジャパンほどは走っていなかったですけど、フィジカルの部分は成長できたかな、と。ワラビーズ(オーストラリア代表)の選手が多いなかで、やれた、というのは、自分のなかでもプラスです」

――間もなく北米遠征が始まります。7、8月のパシフィック・ネーションズカップ(アメリカ・カナダ)は、アメリカ代表、フィジー代表、トンガ代表に敗れ、1勝3敗の4位で終えました。

「日本のアタッキングラグビーをどう理解できているかを測る大会。理解力を深めるのが大切でした。大会期間中でも普通に(ハードな)練習していたので、身体が動かないのも事実でした。きつかったですね。最初の20分で疲れました。すぐに息が上がりました。前の日の練習の疲れが抜け切れずに、試合に入る感じでした。フレッシュな状態でやった記憶がない。相手もほどんどフィジカルなチームだったし、(自分たちの)筋肉のダメージも大きかった。そんな試合をすればするほど、精神的にも来る(負荷がかかる)。タフな大会でした。

ただ、疲れているなかでもアタッキングラグビーができているところはあった。フレッシュな状態であれば大丈夫、という自信はありました。逆に、あの時期にフレッシュな状態でやらないでおいてよかったな、とも思いました。ワールドカップはもっと強いところとやります。(大会前に)一番きつい状態で試合をやり続けていて、その辛さを経験して、自分の限界もわかったと思う」

――その「限界」を知ったことおかげで、9月の現地入り時に肉体的な辛さを感じたことは…。

「なかったですね。イギリスに入った段階で、トレーニングの強度がちょっと落ちたこともあって」

――9月19日、ブライトンコミュニティースタジアム。過去優勝2回の南アフリカ代表に34-32で勝ちました。対戦相手への分析は細やかでした。ホテルの共用スペースの壁には、各選手の分析シートが一面に張られていました。

「トップレベルの大会で、トップレベルのチームとやる機会はあまりない。しかも初めての対戦ということで、同じポジションの選手を分析していきました。チーム全体でも分析はしましたけど、まず、それぞれの選手が、その(対戦する)選手を知ろうという部分から(準備が)始まりました。僕は(自身がプレーする)バックスリーをチェックしました。ほとんど知っていたんでやりやすかったですが」

――松島選手は桐蔭学園高校卒業後、シャークスのアカデミーに在籍していました。

「パトリック・ランビー(当日のスタンドオフ)だったり、シャークスの選手は知っていたので」

――当日、センターの立川理道選手がランビー選手に向かって果敢に仕掛けていた。

「(上半身の力でねじ伏せに来る南アフリカ代表勢のなかで、)彼が上に(相手の上半身に)タックルするところを見たことがなかった。ほとんどチョップ(足元への)タックルの選手。そこへ行って(走りこんで)、かつゲインすれば、気持ち的に嫌に感じるだろうなとも思っていました」

――結局、チームは予選プール3勝。今回のメンバーで「この人がいてよかった」という選手は誰ですか。

「田中史朗さん(スクラムハーフ)と(副キャプテンでフッカーの)堀江(翔太)さんと、(キャプテンでフランカーの)リーチ(マイケル)さん。田中さんがストレートに言う。それを堀江さんがやんわり言葉を変えて伝える。で、リーチさんがまとめる。うまくチームをまとまったのは、3人がいたからです。

誰か、ストレートに言える人がいないと、もしちゃんと考えていない選手がいた場合に『あ、そうだな』と気づかせることができない。ストレートに言う選手、やんわりと言う選手、最後にまとめる選手。その3人がいてよかったと思います」

――いまはサントリーの一員としてトップリーグを戦っています。11月13日の初戦では2連覇中のパナソニック(田中、堀江が在籍)に5-38で敗れましたが、この先は。

「サントリーのラグビーって、複雑なので。そこへ代表選手が合流して、いままで残っていた選手がどうコミュニケーションを取り合えるか。個人技に走るんじゃなく、チームのなかでの自分の役割をはっきりさせることが大事です。(パナソニックは)ダブルタックルの意識がすごかった。その試合に関しては、意識の違いが大きかった」

――攻撃中の1対1の局面に、相手の「ダブルタックル」よりも速いサポートが必要だった、と。

「今季パナソニックと初めてやったということで、それを忘れてしまっていた部分もあった。いちばん大事なのは、ブレイクダウン(接点)です」

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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