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日本代表エディー・ジョーンズヘッドコーチ、国内最後の試合後会見【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
ジョーンズHC(写真右)はスピーチがうまい。

4年に1度のワールドカップ(イングランド)を今年9月に控えるラグビー日本代表は8月29日、本番前最後となる国内でのテストマッチを東京・秩父宮ラグビー場でおこなった。ウルグアイ代表を40―0で制し、試合後、大会終了後に辞任するエディー・ジョーンズヘッドコーチ(HC)がフランカーのリーチ マイケルキャプテンとともに会見した。

試合は着実にキックでエリアを獲得した前半を21―0でリードし、さらにギアを上げた後半にも3トライを獲得。チームは本大会の登録メンバー31人を発表し、9月1日に離日。同19日にグロスターで南アフリカ代表と予選プール初戦に臨む。

以下、会見中のジョーンズHCの一問一答要旨。

「今週の調整で、いいパフォーマンスができると思っていました。先週、母から『大変。試合はどうなる』と聞かれました。メディアに書いていることは信頼するなと伝えました。チームは日本の歴史を変えるために向かっています。

今日はウルグアイ代表という、ワールドカップに出るチームに40点差で勝った。24年間ワールドカップに勝っていない日本が…。という観方もできます。ただ、けれども、きょうよりも磨き上げなければいけない。60点差で勝てなきゃいけなかった、とも言える。

スクラムもラインアウトも有効で、無失点に抑えた。今季初めてアタックでリズムが出た。ポジティブな面が出た試合でした。以上です」

――後半のテンポアップについて。

「前半は保守的なところがあった。もっと積極的に自信を持って、勇気を持ってアタックしようと言いました。きょうはもっとコンディションが悪いと思ったら、そうでもなかった」

――今日の収穫は。

「真壁(伸弥、ロック。昨季2月の日本選手権決勝で右太もも裏の筋肉が切れて以来の復帰)とナキ(=アマナキ・レレイ・マフィ、ナンバーエイト。昨年12月に左股関節を脱臼骨折。この日は11時から所属先のNTTコムの練習試合=東京ガス戦に出場。故障後初の実戦に臨んだ)。パワフルな選手が復帰できた。スコッドの層に厚みが出る。スクラム合戦での勝てた。後半(11分)からは若手(プロップ渡邉隆之)も出た。いくつか反則をしたけど、素晴らしい働きもした」

――マフィの出来。

「グラウンドを笑顔で離れられた。強いキャリーもあった。ラグビー界で最も深刻な怪我をしたのに、8か月でここまで復帰。すばらしいこと。NTTコムのメディカルのサポートにも、今日私が観に行けるように試合の時間調整(11時キックオフ。日本代表のゲームは18時から)をしてくれたことにも感謝しています。もし日本に帰って来たら、携帯電話はNTTにします」

――この日の試合が31日のメンバー発表に影響はあるか。

「何か月も前から構想は決まっていた。もし真壁とナキが間に合わなければその部分は変わっていたかもしれませんが、そうではなかった」

――スクラム。後半は反則も取られていたが。

「コイントスの表か裏でペナルティーが決まっていたようなもの。我々の問題だとは捉えていません」

――ウイング(福岡堅樹、松島幸太朗、途中出場のカーン・ヘスケス)の出来。

「ケンキ(福岡。この日1トライ)には残念な思いです。もう3トライは取れた。あれだけボールが回らないと取れないのかと。まだまだ子供です。でも成長はしている。松島もよかった。カーンもいいプレーをしている」

――状況判断を高めたいと言っているが、具体的には。

「ワイドに展開するチャンスがあったのに、近場を攻めた。ワールドカップを戦うにはリスクを伴う。前半は保守的で、後半は思い切りが出た。選手間のコミュニケーションはよくなった。いい形になると思います」

――先発のセンター、クレイグ・ウイングの出来。

「ウイングが入ることで、ディフェンスが結束します。彼の周りの選手に自信を与え、リーチの役にも立つ。欠かせない存在だと思います」

――松島はセンターやウイングでプレー。

「ユーティリティーであることが彼の価値です。彼がどこをプレーしたいかではなく、チームがどこで求めているかでポジションが決まります」

――(当方質問)冒頭から、いい準備ができたと言っているが具体的に…。

「自分の退任を選手が分かったからでしょう。また4年間、私のもとでやらなくていいと、ハッピーだったのではないでしょうか」

――(当方質問)コンディションやフィールド内のプレーについては。

「長い準備期間は、必要だった。心身とも疲れた時期もあった。先週のフィジカルは70パーセントくらいで、今週は80パーセント、そして来週は90パーセント。週ごとにフィジカルが高まるようなプログラムを組んでいます。ワールドカップは100パーセントで迎えます。ワールドカップが近づいている空気が選手の間で広まっています」

――日本では今日が最後。

「寂しい思いもありました。今日の観客の皆さんもジャージィを着て、旗を持って、誇りを持って応援できるようになっていた。感激した。選手たちも嬉しいと思います」

――ランナーが孤立してターンオーバーを奪われる場面。

「ボールを持っていない選手の動きを上げないといけない。もうひとつ言えるのは、ウルグアイ代表も必死に動いていました。すべての面で我々が上回っていたのに、必死でタックルし続けて…。(試合終盤に)ルーク(=トンプソン ルーク、ロック)が(自陣深い位置から)インターセプトして抜けた場面。畑仕事の馬車みたいな走りでしたが、ウイングがもっとそこへ走り込まなきゃいけなかった。ただ、ルークは日本代表にとって必要です。毎回、身体を張って戦っています。足首もねじ曲がっていて、それでも毎週100パーセントで戦っています」

(会見終了間際)

「きょうが日本で最後の記者会見。メディアの皆さんには感謝しています。ラグビーの認知度を高めてくれました。スポンサーと同じくらい大事な存在です。色々あったと思いますが、それも関係性のひとつ。ワールドカップで旋風を巻き起こします。実力を観ていただきたい。この先、楽しい7週間になると思います」

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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