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変化球で意気込み。オーストラリアの人気者、ニック・カミンズは笑顔【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
澄んだ瞳。最近は髭も生やしている。

カールのかかったブロンドの長髪をなびかせる、オーストラリアのスポーツ界きっての人気者だ。身長189センチ、体重99キロのサイズで勇敢に走るさまが、世界一怖いもの知らずといわれるバジャー(アナグマ)に例えられ、「ハニーバジャー」の異名をとる。

ニック・カミンズ。8月15日に東京・秩父宮ラグビー場でおこなわれる日本代表の強化試合で、世界選抜のウイングとして先発する。

ここまで15キャップ(国同士の真剣勝負への出場数)を獲得してきたオーストラリア代表にもスコッド(候補)入りしており、9月からのワールドカップイングランド大会でのメンバー入りも狙う。

今季の南半球最高峰スーパーラグビーでは、オーストラリアのウェスタン・フォースで日本代表の山田章仁とともにプレー。昨季は日本最高峰トップリーグのコカ・コーラでも活躍した。

12日、都内のホテルで取材に応じた。ユーモアであることを是とするカミンズは屈託のない笑みを交えて語り、通訳を担当した村上泰將さん(パナソニック)には「英語として聞くと、カミンズの話は本当に面白い」と感想を残した。

以下、カミンズの一問一答。

――ウェスタン・フォースでチームメイトだった、山田選手の印象は。

「私が知る日本人のなかで2番目にいい奴です。アジリティーのある、危険な選手。マッチアップは楽しみ(取材日翌日の13日、山田の一時離脱が発表された)。…2番目、というくだりで笑いが取れなかったな」

――(当方質問)山田選手はとにかくいい奴、なんですね。いつそう感じましたか。

「ある日、僕がクラブハウスに弁当を持っていくのを忘れた時、ハンバーガーを買ってくれた」

――日本でもプレーしています。今回のチームメイトに、ジャパンの情報を聞かれたら。

「(口にチャックを締めるような動作をして)情報は遮断されています。ただ、聞かれれば何でも話します。そういえば、試合後、田中史朗(14年11月に招集されたバーバリアンズでチームメイトだった)と話すのが楽しみです。彼はすごいストーリーテラーです」

――バーバリアンズの思い出は。

「ワラビーズ(オーストラリア代表の愛称)と対戦しました(11月1日にイングランドでぶつかり、36-40で敗戦)。勝ち負け以上に素晴らしいゲームができた。自分がした試合のなかでも良いゲームのひとつです。今回のチームでは、アダム・トムソンもそのバーバリアンズにいました。アスリートであり、ラグビー選手だ。同じ文章のなかにこの2つを併記するのは、なかなか難しいのですが」

――(当方質問)以前、バーバリアンズに参加した日本人選手がこんな意味合いの感想を述べていました。「練習はゆっくりなのに、試合での集中力はすさまじい」。どうしてできるのですか。

「それぞれの経験の部分が大きいのではないでしょうか。皆、小さい頃からラグビーをしていて、20代、30代になっている。あとは試合までの1週間で作り上げるチームビルディングの部分が効果的だと思います。特にオフフィールドでのもの、がね」

――(当方質問)最近のスーパーラグビー。肉弾戦が激しくなっています。ターンオーバーに次ぐターンオーバー。なぜ、そうなっているのでしょう。

「どうすれば効果的に相手をどかせるか、など、コーチングが具体的になってきたのが要因ではないでしょうか」

――いまの、日本代表で注目選手は。

「(有田)隆平。いまは、メンバーに入っていないんですね。小さいけど、どこにでも顔を出して仕事をする。ボールキャリーとしても、相手のタックルを蹴散らす。セブンズ代表では桑水流(裕策)。大きいのに器用で、オリンピックには必ず出ます(2人とも、カミンズの国内所属先であるコカ・コーラの選手)」 

――今回のチームでは、オーストラリア代表入りをカミンズ選手らと、国際舞台の第一線から退いたキャリア組が混在しています。難しさは。

「短い練習時間ですが、素晴らしい選手の集まりだと感じています。ベテランの選手たちも、自分たちのような選手を助けたいと言っている。私たちのチャンスをつぶすことはあってはならない、と。彼らはワールドカップの素晴らしさを知っていて、それを経験すると思ってくれています。そのあたりのビジョンは、ミーティングでも確認されています」

――オーストラリア代表、マイケル・チェイカヘッドコーチからのリクエストは。

「スーパーラグビー(南半球最高峰リーグ)のシーズン中はボールを持って走る機会が少なかった(所属のウェスタン・フォースでは3勝13敗)。今回、ボールを持って走れるんだということを見せる機会をもらえたのは嬉しい。若い牛のように」

――代表入りへのモチベーションは。

「私自身、自分のキャリアのなかで達成したいと思っているチェックボックスに、ワールドカップ出場があります。いま、ワラビーズ(オーストラリア代表の愛称)はチームがひとつになっている。このタイミングで入れることは、非常にいいことだと思っています」

――世界選抜のツアーが終わったら。

「一度、オーストラリア代表に戻って、マイケル・チェイカと今後のプランを話させてほしいです。メンバーのセレクションの過程では、何が起こるかわからない。呼ばれたらいつでもいけるように、カバンのなかにはワラビーズのギアを入れておきます」

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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