南半球最高峰であるスーパーラグビーでの自身1季目のシーズンを終えた山田章仁。7月初旬から日本代表に合流し、7月12日以降、北米遠征に帯同している。今秋のワールドカップイングランド大会出場を目指す。

（インタビュー前半はこちら）

奇抜な走りで全国区となった慶応義塾大学時代から単独でオーストラリア留学をおこなうなど、かねてから強い海外志向の持ち主だった。14年秋にスーパーラグビーのウェスタン・フォースからオファーを受けると（29歳での契約は日本人最年長）、昨季のトップリーグプレーオフ終了直後に渡豪。しかし、公式戦デビューが叶わぬままシーズンを終えた。来季の去就については「まだ読めない」とのみ発した。

日本代表では11キャップ（国同士の真剣勝負への出場数）を獲得。今季はスーパーラグビーのシーズン中だった4月下旬に一時合流し、アジアラグビーチャンピオンシップの香港代表戦に出場した（5月2日、東京・秩父宮ラグビー場。2トライを挙げ、41―0で勝利）。

なお国内でも、大舞台での強さをアピールしてきた。2010年度に三洋電機（11年度からパナソニックに名称変更）に加入すると、日本最高峰のトップリーグで3度の優勝。いずれの折も短期決戦のプレーオフでMVPに輝いている。

７月24日（日本時間25日）、敵地のサクラメントでアメリカ代表とのパシフィック・ネーションズカップ第2戦に先発予定だ。

以下、北米遠征前にあった単独取材での一問一答（後半。前半はこちら）。

――シーズン終了後のブログ。長く、切実に感じた。

「そうですか？　結構、節目、節目では、長く書いてますよ。あ、（今回はスマートフォンではなく）パソコンで書いたからかな。応援してくださっている皆に情報を発信したいなとは思っているので」

――その内容を踏まえて。改めて、パナソニックと代表のよさは。

「選手とコーチングがいい。（パナソニックのロビー・ディーンズ監督と日本代表のエディー・ジョーンズヘッドコーチ=HCについて）コーチングスタイルはそれぞれ違いますけど、どちらも素晴らしい方で、グラウンド内外で学ぶことは多い」

――フォースの首脳陣とは会ったことがないなかで恐縮ですが…。もし山田選手が現地で「あれ？」と思ってしまうことがあったとしたら、という趣旨で伺います。その「あれ？」という感覚を顔に出してしまったらアウト、といった気遣いをしたことはありますか。

「僕、日本に帰りましたからね（5月2日の韓国代表戦に出場）。それで向こうの皆は『そういうことなんだろう』と、察したとは思いますよ。逆に、察してくれないと…。ずっとお客様扱いされるのも嫌ですし。フォースは去年、プレーオフにいけなかったチーム。僕には（トップリーグで）優勝できなかった三洋電機（現パナソニック）に入って、優勝できたという経緯もある。僕が瀬戸際でプレーするのが得意だという話も、向こうにはしていましたし。そこを…わかってもらえなかった」

――もし「あれ？」という感覚があったとしたら、それは行動で示した。

「もちろん、そういうのをアピールするために日本に帰ったのではないですよ。その時点で自分を成長させるのには、（代表の）皆と一緒にやるのがいいと思ったからです。ワールドカップ前の大事な時期だったのも理解していたから」

――向こうで、スーパーラグビーの別のチームでプレーする日本人選手とは会いましたか。

「フミさん（田中史朗＝ハイランダーズ）に少し会ったぐらいです。フミさんは、熱く語ってくれますよね」

――日本ラグビー界への危機感について、ですね。それを聞いて、自分で何かを思うことはありましたか。

「いや、僕はあまり人のことは考えられないので…」

――来季のスーパーラグビー。

「全然、読めないですね。まずはワールドカップに集中します」

――2016年から日本拠点のチームが参画します。先ほどの田中選手ではありませんが、何か意見はありますか。

「ゼロでございます。日本のチームが世界のメジャーなチームの１つになることには興味はありますけど…。それはとりあえず置いておいて、ワールドカップに専念することにはしています」

――では、ワールドカップに向けての話を。7月6日から代表に合流する予定のようですね。自分自身、代表に定着した意識はありますか。

「ないですよ！　皆（他の候補選手の多く）は目の届くところでアピールしている。ただ、僕は皆にできない経験はしてきた。それを無駄にしたくはないですよね」

――フォースがやや厳しい環境だっただけに、「代表のチームが素晴らしい環境である」と強く認識できている。

「それもあります。練習に対する吸収力は前の1.5倍にも2倍にもなっていると思います。自分では」

――メンバーに入れたら、ワールドカップがある。

「ワールドカップでプレーするイメージはありますよ。やれる自信もありますし。メンバーは僕が決めるわけじゃないですけど、（メンバー入りのために）やれることはやろうと思います」

――ジョーンズHC体制下の13年度は代表合宿の途中で離脱を余儀なくされたこともあります。

「エディーさんに出会ってからはすごくいい指導をしてもらっているので、その期待に応えたいなという思いはありますよね。コーチングがすばらしい。エディーさん自体が、あまりぶれない。言っていることがずっと一緒だという点で感じます」

――ワールドカップの予選プールでは南アフリカ代表、スコットランド代表、サモア代表、アメリカ代表と順に戦います。展望は。

「チーム対チームで考えると的も大きすぎますし、抽象的になります。ただ個人対個人で（戦えるかどうかの）証拠を集めている段階で、練習だけでもスーパーラグビーでやれると思えた点は自信になっています。個人と個人では、勝っていけるイメージはあります」

――世界ランク2位の南アフリカ代表の対面の死角を突き、トライ。そのイメージ。

「まぁ、ラグビーはチームスポーツですので。ただ、個人対個人の局面はある」

――2011年の前回大会。その直前のトップリーグプレーオフでMVPを獲得し、期待が高まるなかでメンバーから落選しました。その時のことを胸に秘めていたりはしませんか。

「全然。何も思わないです」

――では、ワールドカップに出られそうだということ自体への気持ちの高まりは。

「大舞台、発表会はすごい好きなので、そこに向けての準備は着々とできています。皆にお披露目をしたいという気持ちはあります」

――武者震いは。

「まだ、ないです」