帝京大学ラグビー部OBのサントリー中村亮土、対戦してわかる母校の恐ろしさ【ラグビー旬な一問一答】
大学選手権6連覇中の帝京大学ラグビー部の強さを、説得性を持って語る対戦相手がいた。
7月11日、東京・サントリーグラウンド。学生王者と練習試合をおこなったサントリーの一員、日本代表経験者の中村亮土である。シーズン終盤からレギュラーに定着し、日本選手権準優勝を果たしている。
帝京大学の卒業生でもある。初めて「打倒トップリーグ」を目標に掲げた一昨季にはキャプテンを務めていた。母校のクラブとしての強みや岩出雅之監督の思考などを、実感を込め、かつ客観的に話せる。
サントリーが準優勝した日本選手権で、帝京大学は初めて「打倒トップリーグ」を成し遂げている。2月8日の東京・秩父宮ラグビー場でNECを撃破したのだ。中村のラストイヤーはトヨタ自動車に屈しており、後輩の成長には思うところがある。
以下、練習試合後の一問一答。
――きょうは全チーム唯一のフル出場です。
「疲れました。まぁー、帝京、強いですね。接点(ランナーとタックラーが衝突してできた密集)で何回もめくられて、ターンオーバーをされた。単純に力負けでした。そこでの反則も増えたので、事実として受け止めないと」
――帝京大学はサントリーにいくら攻められても、その「接点」で耐え続けるうちにボールを奪ってしまう。
「自信、あるんでしょうね。耐えておけば、我慢をしていたら大丈夫と」
――帝京大学は肉体鍛錬を重ねる文化がある。中村さんがいた頃も、接点の力勝負を「耐えれば大丈夫」という雰囲気はあったのでは。
「僕らの頃は、社会人が相手の時は(接点の攻防で)『我慢をする』というレベルまで行っていなかった。(目の前の接点に)勢いで行くという感じ。その意味では、いまは一段も二弾もレベルアップしてるんじゃないですか。精神的にも(トップリーグ勢と)フラットな位置にいる」
―― 一度、公式戦でも勝っていますからね。
「はい。それは大きい。怖いもの知らずというか、いや、そもそも怖いというものはないと思うので、普通に、来ていましたね」
――今季の日本選手権はトップリーグ王者と学生王者の一騎打ち。サントリーが優勝したら、相手は…。
「間違いないですね。強いです」
――サントリーの視点で、この試合を振り返ると。
「帝京のディフェンスと僕らのアタックの我慢比べだと思ってたんですけど、(サントリーの)ペナルティーがかさんで、自陣にくぎ付け。アタックの時のブレイクダウン(接点)でもう少しボールキープする力強さがないと、厳しいと思いますね」
――相手が主力格で臨んだ前半は7―19とビハインドを背負いました。お互いにメンバーを入れ替えた後半に33-31と逆転しましたが…。
「あれはもう、言うたら相手もBチームなので。別に喜ぶこともないし、何も思ってないですね」
――精神的にも肉体的にも負荷がかかる終盤、帝京大学はあえてチームリーダーになる選手をベンチに下げています。
「多分、それも監督の次への投資かもしれない」
――控え選手にも厳しい状況を経験させる、という。
「間違いないです。大体、わかります! ふふふ」
――きょうの「大体、わかります」。他に。
「森川(由起乙)のスクラムのところじゃないですか」
――サントリーのプロップ(スクラムの最前列)である森川選手は、昨季の帝京大学の副将。この日は、どういうわけか似た状況で反則を取られていたような。
「…そこも含めて、帝京の強さです」
――よく知っている卒業生の癖と、その日のレフリングの癖。すべてを踏まえてプレッシャーのかけ方や反則の誘い方をイメージしている印象ですか。
「(肯定も否定もせず)ウチとしては、そこにも合わせないといけないと思うんですけど…。ただでさえ強い相手が、そういううまいこともやられていた。そこにウチは、対応しきれなかったかなと。まぁ、向こうはスクラムでプレッシャーをかけようとしていた。今年の帝京は、『トップリーグに対してスクラムで勝とう』とやってきていると思う(元日本代表プロップの相馬朋和コーチが指導し、2季目)。こだわろうとしていた」