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リーチの「夢多き」時代、打倒帝京大は「まだ」…東海大・木村季由監督【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター

22の大学クラブが7人制ラグビーの頂点を争う第16回東日本大学セブンズ選手権大会は、19日、東京・秩父宮ラグビー場であり、東海大学が4季ぶりの優勝を飾った。大会後、リーダー格の近藤英人とともに木村季由監督が共同取材に応じた。

東海大学出身のリーチ マイケルは現在、南半球最高峰であるスーパーラグビーのチーフスで5戦連続先発出場中。日本代表のキャプテンとして、9月のワールドカップイングランド大会を見据える。

札幌山の手高校時代のリーチを東海大学へ招いた木村監督は、いまも大学選手権優勝を目指して学生を指導する。6連覇中の帝京大学との距離感を冷静に見つめている。

以下、木村監督による一問一答の一部。

――東日本セブンズ、4季ぶりの優勝。

「4年ぶりか。これまでもポテンシャルはあったんですけど、爆発力がもうひとつというところで敗れていたので…。3月に入ってから少しずつ7人制のメンバーを絞って来ていました。毎年、春のトレーニングの一環として7人制を採り入れているので。(隣の近藤を見て)彼らには負荷がかかっていると思いますよ。普通(15人制)の練習プラス、7人制のトレーニングをしているので。ただ、スキルの高い子が集まってやっているので、15人制に繋がる部分はある」

――(当方質問)この日、2人の新留学生がピッチに立ちました。東京・目黒学院高校出身のアタアタ・モエアキオラ選手とテビタ・タタフ選手です。いずれも前日まで、20歳以下(U20)日本代表候補として第3回TIDキャンプ(東京・リコー砧グラウンド)に参加。それを中抜けし、チームに合流しました。

「この後、2人は長い遠征へ行ってしまう(5月にU20オセアニア選手権がある)。とはいえ彼らも学生で、少しでもチーム(東海大)に慣れたいと希望もあった。『(セブンズは)フィットネスのトレーニングにもなるから』と、中竹(竜二・U20日本代表ヘッドコーチ)には理解をしてもらいました」

――(当方質問)2人の印象。

「非常に、勤勉ですよね。単なるパワープレーヤーじゃない。周りを活かしたり、チームとしてやるという気持ちをもっている。その辺は、予想以上。(高校時代に)練習でチームメイトに怪我をさせてしまったことがあるようで、そこから彼らの優しさが出てしまっているところもある。だからこちらとしては『遠慮するな』と言っている。おかげで、バチバチ、やっている。ウチの日常のコンタクトレベルは上がったよな(近藤は「そうですね。去年以上です」と頷く)。刺激になっていますね」

――(当方質問)テトゥヒ・ロバーツ選手は2年生になった。

「波があるんですね。いいプレーをするんですが、足が止まってしまうところもある。その意味では、テビタ、アタアタと他に留学生もいる。これからは(ポジションは)安泰じゃないよ、と言える」

――(当方質問)確認ですが、3人一緒に試合に出られるわけではないのですね。

「はい。あの子たちは(日本国籍を持っていない)。大学の場合、完全にパスポートなんで(大学ラグビー界の外国籍選手の先発枠は「2」と固定。高校レベルではその周辺ルールが曖昧で、目黒学院高校時代の2人は下級生の留学生とともに同時出場を果たしていた。数週間、日本の中学校に在籍していたことが背景にあるとされる)。まぁ、僕は留学生を特別扱いしていない。よければ、出る、というだけ」

――(当方質問)大学ラグビー界では、帝京大学が6年連続で日本一に輝いています。昨季4強の東海大学として、どう食い止めるかを考えますか。

「もちろん、ゲームとしての目標は(頂点に立つところに)あります。ただ、昨季学んだことは、本当に自分たちのやろうとしていることを徹底して出し切れたか、ということ。筑波大学戦を観れば、その悔いが残っている(1月2日の選手権準決勝=秩父宮で16―17と敗戦。中盤までセットプレーの優位性とドロップゴールによる加点でリードも、終盤に逆転を喫した)。皆でしっかりと『それ』をやりきるという意志をもったゲームを、重ねてゆく。それができないと、(帝京大学に勝つとは)軽々しくは口にできないですよね。100メートル競走で言えば、こちらと向こうではスタートラインが違います。近道はないなか、どう追いつき追い越すか。強みを磨くか。その強みをゲームのなかで出し切るか…。ここを今年の1番の目標にしています」

――(当方質問)戦力を鑑みれば、王者にとって最大のライバルになりうるとの見方もあります。

「まだまだ…。結果としてそうなることは臨むところですけど、簡単な道のりではないですから。チームが成長しないと、そういうところへは行けない」

――(当方質問)藤田貴大キャプテンについて。

「しっかりと『それ』をやりきるということを、形で表す。言葉も持っている。有限実行の男です。上手い、下手とかいう理屈じゃない。やりきるということでは、ナンバーワンだと思っています。いいリーダーシップを取ってくれます」

――(当方質問)土井崇司テクニカルアドバイザー(東海大仰星高校前監督)は現場に。

「来てますよ。体制は基本的に去年と同じ。そこに加えて、トップリーグ(国内最高峰リーグ)を辞めてきた選手が週末コーチになった(東芝の豊田真人氏、NECの大東功一氏)。足りなかったピースを埋めてくれる」

――今春の全国高校選抜大会。優勝した東海大仰星高校に加え、東海大相模高校、東海大第五高校…。系列校が数多く出場しました。

「相模は三木雄介(1999年度のキャプテン)、第五は笠松高志(2008年度卒業)…。ジュニアの育成が盛んな地域の強化拠点校で、昔の教え子が指導をしている。卒業生が教員になるという道も示せているし、いいことです。もともと仰星はもともとそういうレベルにありましたが、他所ではできない一環教育をしていきたいと思っています」

――(当方質問)卒業生では、リーチ マイケル選手がスーパーラグビーのチーフスで活躍しています。

「嬉しいですね。もともと色んなことを抱え込む夢多き青年でした。その夢が手の届くところにきている。(スーパーラグビー入りは学生時代から)考えていたとは思います。もちろん、一番の目標は日本代表になることでしたが。(現地では)きっと、マイケルを活かす周りのメンバーも(チーフスには)いる。だからかえって、彼のよさが出ているんじゃないですかね」

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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