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東海大仰星・土井前監督、全国高校選抜優勝の湯浅現監督を語る【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター

東海大仰星高校は4月7日、埼玉・熊谷ラグビー場での全国高校ラグビー選抜大会で優勝。決勝戦では大阪桐蔭高校を21-0と完封で下した。

湯浅大智監督は「よくディフェンスしてくれた。ひたむきさを出してくれて嬉しい」と春の日本一を喜んだ。今季の最上級生は指揮官就任時の新入生だったとあって、「思い入れがある」とも話していた。

試合後、前監督の土井崇司・現東海大学テクニカルアドバイザーが直撃取材に応じた。土井前監督は、1984年に当時創設2年目の同校に赴任。激戦区と呼ばれる大阪府にあって、冬の全国大会へは通算13回の出場を果たし、2度の優勝を成し遂げていた。

湯浅監督はチームが初の日本一を決めた際の主将で、2013年度の監督就任までは9年間、同部でコーチを務めていた。

以下、土井前監督の一問一答。

――ひとつ、お伺いしたいのですが。

「はい」

――すでに色々な場所で報じられていますが、改めて、ご自身の後継者に湯浅監督を指名した理由を聞かせてください。

「あの子が中学2、3年生で、チームが揃ってウチの高校へ来た時です。合同練習で。皆を引っ張るだけではなく、まとめる。気持ちを伝える。練習内容を理解して、うまくこなしていく…。グラウンドで喋っているところを観た段階で、『絶対、跡継ぎはこいつだ』と。その中学の彼の恩師は僕の大の仲良しだったんですけど、『この子は、絶対に欲しい』と言いました」

――1人の中学生を観て、そこまで先のことがイメージできたわけですね。

「他にも彼の先輩で、何人かそういう子はいるんです。彼らも彼らで皆、中学校の(ラグビー部の)監督として優勝している…。それで、いつまでもロートル(自身を評する謙遜した表現)がやっててもいけないので、活きのええ時にタイミングを見計らって代わろうと思っていました。本当はもっと、やりたいですけどね。ただ、継続した仰星の強さを作るとしたら、早めのバトンタッチを、と」

――その、タイミングについては。

「『湯浅になってチームが弱くなった』といわれるのが嫌やったので、(最上級生の戦力が充実していた)一昨年のチームから、と。そうしたら、すぐに優勝しちゃった(湯浅監督は就任1年目で冬の全国高校ラグビー大会を制した)。皆からは『土井さんの遺産』なんて言われていたけど、今回(選抜優勝)は違う。しかも、能力的には(就任1年目より)少し低い子達を率いて、優勝。価値がある。すごいと思います」

――遡って。主将として高校日本一を決めた湯浅現監督は、東海大学在籍中には一般企業の内定も受けていたようですね。

「『先生、就職が決まりました』と言われた瞬間、『アホか、お前に就職はない』と。そこからです。うまいこと、ね」

――いま、湯浅監督の指導を観てどう思われますか。

「うまいですよ。技術的な指導も、精神面の成長をさせることも。ラグビー、スポーツ、体育。これを教えるのに最も必要な熱をもっているし、頭も使える。これからの日本を代表するラグビーの指導者になることは事実です。いまも高校や大学の監督、コーチのなかでも、トップの部類には入ると思います」

――土井前監督に然り、湯浅現監督に然り。流行の単語を一切使わず、ラグビーをわかりやすく紐解くイメージがあります。

「ハハハ…。僕が元々、人の真似をするのが嫌いで。当然、何かの題材はあって自分のものを造っていくんですけど。シェイプとか、ポッドとか、世界が認めるラグビー用語はたくさんあるんですけど、仰星だけのラグビー用語もいっぱいあるんですよ。特殊です。湯浅はそういう部分をうまく引き継いでくれています。監督が代わって3年目ですけど、その前から『お前、やれ』としていましたからね(練習の指揮を任せていた)。そのなかで『これは、上手くいったね』『あそこはこうした方がよかったね』といったやりとりがあって(いまがある)。僕がと言うより、皆で作った仰星ラグビーが継承されています」

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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