Yahoo!ニュース

なぜレアルはハーランド獲得の可能性を捨てていないのか?エムバペの去就とベリンガムの爆発の影響。

森田泰史スポーツライター
対峙するハーランドとアラバ(写真:ロイター/アフロ)

順調なシーズンを、過ごしている。

レアル・マドリーが好調だ。リーガエスパニョーラで首位を走り、チャンピオンズリーグではグループ首位通過。コパ・デル・レイでは次のラウンドでアトレティコ・マドリーとのダービーが控えているが、3冠の可能性を残している。

そう、マドリーは良い流れに乗っている。ただ、このクラブにおいては、マーケットが開くたびに補強の噂が浮上するのが常である。

■エムバペの去就

マドリーは、この数年、キリアン・エムバペの獲得を検討してきた。2021年夏、移籍金2億ユーロ(約300億円)を準備。2022年夏には、フリートランスファーで獲得することを目論んでいた。

だがエムバペは最終的にパリに残留した。パリ・サンジェルマンと2年+1年オプションという条件で、契約延長。ナセル・アル・ケライフィ会長が、エムバペの説得に成功した。

ボールを追うエムバペ
ボールを追うエムバペ写真:ロイター/アフロ

エムバペがパリ残留を決めた折、ビッグクラブ移籍を決めたのがアーリング・ハーランドだ。

ハーランドは2022年夏、ボルシア・ドルトムントからマンチェスター・シティに移籍した。契約解除金6000万ユーロ(約90億円)が支払われ、ジョゼップ・グアルディオラ監督のチームに加入する運びとなった。

競り合うクロースとハーランド
競り合うクロースとハーランド写真:ロイター/アフロ

ハーランドはシティ移籍後、充実した日々を過ごしている。シティがプレミアリーグ、チャンピオンズリーグ、FAカップで3冠を達成した昨シーズン、ハーランドは53試合に出場して52得点9アシストをマーク。今シーズン(22試合19得点5アシスト)も勢いをそのままに、負傷をのぞけば、好パフォーマンスを維持していると言える。

シティで成長を続けるハーランドだが、彼に関しては契約解除金が設定されているといわれている。スペイン『アス』曰く、現時点で、その額は2億ユーロ(約300億円)より1億ユーロ(約150億円)に近いという。つまり、マドリーのようなビッグクラブなら、「出せる額」ということだ。

■マドリーの新たなトリデンテ

一方、現在のマドリーに目を向けると、「新たなトリデンテ」が躍動している。ジュード・ベリンガム、ヴィニシウス・ジュニオール、ロドリゴ・ゴエスだ。この3選手は、シーズン前半戦で34得点15アシストに絡んでいる。

ヴィニシウス(14試合6得点4アシスト)が負傷に苦しめられたが、 ベリンガム(22試合17得点5アシスト)は新天地で爆発している。ロドリゴ(26試合11得点6アシスト)も一時期ゴール欠乏症に陥ったが、そこから回復した。

得点を喜ぶマドリーの選手たち
得点を喜ぶマドリーの選手たち写真:ロイター/アフロ

マドリーには以前、カリム・ベンゼマ、ガレス・ベイル、クリスティアーノ・ロナウドという3トップが存在した。「BBC」と呼ばれた3トップを擁して、マドリーをデシマ(クラブ史上10度目のCL制覇)に導いたのがカルロ・アンチェロッティ監督だ。

いま、新たなトリデンテがアンチェロッティ監督の下で活躍している。正確には、【4−4−2】のシステムで、3トップではないのだが。いずれにせよ、得点力のある3人のアタッカーが、マドリーの攻撃を牽引している。

先日、『CIES』が発表したところ、3選手は市場価値ランキングで、トップ5に入っている。ベリンガム(1位/2億6800万ユーロ)、ハーランド(2位/2億5100万ユーロ)、ヴィニシウス(3位/2億5000万ユーロ)、ロドリゴ(4位/2億4800万ユーロ)、ブカヨ・サカ(5位/2億2300万ユーロ)となっている。

■マドリーというクラブとプティの言葉

「パリ・サンジェルマンは偉大なクラブだ。しかしながら、レアル・マドリーのような歴史はない。マドリーやバルセロナのようなチームに移籍すれば、その意味するところを理解できる」と語るのはフランス代表で活躍したエマニュエル・プティ氏である。

「いまのマドリーにはベリンガムがいる。現状、マドリーのスター選手は彼だ。同時に輝く小さな星を、マドリーで有することができると思うかい? マドリーが、どのように動いているか。エゴの塊のような選手が、たくさんいる。それはとても難しい」

「エムバペとベリンガムが、マドリーで共存していると、想像できるだろうか。エムバペはフリーで移籍できるから、多くのサラリーを受け取るだろう。ロッカールームでは、選手たちは一番の高給取りになりたいものだ。外部から来た人間が、自分より高いサラリーをもらっていたら…。崩壊の始まりになる可能性がある」

若手とベテランが融合しているマドリー
若手とベテランが融合しているマドリー写真:ロイター/アフロ

エムバペか、ハーランドかーー。それが、問題だ。

次の夏にフリーになるという契約状況に顧みて、「プランA」は依然としてエムバペだ。「プランB」として、ハーランドが考えられている。ただ、いずれも、交渉の相手は“国家クラブ”だ。そのような中で、フロレンティーノ・ペレス会長が「プランC」を用意していないとは、言い切れない。

スポーツライター

執筆業、通訳、解説。東京生まれ。スペイン在住歴10年。2007年に21歳で単身で渡西して、バルセロナを拠点に現地のフットボールを堪能。2011年から執筆業を開始すると同時に活動場所をスペイン北部に移す。2018年に完全帰国。日本有数のラ・リーガ分析と解説に定評。過去・現在の投稿媒体/出演メディアは『DAZN』『U-NEXT』『WOWOW』『J SPORTS』『エルゴラッソ』『Goal.com』『ワールドサッカーキング』『サッカー批評』『フットボリスタ』『J-WAVE』『Foot! MARTES』等。2020年ラ・リーガのセミナー司会。

誰かに話したくなるサッカー戦術分析

税込550円/月初月無料投稿頻度:月3回程度(不定期)

リーガエスパニョーラは「戦術の宝庫」。ここだけ押さえておけば、大丈夫だと言えるほどに。戦術はサッカーにおいて一要素に過ぎないかもしれませんが、選手交代をきっかけに試合が大きく動くことや、監督の采配で劣勢だったチームが逆転することもあります。なぜそうなったのか。そのファクターを分析し、解説するというのが基本コンセプト。これを知れば、日本代表や応援しているチームのサッカー観戦が、100倍楽しくなります。

※すでに購入済みの方はログインしてください。

※ご購入や初月無料の適用には条件がございます。購入についての注意事項を必ずお読みいただき、同意の上ご購入ください。欧州経済領域(EEA)およびイギリスから購入や閲覧ができませんのでご注意ください。

森田泰史の最近の記事