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メッシとベンゼマのパフォーマンス変化。進化する「ライン間」の概念。

森田泰史スポーツライター
話題を呼んだベンゼマのヒールパス(写真:ロイター/アフロ)

近年ビッグビジネスと化したフットボールの世界で、トッププレーヤーが自らのためにプレーするのは不可避だった。ゴール前で「俺に出せ!」と叫ぶ選手を見るのは珍しいことではなかった。むしろ、そのエゴが肯定されている節さえあった。

1998年に行われたフランス・ワールドカップのアルゼンチン戦のマイケル・オーウェンのハーフウェイラインから独走してのゴール、2002年のチャンピオンズリーグ決勝におけるジネディーヌ・ジダンのスーパーボレー、2007年のコパ・デル・レイのヘタフェ戦でのリオネル・メッシでの5人抜きからのゴラッソ...。それをアシストした選手を記憶している者は皆無に等しいだろう。

それでも、いま、アシストの価値が再考されることに意味はある。

■ベンゼマのヒール

2019-20シーズン、リーガエスパニョーラで最も話題になったプレーは、カリム・ベンゼマのヒールパスだった。リーガ第32節エスパニョール対レアル・マドリーの一戦で、ペナルティーエリア内に侵入したベンゼマが後方から走り込んできたカゼミーロにヒールでパスを送り、カゼミーロが決勝点を挙げた。

このゴールはスペインで話題を呼んだ。2010年1月31日のデポルティボ戦で記録したグティのアシストに酷似していたからだ。この時はグティがヒールパスを出し、ベンゼマが決めた。次はベンゼマがアシストして、カゼミーロがネットを揺らした。

「あれはベンゼマのゴールだった」とは、試合後のカゼミーロの弁だ。「僕のフットボールのビジョンによるもの」と語ったベンゼマだが、プレーヤービジョンとゴールを直結させられるところにこの選手の美点がある。

■メッシのアシストとライン間と

もうひとつ、象徴的なケースがある。リオネル・メッシのアシスト増加だ。

今季、メッシはリーガで25得点21アシストを記録。得点王とアシスト王をダブル受賞した。

メッシの活躍を紐解く上で、重要なのは「ライン間」の概念だろう。これは現代フットボールにおいて必要不可欠な要素になってきている。

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スポーツライター

執筆業、通訳、解説。東京生まれ。スペイン在住歴10年。2007年に21歳で単身で渡西して、バルセロナを拠点に現地のフットボールを堪能。2011年から執筆業を開始すると同時に活動場所をスペイン北部に移す。2018年に完全帰国。日本有数のラ・リーガ分析と解説に定評。過去・現在の投稿媒体/出演メディアは『DAZN』『U-NEXT』『WOWOW』『J SPORTS』『エルゴラッソ』『Goal.com』『ワールドサッカーキング』『サッカー批評』『フットボリスタ』『J-WAVE』『Foot! MARTES』等。2020年ラ・リーガのセミナー司会。

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