レアル・マドリーのハメスをめぐる迷宮。狂った歯車と、不透明な去就。

ボールを追うハメス(写真:なかしまだいすけ/アフロ)

「10番」をめぐり、再び議論が勃発している。

レアル・マドリーで騒がれているのが、ガレス・ベイルとハメス・ロドリゲスの去就だ。ベイルに関しては、ジネディーヌ・ジダン監督がすでに退団を明言している。だがハメスについて、指揮官は言葉を濁しており、事態は進展していない。

■最後の公式戦

ハメスが最後にマドリーのユニフォームに袖を通したのは、2017年6月3日に行われたチャンピオンズリーグ決勝のユヴェントス戦である。正確に言えば、ハメスはこの試合でセカンドユニフォームの紫のシャツを着用していない。ベンチ入りメンバーから外れ、スタンド観戦していたからだ。だが、それが彼のマドリーでの公式戦ラストマッチとなった。

ハメスは出場機会を求めて2017年夏に2年のレンタル契約でバイエルン・ミュンヘンに移籍する。バイエルンでは、67試合15得点20アシストを記録した。しかし、4200万ユーロ(約50億円)の買い取りオプションは行使されず、この夏のレンタルバックが決定している。

そのハメスに、現在ナポリが強い興味を示している。アウレリオ・デ・ラウレンティス会長は、ハメスに対する関心を公言。先の新法案成立により、ハメスはナポリで年俸の90%を手取りで受け取ることができる。だが4000万ユーロ(約48億円)以上の移籍金を要求するマドリー側が譲る姿勢を見せず、クラブ間交渉は平行線を辿っている。

そこにアトレティコ・マドリーが割って入った。移籍金1億2600万ユーロ(約152億円)でジョアン・フェリックスを獲得したアトレティコだが、トップ下の選手を狙っている。アントワーヌ・グリーズマンの抜けた穴を埋めるためだ。

■ハメスに吹いた逆風

ハメスを高みに引き上げたのは、一発のボレーシュートだった。

2014年のブラジル・ワールドカップ。決勝トーナメント一回戦ウルグアイ戦、ペナルティーエリアの少し外でボールに反応したハメスは、浮き球を胸トラップで処理した後に振り向きながら得意の左足を強振。ネットが揺れ、コロンビア国民が歓喜に沸いた。

ブラジル大会を象徴するようなハメスのゴラッソで、コロンビアのベスト8進出が決まった。当時23歳の若者が、10番を背負い、古豪を檜舞台で再び輝かせた。それはフロレンティーノ・ペレス会長の注意を引き付け、大会終了後にマドリーが移籍金7500万ユーロ(約90億円)をモナコに支払い、移籍が決定した。

インパクトは絶大だった。ハメスの名前が入ったマドリーの10番のユニフォームは即座に30万枚売れた。ビジネスだけではない。2014-15シーズン、カルロ・アンチェロッティ監督の下で、46試合出場17得点18アシストとピッチ上において自身の価値を証明した。しかし、マドリーは無冠に終わりアンチェロッティ監督が解任される。ハメスに逆風が吹いた。32試合8得点10アシスト(2015-16シーズン)、33試合11試合13アシスト(16-17シーズン)、その後は移籍一年目のような成績を残せなかった。

ただ、16-17シーズンにおいて、ハメスが果たした役割は大きかっただろう。ハメスとアルバロ・モラタが起用される「プランB」に、デポルティボのぺぺ・メル当時監督は「こちらのチームの方が脅威だ」と唸った。このシーズン、ジダン・マドリーはチャンピオンズリーグとリーガエスパニョーラで優勝を飾り2冠を達成している。

あれから、2年ーー。今度は、無冠に終わったマドリーに、ハメスが復帰している。インターナショナル・チャンピオンズカップを見る限り、マドリーの歯車は狂ったままだ。今夏、コロンビア代表の選手としてコパ・アメリカに臨んだハメス自身は参加していない。だが、アーセナル戦(2-2/PK戦3-2)でマルコ・アセンシオが負傷して長期離脱を強いられ、アトレティコ戦(3-7)では大敗した。

アセンシオの負傷で、攻撃陣の駒がジダン監督に必要になった。移籍先候補のアトレティコに7失点を喫して敗れ、そこにハメスを売却すべきなのかというディベートが巻き起こっている。ただでさえ、この夏にカンテラーノのマルコス・ジョレンテをアトレティコに売却したペレス会長の心証は悪いのである。

ハメスをめぐる騒動は迷宮に入ろうとしている。ジダン監督は決定権をクラブに委ねると主張。対して、ペレス会長にハメスを安売りするつもりはない。いずれにせよ、彼の左足によるキャノン砲を、少なくない人間が待ちわびている。