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圧巻のC・ロナウド劇場、というだけではなく。内容でアトレティコを圧倒したマドリーがCL決勝進出に王手

森田泰史スポーツライター
ハットトリックを達成したC・ロナウド(写真:ロイター/アフロ)

最高の舞台でのマドリード・ダービーが、よもやこのような結末になろうとは――。試合前に大差で決着がつくと予想した者は、決して多くなかったはずだ。

2日に行われたチャンピオンズリーグ準決勝ファーストレグ、レアル・マドリーは本拠地サンティアゴ・ベルナベウにアトレティコ・マドリーを迎えた。2010年から数えて、29回目のダービーマッチ。総じてみればマドリーに軍配が上がるが、近年はアトレティコが盛り返していた。

■CMF型の4選手でインサイドを強化したアトレティコ

アトレティコを率いるディエゴ・シメオネ監督は、対人に強いセンターハーフ(CMF)型の4選手を中盤に並べる形の4-4-2で試合に臨んだ。MFラインでスタメン起用されたのはコケ、ガビ、サウール・ニゲス、ヤニック・カラスコ。この4人の出来が、ゲームの鍵を握ることになった。

シメオネ監督がCMF型の選手をフラットに並べる目的は、インサイドを固めることにあった。負傷欠場したガレス・ベイルを除く“BBC”、前線で待ち構えるカリム・ベンゼマとC・ロナウドへの楔のパスを遮断する。その2選手を孤立させてしまえば、自ずとアトレティコに流れが引き寄せられる。指揮官の目論見は、そんなところだっただろう。

■中盤の攻防に、距離感とセカンドボール

オールラウンダーのプレーヤーを配置したことで、アトレティコは中盤の選手が流動的にポジションを入れ替えながら試合を進める。しかしながら、これが返って混乱を生じさせた。

対するマドリーは同じ4-4-2でも、4-1-2-1-2とさえ形容できる変則的な布陣を敷いていた。普段の“BBC”を携えた4-1-2-3に変化が加えられた格好だが、イスコがトップ下に入ったことが大きなアクセントとなった。

そのイスコを、アトレティコの選手たちは捕まえきれない。高い技術を有するのみではなく、インテリジェンスにも優れた背番号22は右サイド、左サイド、相手MFとDFの間へと巧みに動き回り、常にフリーでボールを受けていた。

アトレティコの中盤は距離感が悪かった。それ故に、マドリーにセカンドボールを悉く拾われる。10分の先制点のシーンでも、一度はDFステファン・サビッチが跳ね返したボールをカセミロに折り返され、C・ロナウドに頭で叩かれて失点している。

■マドリーは左サイドを徹底的に攻略

前半途中からコケを左MFに、カラスコが右MFにして中盤を固定する策を講じたシメオネ監督だが、守備面ではやはりDFフアンフラン・トーレスの穴を埋められなかった。マドリーは、この試合初めて右SBで先発したDFルーカス・エルナンデスを徹底的に狙い、マルセロ、イスコ、C・ロナウドが連携しながら左サイドを制圧した。

マドリーは、まさに左サイドを起点として2点目を挙げている。マルセロの縦パスがベンゼマに入る。サビッチはL・エルナンデスのカバーに気を取られていたためか、右サイドに傾倒したポジショニングとなっており、ベンゼマの対応には左CBのディエゴ・ゴディンが行く。

ゴディンがベンゼマにかわされ、フォローに入っていたC・ロナウドへパスが渡ると、すでにマドリーのエースは左SBのフィリペ・ルイスと1対1になっていた。F・ルイスのインターセプトへのチャレンジも虚しく、こぼれたボールをC・ロナウドが右足を振り抜いてネットを揺らした。

前半だけで11本のシュートを放っていたマドリーは、終了間際にC・ロナウドがハットトリック達成となるゴールを沈め、苦しむことなく決勝への切符をほぼ手中に収めた。エースの独壇場というわけではなく、試合を通じてアトレティコを内容で圧倒した末に必然の勝利を手にしている。

スポーツライター

執筆業、通訳、解説。東京生まれ。スペイン在住歴10年。2007年に21歳で単身で渡西して、バルセロナを拠点に現地のフットボールを堪能。2011年から執筆業を開始すると同時に活動場所をスペイン北部に移す。2018年に完全帰国。日本有数のラ・リーガ分析と解説に定評。過去・現在の投稿媒体/出演メディアは『DAZN』『U-NEXT』『WOWOW』『J SPORTS』『エルゴラッソ』『Goal.com』『ワールドサッカーキング』『サッカー批評』『フットボリスタ』『J-WAVE』『Foot! MARTES』等。2020年ラ・リーガのセミナー司会。

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