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「ストームチェイサー(竜巻追跡人)」のお財布事情

森さやかNHK WORLD 気象アンカー、気象予報士
(写真:ロイター/アフロ)

アメリカは連日竜巻に見舞われています。

現地時間7日(土)から10日(火)にかけて、中部と東部で計60以上の竜巻の報告例がありました。これまでのところ、オクラホマ州で2人が死亡、複数の人がケガをしたと伝えられています。

竜巻の報告数と被害は以下の通り:

7日 コロラド州などで12件。5人ケガ。

8日 中部で10件。

9日 中部で25件。2人死亡。グレープフルーツ大の降雹も。

10日 ケンタッキー州などで16件。10人ケガ。

NOAA Storm Prediction Center
NOAA Storm Prediction Center

今回、多くの竜巻映像が撮影されていましたが、その中でも一際凄まじかったのが、7日コロラド州で撮られたこちらの動画です。

当局は11日(水曜)も、中部・東部の広い範囲で、竜巻・落雷・雹・強風の可能性があるとしています。なお、アメリカでは5月が最も竜巻の多い月で、平均で270個発生します。

ストームチェイサーという仕事

ところで、この動画を撮った人のように、わざわざ人里離れた場所に出没して、竜巻や嵐の映像を撮影する人たちを「ストームチェイサー」または「トルネードハンター」等と呼びます。それだけを仕事にしている人もいれば、趣味や研究のために竜巻を追いかけている人もいます。

では実際、映像はいくらで売れるのでしょうか。

Stormchase.usによると2005年のデータで、ビデオ一本の相場は50から100ドル(約五千~一万円)ほど。非常にいいビデオの場合でも、500ドル(約五万円)位だといいます。

危険に体当たりで挑んでいる割に、その対価は低いように思えます。自身の番組を持っている等の、売れっ子チェイサーならまだしも、これだけでは生活していくのが難しいのが現状のようです。

しかし、映画会社などがその映像を使用することになれば、値段は跳ね上がることもあるといいます。

ちなみに、ストームチェイサーは必須資格などないので、誰でもなれます。そのため、映画「ツイスター」以来、人数が激増したようです。ただ、命の危険を伴うので、気象知識をしっかり身につけ、安全を十分に確保した上で行動するよう、当局は呼びかけています。

NHK WORLD 気象アンカー、気象予報士

NHK WORLD気象アンカー。南米アルゼンチン・ブエノスアイレスに生まれ、横浜で育つ。2011年より現職。英語で世界の天気を伝える気象予報士。日本気象学会、日本気象予報士会、日本航空機操縦士協会・航空気象委員会会員。著書に新刊『お天気ハンター、異常気象を追う』(文春新書)、『いま、この惑星で起きていること』(岩波ジュニア新書)、『竜巻のふしぎ』『天気のしくみ』(共立出版)がある。

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