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甲子園には関係ないけれど… 春の大会って結構、重要なんだ!

森本栄浩毎日放送アナウンサー
春の大会真っ盛り。昨春の兵庫は報徳学園が制した。春の大会は非常に重要(筆者撮影)

 九州や四国でセンバツ出場校も交えて地区大会が始まるなど、春の大会は真っ盛り。公式戦ではあるが、最大目標の甲子園とは直接、関係がない。それでも各チームは必死で戦っている。そこまで全力を傾けるには、それなりの理由があった。

夏のシード権確保が最大の目標

 全国で唯一、夏の地方大会(甲子園予選)でシード制を採用していなかった大阪が、3年前に導入(3年前は中止だったため、一昨年から運用)を決めた。その拠りどころが春の大会の結果で、16強に進んだチームがシードされる。シードされると、早い段階で強豪との対戦が避けられるだけでなく、概ね、試合数が少なくなるメリットがある。夏の激戦での消耗を考えれば、試合数は少ない方がいいに決まっている。春の大会で最も重視されるのが、このシード権の確保ということになる。各都道府県によって決定方法などはまちまちだが、春の大会での早期敗退は、夏の苦戦につながってしまう。

チームが活性化する新戦力の加入

 センバツではプレーできなかった新入生もデビューできるのが、この大会の特徴でもある。今春、21世紀枠で出場し、部員12人で大健闘した城東(徳島)には11人の1年生が加入し、ベンチ入り20人を満たした。女子マネージャーも2人が入部し、甲子園ノックで話題となった永野悠菜マネ(3年)の負担も軽くなるだろう。肝心の試合も、四国大会でセンバツ出場の高松商(香川)に延長タイブレークで勝ち、準決勝では明徳義塾(高知)に1-2で惜敗したが、チームが活気づいていることは明らか。冬を越えてたくましくなった選手もいるはずで、夏に向けて、新戦力の出現は欠かせない。春の大会はチームを活性化させるまたとない機会とも言える。

春の実績は選手の進路にも影響?

 もうひとつ、結果が選手の進路に影響するということを挙げておきたい。春の大会は、ちょうど3年生の進路を決めるタイミングと重なる。センバツのような全国規模の大会は言うまでもなく、近畿大会などの地区大会の成績も選手の実績に加味される。夏の甲子園の段階で、多くのレギュラー選手の進路は決まっているため、センバツで活躍できなかった選手にチャンスを与えるというのも、春の大会ならでは。春の近畿大会は、開催府県3校に、各府県の1位の5校を合わせ、8校で行われるため、1勝すれば「近畿ベスト4」という肩書がつく。秋の不成績でセンバツを逃し、3年生に実績が乏しかったある有名校の監督が、「選手に『箔』をつけるため、春でも全力で勝ちにいった」と言ったのを覚えている。指導者の親心をムダにはできない。

春の大会を軽視すれば痛い目に?

 甲子園に関係ないようで、実は深い意味がある春の大会は、特に夏の代表を争う都道府県単位でさまざまな駆け引きが繰り広げられる。シード権さえ確保できれば、手の内を見せずに大会を終えることを優先する指導者もいるだろう。だからと言って、春の大会を軽視していいはずがない。センバツ好成績のチームが、春の不振から夏の甲子園を逃したという前例は枚挙にいとまがない。よく言われる「目の前の試合に全力を尽くす」ことこそが、夏の甲子園につながっていくのだから。

毎日放送アナウンサー

昭和36年10月4日、滋賀県生まれ。関西学院大卒。昭和60年毎日放送入社。昭和61年のセンバツ高校野球「池田-福岡大大濠」戦のラジオで甲子園実況デビュー。初めての決勝実況は平成6年のセンバツ、智弁和歌山の初優勝。野球のほかに、アメフト、バレーボール、ラグビー、駅伝、柔道などを実況。プロレスでは、三沢光晴、橋本真也(いずれも故人)の実況をしたことが自慢。全国ネットの長寿番組「皇室アルバム」のナレーションを2015年3月まで17年半にわたって担当した。

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