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センバツ21世紀枠地区推薦9校決まる! 紙一重で涙をのんだチームもあった?

森本栄浩毎日放送アナウンサー
センバツ21世紀枠の地区推薦9校が決まった。3校に甲子園切符が届く(筆者撮影)

 強豪私学全盛の時代、少子化や高校の統合などで部活自体が困難になった生徒も少なくないだろう。それでも甲子園を夢見ない球児はいないはず。その夢をかなえてくれるのがセンバツの21世紀枠である。導入から20年以上が経過し、ふさわしい候補は減っていると言われるが、むしろ意義は増しているようにさえ感じる。全国9地区の推薦校が9日に発表された。10日付の毎日新聞にプロフィールが紹介されているので詳述は避けるが、リリースされた資料をもとに、私見も交えて選出経過をお伝えしたい。また、前回(12/1)の記事では、候補に挙がった各校についても深掘りしているので、ぜひとも参考にしていただきたいし、選に漏れたチームもそれぞれに魅力があった。候補となったことを誇りに、夏をめざして欲しい。

北海道=稚内大谷  日本最北端の私立高

 北海道大会16強(初戦敗退)。日本最北端の私立校で、過去には3度の北北海道大会の準優勝もある。20年ぶり2回目の推薦で、名寄支部、稚内市から初の甲子園出場に期待がかかる。例年は公立校を中心に議論されるが、公立4校すべてが初戦敗退で、公私立を限定せず話し合った。最終的には、北海に食い下がった滝川との比較になり、より自然環境に恵まれず、地元選手の受け皿になって甲子園をめざす姿に地域の期待が大きいことが決め手になった。

東北=由利(秋田) 東北8強の実績誇る

 秋田大会準優勝、東北大会8強と、実績は十分。東北大会でも、今夏甲子園4強の聖光学院(福島)に延長11回で惜敗した。最終候補に挙がったのは青森商仙台三(宮城)で、甲乙つけがたい中、由利は15年前の共学化を機に誕生した野球部が、地元から応援されていること。近年、県内で8強以上の常連であり、東北大会で証明されたチーム力の高さが決め手となった。

石橋=関東・東京(栃木) 3度目の地区推薦

 栃木大会4強。創立100年近い文武両道の伝統校。他部とのグラウンド共有や短い練習時間など制約が多い中、栃木の公立では常に上位進出を果たしている。候補8校で最後まで争ったのが、同じく進学校として知られる県船橋(千葉)。高いレベルで文武両道を実践し、近年の安定した成績や指導者と選手が密度の濃い練習に取り組んでいる姿が評価され、石橋に決まった。2年ぶり3度目の地区推薦で、初の甲子園出場なるか。

東海=木本(きのもと=三重) 部員13人で困難克服

 三重大会4強。創立100年を超える伝統校ながら、過疎地にあって部員15人(うちマネージャー2人)で健闘した。速球派投手2人を擁する。岐阜刈谷(愛知)の伝統進学校との比較になるかと思われたが、多雨、過疎地域にあって効率的な練習や、熊野古道の清掃活動など、地域活性化に取り組む姿勢が高く評価され、満場一致で木本に決まった。典型的な困難克服校である。

北信越=氷見(富山) 好投手擁し、北信越大会8強

 富山大会優勝、北信越大会8強で、最速143キロの好投手がいて、戦力は申し分ない。統合前に春夏の甲子園経験がある。北信越は進学校や困難克服校、伝統校など多彩な顔ぶれだったが、部員20人(マネージャー3人含む)の少数精鋭ながら、今秋の成績が秀でていたこと。地域活性化に向けての取り組みが顕著で、長年にわたる小中学校への普及振興活動が高く評価され、氷見が抜け出した。

近畿=小野(兵庫) 創立120年の文武両道校 

 兵庫大会8強。部活加入率95%にもかかわらず、難関大学へ多数の合格者を出す創立120年の地域を代表する文武両道校。今夏の県準優勝校で、後日談も話題となった生駒(奈良)、連合チームながら強豪を連破した宮津天橋・丹後緑風(京都)との3校に絞って検討した結果、タブレットを使用した練習などで、施設や時間などの制約を克服し、野球に取り組む姿勢が他校や地域にもいい影響をもたらしていることが決め手となって、小野に決まった。カラーの大きく異なる3校の比較で、難しい議論になったことは容易に想像できる。

中国=神辺旭(かんなべあさひ=広島) 狭いグラウンドで練習に工夫

 広島大会4位、中国大会初戦敗退。創立42年の福山市にある比較的新しい高校。狭いグラウンドや短い練習時間などの悪条件を克服する科学的トレーニングで練習を効率化している。中国大会に出場した(山口)、三刀屋(島根)と3校で検討し、光の投手力と三刀屋の打力を認めつつ、甲子園経験のない神辺旭が三刀屋をわずかに抑えた。前回にも述べたが、光は一般枠選出が濃厚であり、結果的にはこれで良かった。気を悪くする必要はまったくない。

四国=城東(徳島) 部員12人で奮闘する創立120年の伝統校

 徳島大会4位。部員は13人で、うち1人の女子マネージャーが早朝練習でノッカーを務める。創立120年の伝統進学校で、3年ぶり2回目の地区推薦を得た。四国はそれぞれに魅力があるとされ、白熱した議論の結果、城東の近年の好成績や今秋の試合内容、また12選手での奮闘ぶりなどが評価された。リリースされた文書には、選手たちの主体的な取り組みの中で、マネージャーの貢献が大きいことが強調されていた。本番のプレゼンテーションでも注目されるだろう。

九州=高鍋(宮崎) 甲子園10回出場の名門 

 宮崎大会準優勝、九州大会初戦敗退春夏通算10回の甲子園出場を誇る宮崎の名門校。短い練習時間を効率いい練習で克服している。鳥栖(佐賀)、高田(大分)と3校に絞って最終議論。九州大会で甲子園常連の明豊(大分)と接戦を繰り広げた戦いぶりと、選手たちが練習メニューを自主的に決めるなど、部活に取り組む姿勢が評価され、高鍋に決まった。

稚内大谷、石橋、城東は過去にも推薦

 稚内大谷以外の8校は公立校で、過去に地区推薦の経験があるのは稚内大谷、石橋(3回目)、城東の3校。甲子園出場経験があるのは、氷見(2回)と高鍋(10回)の2校。今秋の地区大会に出場しているのは、稚内大谷、由利、氷見、神辺旭、高鍋の5校で、勝利しているのは由利と氷見だけである。地区推薦選考会の段階で、中国のように「地区大会に出たチームで検討」と明言しているところもあって、ある程度の戦力的裏付けを念頭に置いて議論していることがうかがえる。

戦力に言及したリリースも必要

 21世紀枠は野球部のみならず学校そのものの評価でもあるので、推薦理由で「文武両道」や「困難克服」については具体的、かつ詳細に述べられている。それはそれで結構なのだが、全国大会である以上、甲子園にふさわしい試合をしてもらいたいというのが主催者、ファン、共通の願いだろう。「21世紀枠はもはや不要」という意見を耳にするが、あまりに全国大会とかけ離れた戦力で出るチームに対しての批判の裏返しであることも忘れてはいけない。氷見に143キロを投げる投手がいるというのは前回、筆者から読者に提供した情報であり、主催者からのリリースにはまったく記載がなかった。

プレゼン後、戦力で質疑応答

 この枠は「特別委員」によって選考されるので、来年1月27日、選考会当日のプレゼンテーションがモノを言うことは、すでに述べている。実はその後の質疑応答こそが大事で、ここで戦力的な質問をする委員が多い。委員も選ぶ責任があるので、甲子園でどれだけ戦えるか、気にならないはずはない。今年(94回大会)の選考はやや逆行していたように感じたが、近年の選出結果を見ると、話題性プラス戦力で選ぶ傾向が強まっている。近畿以西の4校から1校、東日本勢5校から1校、地域を限定せず1校の合わせて3校が甲子園切符を手にする。

毎日放送アナウンサー

昭和36年10月4日、滋賀県生まれ。関西学院大卒。昭和60年毎日放送入社。昭和61年のセンバツ高校野球「池田-福岡大大濠」戦のラジオで甲子園実況デビュー。初めての決勝実況は平成6年のセンバツ、智弁和歌山の初優勝。野球のほかに、アメフト、バレーボール、ラグビー、駅伝、柔道などを実況。プロレスでは、三沢光晴、橋本真也(いずれも故人)の実況をしたことが自慢。全国ネットの長寿番組「皇室アルバム」のナレーションを2015年3月まで17年半にわたって担当した。

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