大阪桐蔭がもがき苦しんだ。3-1と2点リードであとアウトひとつ。ここから興国に粘られ、同点に追いつかれる。何とか逆転は許さなかったが、前日のタイブレークが頭をよぎるような終盤のせめぎ合い。最後に決めたのは、監督も「一番気持ちが強い」と認める男だった。

甲子園で勝つより大阪で勝つ方が難しい

 「ピッチャーの松浦(慶斗=3年)が頑張っていたので、何とかいい形で優勝に導ければ、と思っていた」という池田陵真(3年=主将)が、9回裏2死3塁の場面、初球を迷いなく振り切ると、打球は三遊間を抜けた。

大阪桐蔭の池田主将。趣味が筋トレと言うだけあって、胸板も厚い。準決勝では9回に同点アーチ。決勝でサヨナラ打と、勝負強さが際立つ(筆者撮影)
大阪桐蔭の池田主将。趣味が筋トレと言うだけあって、胸板も厚い。準決勝では9回に同点アーチ。決勝でサヨナラ打と、勝負強さが際立つ(筆者撮影)

 歓喜の輪ができる。苦しみ抜いてつかんだ優勝だ。何十年も前から言われ続けている言葉がある。「甲子園で勝つより、大阪で勝つ方が難しい」。準々決勝からの3試合はいずれも大苦戦。王者の苦しむ姿を目の当たりにするにつけ、大阪の夏の戦いがいかに厳しいものか、まざまざと見せつけられた思いがする。

土壇場で主将が救い、松浦完投

 ベンチ入り6人という豊富な投手陣の中でも、やはり最後は松浦に頼るしかなかった。前日のタイブレークでは、8回から救援登板したが7イニングを投げた。9回2死からの120球目。興国の6番・大森隼(2年)に右前にはじき返されたのは、この日、最速の139キロのストレート。同点打も、7番・渡部颯(3年)に真っすぐを打ち返された。前日、自己最速にあと2キロと迫る148キロを計測したが、さすがに連投の疲れは隠せない。9回の攻撃では打席にも立っていたので、延長でもマウンドにいくはずだったエースを、土壇場で主将が救ったのだった。

「必ず大きな旗を」と西谷監督

 「簡単に勝てるとは思っていなかったし、苦しかった。厳しい戦いが続く中、粘り強くやってくれた」と西谷浩一監督(51)は、選手たちの頑張りをほめた。3年前も、ライバル・履正社に、「片足が棺桶に入っていた」(西谷監督)というほどの大苦戦を強いられたが、甲子園では圧倒的な強さで2度目の春夏連覇を達成した。そのチームに匹敵する力があるといわれた今チームは、センバツで、智弁学園(奈良)にまさかの初戦敗退。「夏の日本一をめざすんだ、という気持ちが本当かということを毎日、確認しながらやってきた。大阪の代表として、必ず大きな旗を持って帰りたい」と、春の雪辱を誓う西谷監督の言葉にも、力がこもる。

チームの一体感が高まったはず

 センバツ前にも触れたが、全国を見渡しても、個々の能力で大阪桐蔭に匹敵するチームはなかなか見当たらない。しかしチームスポーツである以上、チームとしての一体感があれば、個々の能力は凌駕できる。大阪桐蔭を苦しめた関大北陽や興国は、直接対決での大敗を糧に、猛練習でチーム力を伸ばした。大阪桐蔭にとって、大阪大会のラスト3試合で、チームとしての一体感が高まったはずだ。3年ぶりの全国制覇へ、春の二の舞は考えられない。