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激戦近畿は東播磨!  センバツ21世紀枠候補校発表

森本栄浩毎日放送アナウンサー
近畿の21世紀枠候補は、今秋近畿大会に初出場した東播磨に決まった(筆者撮影)

 今秋の近畿大会は強豪がしのぎを削り、ハイレベルの戦いが続いた。その一方で、山田(大阪)や東播磨(兵庫)などの公立校も健闘し近畿大会を盛り上げた。この両校を中心にした21世紀枠争いも熾烈で、東播磨が近畿の候補校に決まった。決定までの過程とともに、候補に挙がった9校(チーム)を紹介する。

知内(しりうち=北海道)

 27年前の1993(平成5)年センバツに出場した全国でも珍しい町立校。函館に近い全校生徒181人の小規模校で、今秋の北海道大会では16年ぶりに4強入りした。特に準々決勝で、全国優勝2回の駒大苫小牧を3-2で破った星が光る。北海道大会無失策という堅守で、3人の投手陣を支えた。部活動では、練習メニューを話し合いで指導者に提案するなど「ボトムアップ型」の組織を構築し、生徒会でも中心的役割を果たす。小規模校ならではの一体感で、地域の人たちとのつながりを大切にしている。

八戸西(東北=青森)

 1975(昭和50)年創立の県立校で、スポーツ科学科がある。夏の青森大会準優勝2回、春季県大会優勝2回など、公立としての実績は十分だが、強豪私学に阻まれ甲子園出場はない。県2位で出た東北大会では、福島商にコールド勝ちし、花巻東(岩手)に1-2で惜敗した。長身エースの福島蓮(2年)は好投手と評判だ。選手たちは八戸市内の特別支援学校生徒との交流で、人間的にも大きく成長している。東北は部員15人で頑張る相馬東(福島)との2校に絞られ、身障者の社会参加を進める活動が決め手となって八戸西が抜け出した。 

石橋(関東・東京=栃木)

 1924(大正13)年創立の県立校。今秋は栃木大会で真岡工、宇都宮商、足利工などの甲子園経験校を撃破し、準決勝では昨年まで夏9連覇中だった作新学院にも勝って、関東大会に進んだ。初戦で東海大相模(神奈川)と当たる不運でコールド負けしたが、部員31人(うち女子マネ4人)で健闘した。昨年度115人の国公立大合格者を出す文武両道の伝統校で、部活加入率も90%近い。関東・東京は、大宮東(埼玉)、館林(群馬)との3校で協議し、高いレベルで文武両道を実践している石橋が選ばれた。

三島南(東海=静岡)

 1919(大正8)年創立で、野球部も創部100年という伝統校。今秋は県大会の準決勝まで進んだが、強豪私学に連敗して東海大会進出を逃した。県東部の三島市はこの10年で人口が4千人も減少し、それに伴って野球をする子どもが激減している。稲木恵介監督(41)が、率先して保育園で野球教室を開いたり、野球部員が小学生への指導を行い、野球による地域貢献活動を展開している。東海は、野球の将来を見据えた活動をしている三島南を、地区役員の総意で選出した。

富山北部・水橋(北信越=富山)

 富山北部は1916(大正5)年創立で、サッカー名門の水橋は1983(昭和58)年創立。この2校が統合され、今年4月に新たに開校した富山北部の3校選手でひとつのチームを結成した。部員合計20人(うちマネ3人)で、北信越大会に出場も、優勝した敦賀気比(福井)に初戦敗退した。富山北部は1969(昭和44)年の春夏に甲子園経験がある。連合チームのため、合同練習できない日もあり、双方のグラウンドを行き来することも。特に水橋の2選手の存在がチームを結束させたようで、甲子園のベンチに異なるユニフォームの選手がいるという光景が見られるか。北信越は、同じように練習面でハンディのある寺井(石川)と甲乙つけ難く難航したが、連合チームで困難な状況を克服しようと努力する富山北部・水橋に決まった。

東播磨(近畿=兵庫・タイトル写真)

 1974(昭和49)年に加古川、高砂など2市3町組合立として誕生した異色の高校で、3年後、県立に移管している。演劇や放送など文化部も全国屈指。野球部は、加古川北で春夏甲子園経験がある福村順一監督(48)就任後、力をつけ、今夏の独自大会ブロック優勝。秋も県で準優勝し、近畿大会初出場も、市和歌山に1-2で初戦敗退した。

東播磨のエース・鈴木。制球に苦しむも、市和歌山の小園と投げ合って1-2で惜敗した(筆者撮影)
東播磨のエース・鈴木。制球に苦しむも、市和歌山の小園と投げ合って1-2で惜敗した(筆者撮影)

 178センチのエース・鈴木悠仁(2年)は、粘りの投球が身上で、バックの守りも堅い。走塁面に力を入れていて、少ない好機をモノにする。コロナ禍でも、SNSを積極的に使って、多面的に高校野球と向き合ってきた。近畿の選考は激戦で、大阪大会で履正社を破った山田と綾部(京都)の3校に絞って協議した結果、SNSを使うなど新しい時代にマッチした指導スタイルが評価され、東播磨に決まった。

矢上(中国=島根)

 島根の山間部にある全校生徒246人の小規模校。1948(昭和23)年創立で甲子園経験はないが、秋の中国大会は2年連続出場中。今秋は初戦で桜ケ丘(山口)相手に先手を取るも中盤に逆転され、3-5で敗れた。野球部は1989(平成元)年に軟式から硬式へ。昨秋には県大会優勝も果たして、県では上位進出も珍しくない。選手たちは、小学生への野球教室をはじめ、お年寄り宅の雪かきなどのボランティア活動にも積極的に取り組み、地域から応援されている。中国はそれぞれが決め手を欠く中、近年の試合内容などから矢上が推薦を得た。島根は今年も平田が選ばれ、これまでに全国最多の4校が21世紀枠で甲子園に出場している。

川之石(四国=愛媛)

 1914(大正3)年創立で、野球部も戦後すぐに誕生した伝統校だが、甲子園経験はない。夏の県準優勝が最高成績で、今秋は甲子園優勝経験もある宇和島東を破ったが、準々決勝で敗れ、四国大会出場はならなかった。部員18人(うちマネ3人)で、特に1年生は5人と、今後、単独チームで参加できない可能性もある。狭いグラウンドで練習に制約があるため、攻撃的な守備や果敢な走塁で、強豪と渡り合っている。ボランティアにも積極的で、八幡浜市から表彰された。四国の推薦校は、土佐塾(高知)と名西(徳島)の3校に絞って協議し、制約を克服していることや地元への寄与を評価し、川之石に決まった。

具志川商(九州=沖縄)

 県中部のうるま市にある県立校。1977(昭和52)年創立で、2年後の創部。今秋、甲子園春夏連覇経験がある興南を倒すなどの快進撃で、初めて県大会決勝に進出し、九州大会にも初出場した。初戦で熊本1位の東海大熊本星翔を破り、甲子園を懸けた福岡大大濠には0-3で敗れた。180センチのエース・新川俊介(2年)は最速144キロで、ほかにも好投手がいる。機動力を駆使した積極的な野球で新風を吹き込む気鋭だ。商業高校らしく、選手たちは各種検定にも合格するほか、「具商デパート」で地場産品販売や商品開発を通して地域と結びついている。九州は3校に絞って検討し、東明館(佐賀)が脱落。八代(熊本)との比較になり、九州大会で熊本1位に勝った実績が決め手となった。

近年の傾向は?

 21世紀枠は、「地域密着困難克服型」と「文武両道名門型」に大別できる。センバツにはここから3校が選ばれるが、これまでいずれかのタイプに偏ったことは一度もない。また、以前よりも戦力を重視する傾向が強まり、地区大会出場や地区大会での勝利は一定のアドバンテージになる。特に好投手を擁するチームは、21世紀枠に限られた特別選考委員には受けがいい。読者には、これらを念頭に置いて紹介文を読み、1月29日の選考会を待っていただきたい。

毎日放送アナウンサー

昭和36年10月4日、滋賀県生まれ。関西学院大卒。昭和60年毎日放送入社。昭和61年のセンバツ高校野球「池田-福岡大大濠」戦のラジオで甲子園実況デビュー。初めての決勝実況は平成6年のセンバツ、智弁和歌山の初優勝。野球のほかに、アメフト、バレーボール、ラグビー、駅伝、柔道などを実況。プロレスでは、三沢光晴、橋本真也(いずれも故人)の実況をしたことが自慢。全国ネットの長寿番組「皇室アルバム」のナレーションを2015年3月まで17年半にわたって担当した。

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