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東海大相模-近江が激突! 夏の甲子園組み合わせ決まる

森本栄浩毎日放送アナウンサー
夏の甲子園の抽選会が行われ、東海大相模-近江など注目カードが決まった(筆者撮影)

 予備抽選で最下位だった東海大相模(神奈川)は、自力で対戦相手を引き当てることができず、48番目の花巻東(岩手)が、鳴門(徳島)との対戦を引いた瞬間、初戦で屈指の好カードが誕生した。今大会最強打線と、49校エースで最も打ちづらい好投手の対戦だ。6日目の2回戦で当たる相模と近江(滋賀)の対戦は、優勝争いを大きく左右する。

打棒の相模に魔球の林

 神奈川大会決勝で日大藤沢相手に24得点。チーム打率.399で、11本塁打(7試合)を誇る相模の打線は、今大会随一だ。しかし、初戦の相手となる近江の左腕・林優樹(3年)は、昨夏8強の原動力で、滋賀大会も無失点。最速136キロで、いわゆる「剛腕」ではないが、大きく変化するスライダーとチェンジアップをコーナーいっぱいに投げ分け、強打者をキリキリ舞いさせる。打撃優位の夏の大会で、「魔球」を操る林は、最も打ちづらい投手と言える。相模の井上恵輔主将(3年)は、「ウチは横浜の及川(雅貴=3年)を想定して練習してきた。左投手に対する苦手意識はない」と自信をみせるが、初めて見る球筋にかなり戸惑うのではないか。また、相模は機動力も駆使するが、近江の有馬諒(3年=主将)は並の捕手ではない。相模からすると、初戦で最も当たりたくない相手だったかもしれない。消耗少なく勝ち上がれる2回戦からの登場だけに、春の関東と近畿の王者が激突するこの試合の勝敗が、優勝争いを大きく左右することは確かだ。

徳栄と明石商も注目カード

 同じ6日目の第4試合には、花咲徳栄(埼玉)と明石商(兵庫)という、これまた関東と近畿の優勝候補同士が当たるカードが実現した。明石商の149キロ右腕・中森俊介(2年)と、昨夏から甲子園で活躍する井上朋也(2年)を中心とした徳栄の強力打線の対決は、力勝負が期待できる。2年ぶりの優勝を狙う徳栄の岩井隆監督(49)は、「(明石商は)投打の核がいて、センバツでもしっかりした野球をしていた」と警戒を緩めない。この2カードは、いずれも関東の強打のチームと近畿の投手中心の堅守チームという、地域のカラーを色濃く反映させたチーム同士の戦いで、万全の状態で臨める全国大会の初戦としては、非常に興味深い。

初日 初陣の誉が選手宣誓も

八戸学院光星(青森)-(愛知)

佐賀北神村学園(鹿児島)

高岡商(富山)-石見智翠館(島根)

 開幕戦に登場する誉は、春夏通じて初の甲子園。林山侑樹主将(3年)が選手宣誓し、開幕戦に臨む。勢いをつけて難敵を打ち破りたい。光星の仲井宗基監督(49)は、「センバツは打線が不発だった。走塁も強化してきたし、どんどんプレッシャーをかけたい」と攻撃力で対抗する。佐賀北は12年前の優勝時のエースだった久保貴大監督(30)の初采配に注目だ。同じ九州のチームと当たるが、相手が常連だったのは不運だったかもしれない。智翠館は、島根決勝で13回に2点差を逆転した粘りが身上。高岡商は、昨年、大阪桐蔭と好勝負を演じている。

2日目 履正社と星稜が登場

履正社(大阪)-霞ヶ浦(茨城)

静岡津田学園(三重)

星稜(石川)-旭川大高(北北海道)

秋田中央立命館宇治(京都)

 センバツ初戦で激突した優勝候補2校が登場するが、今回は別ブロックで、3回戦までには当たらない。霞ヶ浦の右腕・鈴木寛人(3年)は最速148キロの速球が武器。左腕の山本雄大(2年)も安定していて、履正社の強力打線といえども攻略は容易ではない。東海勢同士の第2試合は、津田の速球派・前佑囲斗(3年)が、センバツ初戦敗退の雪辱を狙う。センバツで履正社を破りながら2回戦で敗退した星稜は、奥川恭伸(3年)最後の甲子園。林和成監督(44)は、「奥川が投げると安心するのか、打つ方がなかなか点を取らないので」と苦笑するが、石川大会では苦しい場面でも打線が底力を発揮してきた。秋田中央は昨年の金足農に続く「公立旋風」を。立宇治は、6回目の甲子園で悲願の初勝利を狙う。

3日目 智弁和歌山に挑む名門・米子東

米子東(鳥取)-智弁和歌山

明徳義塾(高知)-藤蔭(大分)

前橋育英(群馬)-国学院久我山(西東京)

敦賀気比(福井)-富島(宮崎)

 伝統の米子東が、強打の智弁和歌山に挑む。紙本庸由(のぶゆき)監督(38)は、「智弁のようなチームとやるために厳しい練習をしてきた。選手たちはやってくれるはず」と、期待を込める。試合巧者の明徳は、2年連続の藤蔭と。昨年、開幕戦で星稜に完敗した藤蔭は、打線強化の成果を発揮できるか。関東勢同士の第3試合は、常連の前橋育英に28年ぶりの久我山が挑む。前育は伝統の堅守で、6年ぶりの優勝を狙う。昨年は力を発揮することなく敗れた気比は、派手さはないが投手陣も多彩で、波に乗ると怖い存在になりそう。富島は、エース・黒木拓馬(3年)の力投に期待したい。

4日目 習志野と沖縄尚学 好勝負か

花巻東(岩手)-鳴門(徳島)

飯山(長野)-仙台育英(宮城)

習志野(千葉)-沖縄尚学

高松商(香川)-鶴岡東(山形)

 第1試合の両校は、6年前の準々決勝で大熱戦(5-4で花巻東の勝ち)を演じた。鳴門の左腕・西野知輝(3年)が緩急をうまく使って、相手打線をかわしたい。初出場の飯山は投手を中心によくまとまった好チーム。雪国を思い起こさせる白のユニフォームが、常連相手にどんな甲子園デビューを果たすか。習志野と沖縄尚学は甲子園優勝経験校同士の好カード。習志野は、試合後半に速球派のエース・飯塚脩人(3年)を投入する勝ちパターンを持つ。沖尚は、先手を取って、習志野の勝ちパターンを崩したい。春夏連続の高松商は、投手陣が安定。長尾健司監督(49)は、「香川(卓摩=3年)が粘って、後半勝負に持ち込みたい」とエース左腕に信頼を寄せる。

5日目 山梨学院の強打に注目

日本文理(新潟)-関東一(東東京)

熊本工山梨学院

<以下、2回戦>

岡山学芸館広島商

 第1試合は攻守にまとまる好チーム同士。文理の打線が関東一の投手陣を打ち崩せるか。山梨学院の強力打線はセンバツで実証済み。エースナンバーを背負う相澤利俊(かずとし)主将(3年)は、「投手陣もそれぞれが役割を果たせるようになってきた」と、ディフェンスも強化して上位進出を見据える。隣県対決となった第3試合は、日程運に最も恵まれる。15年ぶりの広島商・真鍋駿主将(3年)は、「出るからには日本一を」と、昭和最後となった70回大会以来の優勝を狙う。

6日目 強豪そろう必見の一日

筑陽学園(福岡)-作新学院(栃木)

東海大相模(神奈川)-近江(滋賀)

中京学院大中京(岐阜)-北照(南北海道)

花咲徳栄(埼玉)-明石商(兵庫)

 優勝候補が多数、登場するファン必見の一日だ。第2、第4試合は割愛するが、第1試合の筑陽は、激戦の福岡を勝ち抜き、春夏連続を果たした。一方の作新は9年連続の夏で、石井巧主将(3年)は、「(筑陽は)僕らより実績を残しているチーム。挑戦者の気持ちで戦いたい」と話す。中京学院は、U18代表候補の捕手・藤田健斗(3年=主将)が、多彩な投手陣を巧みにリードする。打っても4番で、躍進の原動力だ。北照は、5回目の夏出場で、夏の甲子園初勝利をめざす。

7日目 智弁の1年生、3人に注目

宇和島東(愛媛)-宇部鴻城(山口)

海星(長崎)-聖光学院(福島)

智弁学園(奈良)-光星・誉の勝者

 宇和島東は9年ぶり。宇部鴻城は7年ぶりで、両校とも県大会はノーシードから勢いに乗った。13年連続の聖光は、春の県大会で2敗するなど苦しい1年を過ごしたが、連続出場を途切れさせることなく戦後最長記録を更新した。斎藤智也監督(56)は、春の大会後に練習禁止などの荒療治も行ったと言い、「そこから開き直った。試合に集中できるようになった」と選手たちの精神面での成長を認める。1年生の左右投手と4番打者がチームを牽引する智弁は、勢いに乗って上がってくる強敵が相手になる。奈良大会5本塁打の新記録を樹立した坂下翔馬主将(3年)は、「どこよりもバットを振ってきた。1年生が活躍できるようにやってきたし、頼りにしている」と先輩としての優しさをのぞかせた。

星稜は最激戦ブロックに

 ブロック別にみると、佐賀北-神村~静岡-津田までのブロックは、総合力で履正社が一番手だが、力のある投手との対戦が続くと予想され、楽には勝ち上がれないだろう。星稜-旭大~明徳-藤蔭までは、強豪ひしめく最激戦ブロック。星稜を、智弁和歌山と明徳が追う。前育-久我山~飯山-仙台までのブロックは混戦模様。前育の堅守か、花巻東が試合巧者ぶりを発揮するか。習志野-沖尚~熊工-山梨までのブロックもハイレベルの上位争い。センバツ準優勝の習志野に高松商が迫るが、山梨学院の打線も破壊力がある。

注目2カードの勝者は優勝戦線に躍り出る

 2勝で8強の学芸館-広商、筑陽-作新は、筑陽と作新の勝者が優位か。相模-近江の勝者は、かなり8強に近い。徳栄-明石の勝者も同様のことが言える。6日目に登場する優勝候補は、初戦敗退もあるが、日程運に恵まれるため、ここを突破すれば一気に優勝戦線をリードできる位置にいる。最後のブロックは、智弁の1年生の出来次第だが、光星のチーム状態もかなりいい。センバツでは、初日に星稜と履正社が当たり、優勝戦線が混乱した。今回も6日目に優勝候補同士がつぶし合う。昨年の大阪桐蔭のような、自他ともに認める優勝候補は見当たらず、大混戦の予感がする。

同地区初戦は改善の余地

 今大会も、同一地区の初戦での対戦が多い。4カードもある。同地区の対戦は、秋も春もやっているので、わざわざ甲子園でやることはない。初日の佐賀北と神村に始まり、2日目に静岡と津田。三重勢は、3年連続の東海勢相手(一昨年は津田が藤枝明誠=静岡、昨年は白山が愛工大名電=愛知と対戦)になる。3日目の前育と久我山は、秋の地区大会は別開催になるが、春は同じ関東大会に組み込まれている。ちなみにセンバツでは、準々決勝まで対戦しない。最悪は学芸館と広島商の山陽隣県対決。両校は練習試合で、手合わせしているようだ。このような隣県同士のカードを甲子園の初戦でやる必要性があるのか。これを認めるなら、北海道と東京の初戦対決も認めるべきだろう。フリー抽選と言っておきながら、この矛盾はどう説明するのか。

毎日放送アナウンサー

昭和36年10月4日、滋賀県生まれ。関西学院大卒。昭和60年毎日放送入社。昭和61年のセンバツ高校野球「池田-福岡大大濠」戦のラジオで甲子園実況デビュー。初めての決勝実況は平成6年のセンバツ、智弁和歌山の初優勝。野球のほかに、アメフト、バレーボール、ラグビー、駅伝、柔道などを実況。プロレスでは、三沢光晴、橋本真也(いずれも故人)の実況をしたことが自慢。全国ネットの長寿番組「皇室アルバム」のナレーションを2015年3月まで17年半にわたって担当した。

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