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大阪桐蔭 VS. 履正社  いよいよ激突!

森本栄浩毎日放送アナウンサー
センバツ史上初の大阪決戦の再戦がいよいよ実現。履正社が大阪桐蔭にリベンジなるか

 今センバツでは、史上初めて、大阪勢による決勝が行われ、大阪桐蔭が履正社を破った。しかしこの両校が、揃って夏の甲子園に出場することはない。高校野球界最高レベルの力を持つ両校にとって、最大のライバルとの一戦に勝たなければ、甲子園の舞台に立つことはできない。センバツが終わった瞬間から意識したであろう戦いが、いよいよ大阪予選準決勝で実現する。

履正社は、耐えて夏を迎える

 今センバツ、秋の神宮王者として追われる立場だった履正社は、桐蔭戦の8回に追いつきながら、エース竹田祐(3年)が踏ん張れず、9回に5失点して力尽きた。春は下級生に経験を積ませることもあり、府大会準々決勝で東海大仰星に敗退。結果的に直接対決を回避することになった。極論すれば、夏の直接対決のために、じっと耐えていたとも言える。大阪大会では、1回戦から竹田を立てて7回コールドで完封。打線のエンジンのかかりがやや遅いのは気になったが、徐々にチーム状態が良くなり、5回戦では公立の久米田を5回コールドの20-1。そして準々決勝では、2強に次ぐ力を持つといわれていた大体大浪商との対戦となった。

主砲・安田に当たりが出る

 浪商の左腕・宮本大勢(3年)は府下屈指と評判で、岡田龍生監督(56)も、「(センバツで対戦した)日大三(東京)の桜井君(周斗=3年)と同じレベル。チーム力も相手が上」と警戒していた。

安田は豪快なスイングでこの日も長打を連発。「今のチーム状態なら負けない」と自信も
安田は豪快なスイングでこの日も長打を連発。「今のチーム状態なら負けない」と自信も

その出鼻をくじいたのが1番に入った石田龍史(3年)だ。宮本の2球目を叩くと、打球はあっという間に右中間へ。石田の先頭弾に世代屈指のスラッガー安田尚憲(3年)も続く。「石田がチームに勢いをつけてくれた」(安田)と中堅越えへの高校通算62号で、宮本は完全に舞い上がった。その後も連打を浴びせた履正社打線は、初回から5点を奪って主導権を握る。安田は、2回の打席では左翼フェンス直撃の適時二塁打を放って、試合を一方的にした。「(逆方向への長打は)冬の間に取り組んできた成果」と胸を張る安田は、第3打席でも右翼ポールのはるか上を通過する特大の当たり。惜しくもファウルの判定に悔しがったが、主砲の状態は確実に上がっている。「今まで少し大事にいきすぎていたが、しっかり振り切れるようになってきた」と岡田監督も目を細めた。援護をもらった竹田はわずか63球で浪商を3安打に抑え、危なげない内容で、5回コールドの10-0と難敵を一蹴した。

大阪桐蔭はセンバツから負け知らず

 秋は下級生の出来が不安定なこともあり、大阪3位で近畿大会へ進んでセンバツ切符を手にした大阪桐蔭。しかし下級生の急成長と、エース徳山壮磨(3年)が抜群の安定感を見せ、センバツでは一気に頂点まで駆け上がった。負けられない立場となって、大阪大会でも手を抜くことなく優勝。近畿大会では、彦根東(滋賀)を9回逆転で破って決勝に進むと、東海大仰星に毎回得点の容赦ない猛攻で18-0と圧倒した。夏の大阪予選では、選手の体調や複数ポジションでうまく使い回して、柔軟な采配で勝ち上がってきた。3回戦以降、コールド勝ちはないが、5回戦では、かつて相性のよくなかった金光大阪に徳山をぶつけ、5安打9三振で完封勝ち(6-0)した。準々決勝の相手は、浪商同様、甲子園優勝経験のある古豪・興国。先発には速球と強気の投球が光る柿木蓮(2年)を起用した。

古豪相手にエース温存で苦戦

 立ち上がり、柿木は上位打線に連打を浴び、暴投も絡んで4点を失う。「徳山を使いたくなかったので、こういう展開になるのはある程度想定していた。打って取り返そう」と西谷浩一監督(47)。すぐさま反撃し、藤原恭大(2年)が安打と盗塁でかき回して、中軸の3連打で1点差に詰め寄り、2回で同点に追いついた。中盤は淡々と進行したが、6回に柿木が3点を失うと、ようやく桐蔭打線も目覚め、上位の連打で打線に火がつき、5番山田健太(2年)が、「入ってくるスライダーを狙っていた」と左越えに満塁弾。山田の高校通算10号でこの試合初めてリードを奪った。ここで西谷監督は満を持して根尾昂(2年)をマウンドへ送る。

5回ぐらいから準備していた徳山だが、登板はなし。「次は完投します」とキッパリ
5回ぐらいから準備していた徳山だが、登板はなし。「次は完投します」とキッパリ

しかし根尾がピリッとしない。7、8回とも無死満塁のピンチを招き、徳山がベンチ前で臨戦態勢をとる場面も見られたが、西谷監督は辛抱した。根尾は奇跡的に1失点ずつで切り抜け、15-9で乱戦を制したが、準々決勝の内容は、履正社とは対照的だった。「リードしても突き放せない未熟さが出た。(徳山を使わないと決めていたので)自業自得」と西谷監督は自嘲気味に話したが、「柿木も根尾もいい勉強になったと思う。苦しんだことを今後に生かさないと」と、心は早くも次戦に向いていた。

近年は履正社が夏に苦杯

 29日の準決勝で両雄がぶつかる。「必ずどこかで当たる」(履正社・岡田監督)「必ずやらないといけない相手。倒すしかない」(桐蔭・西谷監督)と、センバツが終わった瞬間から意識していた対戦が、いよいよやってくる。秋は履正社が勝ったが、センバツでは桐蔭が勝って、このチームで対戦するのは3度目になる。昨年は、寺島成輝(ヤクルト)がいて履正社が有利といわれていたが、直接対決のはるか前の3回戦で桐蔭が敗れたため、2年ぶりの夏の対決。しかし、夏に限ると桐蔭の9連勝中(履正社2勝)で、履正社としては、これまでの対戦も含め、絶対にリベンジしたい。

両エースは万全で

 カギを握るのは両先発の出来だ。ともにエースが先発するのは間違いない。

竹田は最高の調整で宿敵に向かう。「日本一になるため履正社を選んだ」
竹田は最高の調整で宿敵に向かう。「日本一になるため履正社を選んだ」

履正社の竹田は、うまく間隔を空け、疲れを残さないように勝ち上がってきた。苦戦も予想された浪商戦を5回で終えられたのは大きい。万全の状態で臨めるはずだ。竹田の力が傑出している履正社に対し、投手のコマが豊富な桐蔭は、徳山を温存して大一番を迎える。下級生の有望投手と比べ、春以降の徳山の信頼感は絶大で、そのあたりが西谷監督に興国戦での起用を思い留まらせた大きな理由だ。本人も「履正社とやるときは、自分が投げると思っていた」と、はやる気持ちを抑えるように意気込んでいる。

桐蔭・藤原の脚と強打

 打線の力は桐蔭が上回るが、状態は履正社の方が上向きだ。特に安田の調子がいい。後を打つ4番若林将平(3年=主将)は浪商戦で無安打に終わったが、「桐蔭戦にとっている」と大一番にすべてを出し切る覚悟だ。桐蔭は、4番の山本ダンテ武蔵(3年)が、興国戦で飛球を追いかけた際、足がつって途中交代した。次戦に万全で出場できるかは微妙な状況。

桐蔭の藤原は自慢の快速で履正社をかき回せるか。彼が出塁するとチームが勢いづく
桐蔭の藤原は自慢の快速で履正社をかき回せるか。彼が出塁するとチームが勢いづく

2年生が打線を引っ張るが、特に1番藤原の出塁が大きなポイントになる。50メートル5秒7の快速で、「自分のタイミングでスタートが切れたらアウトになったことはない。次もどんどん走りたい」と自信たっぷりだ。興国戦でも難なく2盗塁を決めた藤原は、通算で18本塁打を放つ強打も持ち合わせている。竹田は絶対にマークしないといけない。

履正社の3年生が意地見せるか

 2年生が成長している桐蔭が、戦力的にはやや上回るが、最後の夏は3年生がどこまで力を出せるかで結果は変わってくる。2年生の若さは勢いをもたらす。しかし、準々決勝で投げた桐蔭の根尾と柿木はいずれも脆さを露呈した。履正社は、徳山を攻めて、2年生投手を引っ張り出すような展開に持ち込めれば、3年生が意地を見せるはずだ。今年の高校野球界で実力ツートップはこの2校で間違いない。逆に言えば、大阪桐蔭が負けるとしたら、履正社以外には考えられない。甲子園の決勝よりもレベルの高い試合になると断言する。

毎日放送アナウンサー

昭和36年10月4日、滋賀県生まれ。関西学院大卒。昭和60年毎日放送入社。昭和61年のセンバツ高校野球「池田-福岡大大濠」戦のラジオで甲子園実況デビュー。初めての決勝実況は平成6年のセンバツ、智弁和歌山の初優勝。野球のほかに、アメフト、バレーボール、ラグビー、駅伝、柔道などを実況。プロレスでは、三沢光晴、橋本真也(いずれも故人)の実況をしたことが自慢。全国ネットの長寿番組「皇室アルバム」のナレーションを2015年3月まで17年半にわたって担当した。

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