映画、舞台、テレビ、ラジオなどを主に活動の場にしてきた彼女だが、コロナ禍をきっかけに写真を撮り始め、現在、写真家という新たな表現の道も歩み始めている。

　彼女についてはちょうど写真家として歩み始め、初めてヌードでの濡れ場にも挑んだ主演映画「百合の雨音」が公開された2022年にインタビュー。

　女優自らが写真家として、自らのヌードを撮るという、前例のないセルフ・ポートレートの写真集「Scent of a...」（セント・オブ・ア...）、この写真集の完成とともに新宿 北村写真機店で開催された初の写真展、そして映画「百合の雨音」についていろいろと話を訊いた。

　それから約1年半、「百合の雨音」の金子修介監督と再び顔を合わせた出演映画「ゴールド・ボーイ」が3月8日から公開がスタート。本作では、北村一輝が演じる打越一平の妻、遙役を熱演している。

　そして、現在、新たな写真展「世界に、なにを見よう」が新宿 北村写真機店で開催中だ。

　女優、写真家として着実に歩みを進めている彼女に再び話を訊いた。全六回。

人も場所も見つめる視点がかわると、まったく違う世界が見えてくる

　前回（第二回はこちら）まで、新たなオールドレンズ「タンバール」との出合い、そしてセルフ・ポートレートという自身を見つめることから、外の世界へと視野が広がったことなどについて明かしてくれた花澄。

　改めて今回の写真展「世界に、なにを見よう」についてこう言葉を寄せる。

「前回の写真展『Scent of a...』は、コロナ禍でいわば世界が閉ざされていた。外の世界から遮断されていた。

　その中で、自分という内なる世界を探求してセルフ・ポートレートへと結実させたところがあります。

　自分という人間ととことん向き合って、そこから出てきたものを掬い取って表現する。内から湧き出て生まれてきたものをアウトプットする。

　セルフ・ポートレートは自分の内からの発露で、自分の中から生まれ出ていっている感覚がある。

　自分自身の内なる世界があくまで源になっている。

　一方で、外の世界の自然や風景は、やはり外からインスピレーションを得ているところがあるといいますか。

　たとえば、ある風景を前にしたとします。

　その風景と向き合って、わたしがその中へと入って感じた美しさや感動、心を動かされたものを写真に封じ込めている感覚がある。

　わたしがキャッチしてアウトプットしたものではある。でも、あくまで主体はわたし自身ではなくて、わたしの目に映った風景にある。

　なので、自身の内なる世界、自分の中から生まれたというより、外から生まれたというか、外の世界から与えられたような感覚がどこかあって。

　自分の内からというよりは自分の外でアウトプットしているような感覚がある。

　なかなか言葉にしづらいんですけど（笑）。

　ただ、まったく違うアプローチから生まれたものではあるんですけど、わたしの表現としてはかけ離れてはいない。

　むしろ共通しているというか。

　わたしの中で、その世界の中にあるどのエッセンスを掬い取るかは決まっている。

　それは前回もお話ししたんですけど、『世界はなんて美しいのだろう』ということ。

　どちらも、そういう瞬間を写真に封じ込めている。

　ですから、人間の内なる世界にある『美』、わたしたちがふだん目にしている外の世界にある『美』、どちらも感じていただけるのではないかなと。

　人も場所も見つめる視点がかわると、まったく違う世界が見えてくる。自分にはいま世界がどう見えているのか、自分にはよく見えていない世界があるのではないかといったように、自身に静かに問いかけ、世界を見つめ直す機会になってくれたらうれしいです」

写真家として新たなチャレンジで＜亀山トリエンナーレ2024＞へ

　今回の写真展「世界に、なにを見よう」の次には、三重県亀山市で開催される＜亀山トリエンナーレ2024＞への参加も決まっているという。

「こちらでは写真の展示ではあるんですけど、写真の個展とはまたちょっと違ったことができるのではないかと思っています。

　日本家屋のスペースでやることになっていて、空間デザイン的なこともできるのではないかと。

　いま、ここでどんなことができるのかとあれこれ構想中です。

　新たなチャレンジができるかなと思っています」

写真家として出演作「ゴールド・ボーイ」の現場の舞台裏を撮影

　また、実は現在公開中の出演作「ゴールド・ボーイ」でも、写真家として新たなチャレンジをしている。

「そうなんです。

　実は、現場のメイキング写真のカメラマンさんとは別で、俳優さんたちのバックヤードを撮らせていただくカメラマンとして現場に入らせていただきました。

　だから、出演者と写真家として『ゴールド・ボーイ』には参加しています。

　自分の撮影日以外にも現場に通い続けて、いろいろと撮らせていただきました。

　その中で、メインで追わせていただいたのは、羽村仁成さん、星乃あんなさん、前出燿志さんのいずれもまだ10代の俳優さん。

　いずれもこれから飛躍していこうという若手の彼らに魅せられたといいますか。

　３人とも伸び盛りですから、映画の撮影期間でも大きく成長していくことがわかる。

　いままさに飛躍しようとしているその瞬間を写真にとどめておきたいと思ったんです。

　わたしの大好きな写真家のハービー・山口さんが、のちにビッグスターとなるアーティストのデビュー前の写真を撮っていらっしゃる。

　そのアーティストが飛躍する前夜みたいな写真を残している。昨年、渋谷パルコでまさにそういう写真展が開催されていったのですが、『なんて、貴重なものを残してくれていたんだ！！』と感動して涙が出たんです。

　そういった写真になればいいなと思って、若い三人と日々向き合いました。

　その写真は劇場用パンフレットに収められているので、よかったらぜひお手にとって見ていただけたらと思います」

（※第四回に続く）

【写真展「世界に、なにを見よう」／「ゴールド・ボーイ」花澄　第一回】

【写真展「世界に、なにを見よう」／「ゴールド・ボーイ」花澄　第二回】

＜花澄写真展「世界に、なにを見よう」＞

開催期間　3月19日（火）まで

時間：10:00～21:00

場所：新宿 北村写真機店 6階イベントスペース

入場料無料

写真展に関する写真はすべて（C）2022 KAZUMI PHOTOGRAPHY. All Rights Reserved.

「ゴールド・ボーイ」

監督：金子修介

脚本：港 岳彦

出演：岡田将生、黒木華、羽村仁成、星乃あんな、前出燿志、

松井玲奈、北村一輝、江口洋介、花澄

公式サイト　https://gold-boy.com/

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