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いったい多摩川で何が起きているのか?人間に棄てられ、虐待される猫たちがいる現実の闇を前に

水上賢治映画ライター
「たまねこ、たまびと」より

 いまYouTubeなどをみると、犬や猫といったペットのかわいい映像があふれている。

 以前はペットの殺処分が問題になっていたが、近年は、「殺処分ゼロ」を掲げる自治体も確実に増えている。

 一見すると、ペットをめぐる状況は以前に比べると好転しているかに思える。

 ただ、実際はいったいどうなのだろうか?

 そんなことをふと考えてしまう厳しい現実を突きつけられるのが、本作「たまねこ、たまびと」だ。

 多摩川の干潟を舞台にしたドキュメンタリー映画『東京干潟』『蟹の惑星』が高い評価を受けた村上浩康監督が再び多摩川にカメラを向けた本作は、人間の都合で捨てられた猫たちとその小さな命を守ろうと奔走する人々をみつめる。

 多摩川で起きている「いのち」の問題とは?2年間にわたって取材した村上監督に訊く。(全五回)

多摩川は都会の縮図。都会のいろいろなものが流れ着く場所

 前回(第四回はこちら)は、多摩川が、猫が生きていくには適していない場所(※そもそも猫を捨てる場所ではない)だということが明かされた。

 改めて多摩川を回ってみてどんな印象を抱いただろうか?

「まず前の話の繰り返しになりますけど、夏はものすごく暑くて、冬はものすごく寒い。

 環境にそうとうな落差がある。

 多摩川というとなんだか河川敷があって野球のグランドなんかがあって、市民の憩いの場のイメージがある。

 確かに憩いの場ではあります。

 でも、おそらく考えているよりも自然の中というか。街の中を流れていたりするのだけれど、想像するよりも自然で厳しい環境で危ないところもある。

 そういうことを僕自身も今回実感したところがあります。

 それから、猫が捨てられることもそうですけど、多摩川は都会の縮図といいますか。

 都会のいろいろなものが流れ着く場所なんですよね。

 『東京干潟』でも少し触れていますが、さまざまな人が最後に行き着いている場所でもあるし、飼い主からもう不必要とされてしまったペットも行き着く。

 台風の後は都会のごみが全部川に流れてきて、川っぺりに全部こう、がれきが堆積する。

 都会のしわ寄せのようなものが全部川に来ている、そういう印象を受けました。

 あと、小西さんとともに川を1年以上回っていて印象的だったのは、季節感がものすごくある。

 なにに季節を感じるかというと花なんです。

 季節ごとに、いや月ごとにいろいろな花が咲くんです。

 で、その花というのが、ほとんどが町の民家などからタネが飛んできて咲いたものなんです。

 多くが外来種の花で、本来そこにある花ではない。そういった花が 多摩川のいろんなところで季節ごとに咲いている。

 それもまた都会から飛んできて辿り着いたものなんですよね。

 それから3年前の台風以降、ものすごく河川の造成工事が各所で始まっている。

 それによってもともとあった環境が破壊されている。

 野生動物ではない猫にとっては厳しい自然環境であると言いましたけど、一方で、もともと多摩川に住んでいる野生動物の住む環境がどんどん破壊されている。

 多摩川のあるエリアには、野生のキジがいたり、タヌキがいたりするんですけど、そういう生き物の棲み家がある日突然重機で破壊されて、木も草も刈られて更地にされてしまったりする。

 そうやって人間の手で壊されている現実もある。

 だから、ペットが捨てられることもそうだし、こうした工事もそうだし、人間の都合や勝手がまかり通ってしまっているなと感じる瞬間が幾度となくありました」

「たまねこ、たまびと」より
「たまねこ、たまびと」より

川って日が暮れると真っ暗で、まさに『闇』なんです

 ここまでの話だけではなく、ほんとうに多摩川からはいろいろなことがみえたという。

「小西さんに同行して上流の奥多摩から下流まで多摩川のいろいろなところに行きましたけど、ほんとうに川っていうのは、都会の中でものすごく特殊な場所なんだと思いました。

 いろいろなことが見えてくる。

 『東京干潟』の撮影時もそう思ったんですけど、もう多摩川全域を回ると、さらにいろいろなことが見えてきました。

 川を回っていると、ほんとうにいろいろな人がいるんですよ。ちょっと都会の街を歩いていても出会えないような個性的な人に出会う。

 それから、映画の中で、猫の虐待があって、暗い中見回りをしているシーンがありますよね。

 あのシーンを見てもらえるとわかるんですけど、川って日が暮れると真っ暗で、まさに『闇』なんですよね。

 もしかしたら、川は都会の中で一番、闇が深い場所といってもいいかもしれない。それぐらい暗いんですよね。

 こういう闇に包まれているからこそ、人間の本性が出るといいますか。

 小西さんがよく言うんです。『人間っていうのは、人が見てなければどんなことでもするよ』と。

 確かに僕だって人が見ていなかったら、たとえばポイ捨てとかしてしまうかもしれない。

 だから、猫への虐待やゴミの不法投棄も起きるのかなと、思いました。悲しいことですけど。

 川は夜になると闇に包まれてひと目につかない。それによって本性が出て、そういった行為に及ぶ人間がいるのかなと考えてしまいましたね。

 そういう意味で、闇の深い場所でもあるなと感じました。

 それは残念ですけど、日本の社会に厳然とある闇を映しているのかもしれないです」

(※本編インタビューは終了。次回からここまでで収まりきらなかった話をまとめた番外編をスタートさせます)

【村上浩康監督インタビュー第一回はこちら】

【村上浩康監督インタビュー第二回はこちら】

【村上浩康監督インタビュー第三回はこちら】

【村上浩康監督インタビュー第四回はこちら】

「たまねこ、たまびと」ポスタービジュアル
「たまねこ、たまびと」ポスタービジュアル

「たまねこ、たまびと」

監督・撮影・編集・製作:村上浩康

全国順次公開中

公式サイト https://tamaneko-tamabito.com/

写真はすべて(C)EIGA no MURA

映画ライター

レコード会社、雑誌編集などを経てフリーのライターに。 現在、テレビ雑誌やウェブ媒体で、監督や俳優などのインタビューおよび作品レビュー記事を執筆中。2010~13年、<PFF(ぴあフィルムフェスティバル)>のセレクション・メンバー、2015、2017年には<山形国際ドキュメンタリー映画祭>コンペティション部門の予備選考委員、2018年、2019年と<SSFF&ASIA>のノンフィクション部門の審査委員を務めた。

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