Yahoo!ニュース

女優がセルフで自らのヌードを撮る。その集大成となった写真集も写真展もすべて自らの手で

水上賢治映画ライター
写真集「Scent of a...」(セント・オブ・ア...)より

 女優、ナレーターとして活躍する花澄(かずみ)。

 映画、舞台、テレビ、ラジオなど幅広いフィールドを活動の場にする彼女だが、実はもうひとつ、写真家という顔がある。

 ある日、カメラを手にしてファインダーを覗いた瞬間から「見える世界がかわった」と語る彼女。

 そこから「撮られる側」から「撮る側」へ。写真家としての歩みを始めた。

 そして、2年間撮り続けたセルフポートレートから厳選した作品をまとめた写真集「Scent of a...」(セント・オブ・ア...)が完成。これは、女優自らが写真家として、自らのヌードを撮り、ひとつの作品にまとめた、これまで例のないかもしれない写真集になる。

 この写真集の完成とともに現在写真展を開催中。さらに初の主演映画「百合の雨音」も公開がスタートした。

 これまで今回の写真集発表と写真展開催までの過程を訊くインタビューを連載したが、今回からは裏エピソードをまとめた番外編。

 セルフでの自身のヌード撮影と同じように、実はこちらも1人でなにからなにまで手掛けた写真集と写真展の舞台裏について訊く。(番外編全二回)

写真集を完成させるとともに写真展を開催する花澄
写真集を完成させるとともに写真展を開催する花澄

自分でやるしかないといった感じだったんです

 はじめに写真展の企画展示、写真集の編集・デザインなどすべて一人で手掛けるにいたった理由をこう明かす。

「ひと言で表すと、すべて考えると、自分でやるしかなかったんです(笑)。

 この2年の間で撮ったヌードも含む写真は、人の手が入っていない。

 なにからなにまで一人で撮ったものになる。

 はじめから誰か編集者であったりとかが入っていたら違ったと思うんですけど、そうではない。

 ずっと一人でやってきたものなので、ほかの人には任せられないというよりは、わたしでないと分からないことが多すぎる。

 だから、自分でやるしかないといった感じだったんです」

写真家・ハービー山口さんに写真を見てもらったことが…

 そもそも写真集も写真展もはじまりは偶然からのスタートだったという。

「そうなんです。

 2年ぐらい撮ったぐらいのときに、ちょうど映画『百合の雨音』の撮影に入る前だったんですけど、写真家のハービー(山口)さんに写真を見ていただいたんです。

 2年間撮り溜めたので、作品を見ていただけませんか?と、A4サイズにちゃんとプリントして、ファイルに入れて3冊ぐらい持って行ったんです。スーツケースに入れて。

 そうしたら、そんなに持ってこられるとハービーさんは思ってなかったみたいで(苦笑)。

 『これは簡単に見られるエネルギーのものではないです』となにか座り直してくださった上に手袋までもってきてくださって。

 ハービーさんはその3冊を2回もじっくり見てくださって、『これはちゃんとしたほうがいいです。どうにかしましょう』とおっしゃってくださった。

 わたしとしては感想さえいただければと思っていたので、『いや、そんな、全然、試しなんですけど』とみたいな感じで、『ちゃんとしたほうがいい』と言われてもよく分からない。

 とにかく思いついたシチュエーションで撮った写真で、いろいろなテイストの写真があるし、別にひとつの方向性をもって撮った写真でもない。あまりまとめることも考えていなかった。

 そうしたら、ハービーさんが『まず、わたしが、こんなのいいかなっていう作品に付箋を付けます。その後にもう1度会いましょう』ということになったんです。

 で、後日、セレクトをしてくださった上、ギャラリーに連れていっていただいて、アートディレクターの方を紹介していただいたり、さらに出版社も紹介してくださってお話しをする機会を得たんです。

写真集「Scent of a...」(セント・オブ・ア...)より
写真集「Scent of a...」(セント・オブ・ア...)より

 ただ、写真展にしても写真集にしてもお話は聞いたものの、聞けば聞くほど、わたしの場合は自身でやるしかないなと。

 たとえば、写真集だと部数の話からはじまって、わたしが女優ということもあるので、もっとグラビアのようなタイプの写真の方がウケがいいし、売れるといったことになってしまう。

 そういう消費されるものに自分の手ではしたくなかった。なにより、そういうことで撮ったのではない。

 コロナ禍で何もできないところで、ある意味、身を削って撮ったもので、いずれの写真も創作作品、アート作品として取り組んだ。

 こういうスタンスでなおかつ一人で撮ってきたものなので、他人に渡して、違うニュアンスで伝えられてしまっては元も子もないなと考えたんです。

 自分で自分のヌードまで一人で撮った。ここまでやったのだから、わたし自身が責任を持ってアウトプットするのがベストでないかと。

 そういう結論に達して、もうこれはデザインからなにからなにまで自分ひとりでやろうと。

 ただ、写真集を出してこともなければ、写真展もやったことはない。

 なので編集者さんやアートディレクターの方に相談して、写真集ならばどういう作業が必要なのかまず指南していただきました。

 そこでデザインも手探りでやってみたら、やってみたら、『けっこういけるかも』と、ちょっと自信をもてて。

 じゃあ、なにからなにまで一人でやるプロジェクトにしてみようと思って、ハービーさんに相談したら『それはやってる人は少ないから、そこまでやるんだったら、オリジナリティが出るから、ぜひそれはチャレンジするべきです』と後押しの言葉をいただいたのでチャレンジすることに決めました」

(※番外編第二回に続く)

【花澄インタビュー第一回はこちら】

【花澄インタビュー第二回はこちら】

【花澄インタビュー第三回はこちら】

【花澄インタビュー第四回はこちら】

【花澄インタビュー第五回はこちら】

写真集「Scent of a...」(セント・オブ・ア...)
写真集「Scent of a...」(セント・オブ・ア...)

写真集「Scent of a...」(セント・オブ・ア...)

A4変形ハードカバー64頁

価格:5500円(税込)

写真展会場とオンラインショップで販売

オンラインショップはこちら → https://kazumiphoto.base.shop/

写真集や写真展に関する最新情報はこちら

→ https://kazumi-photo.com/news/

<花澄写真展「Scent of a…」(セント・オブ・ア)〜わたしが、わたしを、うつす〜>より
<花澄写真展「Scent of a…」(セント・オブ・ア)〜わたしが、わたしを、うつす〜>より

<花澄写真展「Scent of a...」(セント・オブ・ア...)

〜わたしが、わたしを、うつす〜>

期間:10月23日(日)まで

時間:10:00~21:00(※店舗営業時間に準ずる)

入場無料

場所:新宿 北村写真機店 6F Space Lucida

写真は(C)2022 KAZUMI PHOTOGRAPHY. All Rights Reserved.

「百合の雨音」より (C)2022日活
「百合の雨音」より (C)2022日活

「百合の雨音」

監督:金子修介

出演:小宮一葉、花澄 / 百合沙、行平あい佳、大宮二郎 / 宮崎吐夢

ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国順次公開中!

映画ライター

レコード会社、雑誌編集などを経てフリーのライターに。 現在、テレビ雑誌やウェブ媒体で、監督や俳優などのインタビューおよび作品レビュー記事を執筆中。2010~13年、<PFF(ぴあフィルムフェスティバル)>のセレクション・メンバー、2015、2017年には<山形国際ドキュメンタリー映画祭>コンペティション部門の予備選考委員、2018年、2019年と<SSFF&ASIA>のノンフィクション部門の審査委員を務めた。

水上賢治の最近の記事