昨年11月11日(木)から14日(日)の4日間、横浜で毎年恒例の<フランス映画祭2021 横浜>が開催された。

 コロナ禍の影響で残念ながらフランスからのゲストは不在という状況での開催ではあったが、上映作品に関しては例年と変わらず、充実のラインナップ。

 フランス映画の最新作が集まり、多くの観客を集めた。

 また、EV(電気自動車)限定のドライブインシアターを赤レンガ倉庫で実施。

 『フランス映画祭2021 横浜:EVで星空上映』と題して実施されたこの特別上映も大きな反響を呼んだ。

 先で触れたようにフランス映画祭では最新のフランス映画が一挙に上映される。

 その上映作品には、日本での劇場公開が決まっているものがある一方で、残念ながら日本公開が決まっていないものもある。

 そういった作品の中に、『フランス映画祭のみで上映だけは惜しい!』と思える作品も多々ある。

 今回の<フランス映画祭2021 横浜>で、そんな思いに駆られた1本が、カトリーヌ・コルシニ監督の『分裂』だ。

 映画祭開催から少し時間が経ってしまったが、彼女とのリモートインタビューを届ける。(全二回)

日本で紹介されないだけで(苦笑)、この間もいろいろと映画を撮っています

 はじめにカトリーヌ・コルシニ監督の日本で公開されている最後の映画は「黒いスーツを着た男」。

 この作品は2012年に発表されており、もう10年近くも前の映画になる。このブランクについて、監督はこう語る。

「ほんとうに残念なのだけれど、日本で紹介されないだけで(苦笑)、この間も実はいろいろと映画を撮っています。

 2015年に発表した『La belle saison』(※<フランス映画祭2016 in 福岡>で邦題『美しいとき』で上映)は、LGBTを主題にした映画でフランスでも反響を得ました。

 2018年には、クリスティーヌ・アンゴという作家の小説を映画化した『Un amour impossible(不可能な愛)』を発表しました。

 ヴィルジニー・エフィラらが出演した作品で、こちらも好評を得ました。

 ただ、これは日本に限ったことではありませんが、なかなかフランス映画が海外に輸出されない現状があります。

 ほんとうに日本のみなさんにみてほしいのですが、なかなかその願いが叶わない状況が続いていて残念です」

映画「分裂」の主軸にあるのは、実は実体験

 本題に入って、映画「分裂」は、もう破局寸前まできている同性カップル、ラフとジュリーが主人公。

 ある日、転倒して腕の骨を折ったラフが救急で運ばれ、病院へジュリーが駆け付ける。

 その日は、パリで「黄色いベスト運動」の大規模デモがあり、救急はデモで怪我をした人々でごったがえす。

 そんな喧騒の中の病院を舞台に、二人の関係の行方を描きながら、さまざまな社会問題にも鋭く踏み込んだ作品になっている。

 本作の出発点について監督はこう明かす。

「黄色いベスト運動であったり、公立病院の問題であったり、同性婚のカップルのことであったりと、いろいろとフランスの社会状況を盛りこんではいるのだけれど、主軸にあるのは、実は実体験なんです。

 実はわたし、主人公のラフと同じように道路で転んで肘を骨折して病院に運ばれたことがあったんです。

 その日がまさにパリで『黄色いベスト運動』のデモがあった日で、まさにラフと同じように病院で一晩待って、待って、待っていうような時間を過ごしたんです。

 そのとき、まあ映画監督の性(さが)で、病院で起きることをずっと観察するように見ていて。

 そのときの体験がもとになっています」

公立病院の救急というのは、まさにフランス社会の縮図を表しているよう

 当時、病院にいて、こんなことを考えたという。

「無料で救急治療してくれるので、生活困窮者から裕福な人まで、宗教も国籍も関係なく、いろいろな人がやってくる。

 治療を受ける順番というのも、病や傷の重症度を基準に決められる。

 つまり、誰に対しても平等なんです。そして、誰にでも開かれている場所でもある。

 公立病院の救急というのは、まさに社会の縮図を表しているようだと感じました」

 また、今回の新作では、現代のフランスについて語りたい思いもあったという。

「さきほど触れた2作品なんですけど、『La belle saison』は1970年代、『Un amour impossible(不可能な愛)』は1950年代の物語。

 つまり過去を舞台にした映画でした。ということもあったので、今回に関しては、いまのフランス社会に眼差しを注ぎたい気持ちがありました」

(※第二回に続く)

「分裂」より (C)DR
「分裂」より (C)DR