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急遽、ライムスター宇多丸の登壇が決定!「カムカム」が話題の深津絵里主演作も。いまモリタ映画を

水上賢治映画ライター
『(ハル)』より (C)光和インターナショナル

 1977年にスタートし、黒沢清、李相日、荻上直子、石井裕也ら160名を超えるプロの映画監督を輩出してきた<ぴあフィルムフェスティバル>(※以下PFF)。

 映画の未来を担う才能が集う場所であるとともに、映画という文化を未来へとつなぐ場所でもある同映画祭は、昨年9月に東京で開催され、メイン・プログラムのコンペティション<PFFアワード2021>の各賞が発表された。

 ただ、PFFの開催は東京のみで終わりではない。

 年が明けたこれから各地方での開催へと入り、東京開催とはまたひと味違ったラインナップのプログラムを届ける。

 現在開催がスタートした京都開催について、荒木啓子PFFディレクターに話を訊く。(全三回)

荒木啓子PFFディレクター  提供:ぴあフィルムフェスティバル
荒木啓子PFFディレクター  提供:ぴあフィルムフェスティバル

東京開催とはまったく別のラインナップで森田芳光監督を語り尽くす

 第三回(第一回第二回)は、昨年、没後10年、生誕70周年を迎えた森田芳光監督を再発見する特集<森田芳光70祭(ななじゅっさい)~伝えたい、モリタを~>について。

 <森田芳光70祭>については、昨年、森田芳光 全監督作品コンプリート(の・ようなもの)Blu-ray BOXの発売、記念本の出版、森田監督ゆかりの映画館での特集上映など、大プロジェクトとして展開していたのでご存知の方も多いことだろう。

 今回のPFFでの上映もそのプロジェクトの一環となる特別企画だ。

 東京開催では、『ときめきに死す』『メイン・テーマ』『それから』『39 -刑法第三十九条-』を上映。

 冨永昌敬監督、松居大悟監督、沖田修一監督、石川慶監督と脚本家の向井康介が、ゲストとして登壇し、森田監督作品について熱いトークを繰り広げた。

 その東京開催のラインナップから一新、今回の京都開催では、まったく別の3作品をピックアップ。

 いまや伝説の一作となっている森田監督にとって最後の8mm映画にして1978年PFF入選作品「ライブイン茅ヶ崎」、劇場映画デビュー作となる「の・ようなもの」、当時、まだ一般化していないメールを世界に先駆けて取り入れ、深津絵里が主演を務めた1996年の傑作「(ハル)」を上映する。

 このセレクションについて荒木PFFディレクターはこう語る。

「京都では、PFFと縁のある作品を上映したいなということで、PFFの入選作品である『ライブイン茅ヶ崎』は外せないということでまず決まりました。

 あと、どうしようとなったんですけど、『の・ようなもの』からプロデューサーとして森田監督作品を支え続けた、森田監督のご夫人、三沢和子プロデューサーが尽力してくださって商業デビュー作の『の・ようなもの』と、いまも人気の高い『(ハル)』の上映が実現した次第です」

「ライブイン茅ヶ崎」より  提供:ぴあフィルムフェスティバル
「ライブイン茅ヶ崎」より  提供:ぴあフィルムフェスティバル

森田監督作品に常にあるフラットでフェアな眼差し

 いま改めて森田監督作品の魅力について荒木PFFディレクターはこう語る。

「東京開催のとき、現在、第一線で活躍されている監督のみなさんが森田監督作品について熱く語ってくださいました。それを聞きながら、森田さんの影響の大きさを発見した感じです。

 私にとっての新たな実感は、その眼差し。物語にしても、人物にしても、すべてにおいてフラットで、すごくフェアなところに視点が置かれている。常に新しいところに視点があるので、映画も新鮮で色褪せない。

 これは、今や森田監督の代名詞のようになっていますが『常に新しい」んです。

 そして、新しいことを『普通に』にやっている。卓越した映画センスをもっているのに、それを当たり前のようにやっているから気づかれない。

 わたしの中では、年を追うごとに偉大さが増していて、知れば知るほど、ほかにない唯一無二の存在の監督だったんだなと感じています。

 正直なところ、私が映画をみはじめたときには既に大ヒットメーカーとしての存在だった森田監督ですから、当時は熱心な観客ではなかったのです。いま、改めて見直すチャンスが訪れて、ほんとうによかったとしみじみ感じています。

 また、今回のもうひとつの特集のナワポン監督が、森田さんと通底するようなフェアな監督で、シンクロニシティのようなものを感じています」

「の・ようなもの」より   (C)1981N.E.W.S. CORPORATION
「の・ようなもの」より   (C)1981N.E.W.S. CORPORATION

森田監督の夫人、三沢和子プロデューサーが登壇

急遽、ライムスター宇多丸のゲスト出演も決定!

 今回の上映では、全作品に、森田監督をまじかでずっと見続け、知り尽くした三沢プロデューサーが登壇。そのトークに期待が高まる。

「三沢さんとお話すると、たとえば、森田監督がどれだけ映画のことばかり考えていたのかとか、この映画のときにこんなことをしようとしていたのかとか、毎回、びっくりするエピソードが飛び出します。

 今回は、初期の作品があるので、たとえば、監督として一本立ちするまでエピソードとか、あまり表に出ていない、ほんとうにここだけの話が聞けるかもしれません。

 そして、急遽決定した大ニュースですが、森田芳光ファンといえばこの方、ライムスター宇多丸さんが、弾丸日帰りで京都にお越しくださることになりました!

 『ライブイン茅ヶ崎』と『の・ようなもの』のアフタートークに登壇してくださいます。どんな話が飛び出すのかいままったくみえませんが、わくわくしています。

 あと、今回の会場となる京都文化博物館のシアターがすばらしくて、最高の環境で映画を楽しむことができる。

 その中で、色褪せない、常に新鮮な森田監督作品を、心ゆくまで味わっていただければと思います」

<第43回ぴあフィルムフェスティバル in 京都>ポスタービジュアル 提供:ぴあフィルムフェスティバル
<第43回ぴあフィルムフェスティバル in 京都>ポスタービジュアル 提供:ぴあフィルムフェスティバル

<第43回ぴあフィルムフェスティバル in 京都>

会期:1月8日(土)~16日(日) ※11日(火)は休館

会場:京都文化博物館(京都府京都市中京区東片町623−1)

タイムテーブルやチケットなどの詳細は

「第43回ぴあフィルムフェスティバル in 京都」公式サイトへ

https://pff.jp/43rd/kyoto/

<森田芳光70祭(ななじゅっさい)~伝えたい、モリタを~>

1月15日(土)11:00~「ライブイン茅ヶ崎」

14:00~「の・ようなもの」

17:00~「(ハル)」

※上映後、アフタートークあり。

全アフタートークに三沢和子プロデューサー登壇。

「ライブイン茅ヶ崎」「の・ようなもの」の回には、

ライムスター宇多丸の登壇が急遽決定!

<そのほかのPFF in 京都・来場ゲスト情報>

1/16(日)11:00~『帰路』 ゲスト:高橋伊吹監督

1/16(日)11:00~『距ててて』 ゲスト:加藤紗希監督、豊島晴香(脚本)

1/16(日)14:00~『苺のジャムとマーガリン』

         ゲスト:宮永咲弥花監督、三代朋也(出演)

1/16(日)14:00~『転回』 ゲスト:加藤紗希さん(出演)

1/16(日)17:00~『ばちらぬん』 ゲスト:東盛あいか監督

※*やむを得ない事情により、プログラムおよび来場ゲストが

予告なく変更になる場合あり

映画ライター

レコード会社、雑誌編集などを経てフリーのライターに。 現在、テレビ雑誌やウェブ媒体で、監督や俳優などのインタビューおよび作品レビュー記事を執筆中。2010~13年、<PFF(ぴあフィルムフェスティバル)>のセレクション・メンバー、2015、2017年には<山形国際ドキュメンタリー映画祭>コンペティション部門の予備選考委員、2018年、2019年と<SSFF&ASIA>のノンフィクション部門の審査委員を務めた。

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