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中谷潤人、井岡一翔、エストラーダと統一戦を熱望するIBF王者はどれほど強いのか?

三浦勝夫ボクシング・ビート米国通信員
ボルネアを攻めるマルティネス(写真:Esther Lin/SHOWTIME)

小型タイソンと豪語

 先月ラスベガスでスペクタクルでショッキングなKO勝ちを飾り2階級制覇に成功した中谷潤人(M.T)がWBO王者に君臨。ジョシュア・フランコ(米)との再戦を制してWBA王者に就いた井岡一翔(志成)。以前から第一人者と見なされるWBC王者フアン・フランシスコ・エストラーダ(メキシコ)。軽量級のホットなクラス、スーパーフライ級の展望が一段と興味深くなって来た。そしてもう一人、IBF王者フェルナンド・マルティネス(アルゼンチン)が24日(日本時間25日)米国で防衛を果たした。

 “プーマ”のニックネームを持つマルティネスはミネソタ州ミネアポリスで行った2度目の防衛戦でランキング1位ジェイド・ボルネア(フィリピン)に11ラウンド29秒TKO勝ち。無敗同士の一戦はサウスポースタイルで対処するボルネアが序盤から中盤まで約7センチのリーチ差を生かしたワンツーコンビネーションなどで抵抗した。だが馬力とパワーで勝るマルティネスがボディー打ちを決めて抜け出し、9回から一方的に攻めまくり、レフェリーストップを呼び込んだ。

 昨年2月にジェルウィン・アンカハス(フィリピン)に競り勝ってベルトを奪取したマルティネスは8ヵ月後のダイレクトリマッチではより明白な判定勝利を収め初防衛に成功。3試合連続フィリピン人との対戦となった今回の防衛戦で実力を再認知させることになった。当然ながら彼はライバル3王者との対決をアピールしている。

ボルネアのボディーを攻撃するマルティネス(写真:Esther Lin/SHOWTIME)
ボルネアのボディーを攻撃するマルティネス(写真:Esther Lin/SHOWTIME)

 ボルネア戦を前にした会見の席でマルティネスは「ファンは“ミニ・マイク・タイソン”を目のあたりにするでしょう」と豪語した。正直、タイソン級の迫力を感じたファンがどれくらいいたかは定かでないが、この発言は自身を奮い立たせる目的があったに違いない。同時に自分を売り込む術に長けている選手という見方もできる。マルティネスがどれくらいのポテンシャルを秘めているか、3王者との対決を想定して占ってみよう。

vs.中谷潤人

 ボルネアは中谷ほどの長身選手ではないが、サウスポーで戦ったことである程度、展開が予測できる。今回の試合でマルティネスは距離を置かれると弱点をさらけ出した。よって中谷がアウトボクシングを徹底させれば、それほど困難な相手ではないと思える。アグレッシブに攻め込んで来るだけに、中谷は得意のカウンターを打ち込むチャンスが広がるだろう。これまで16勝9KO無敗とパワーが飛びぬけてある選手でもない。

 だがマルティネスは距離の詰め方がうまい。ボルネア戦でもいつの間にか、自分の距離に相手を引きずり込んでいた。中谷は接近戦も得意なだけに中に入られても応戦できるスキルを持っている。前回のアンドリュー・マロニー(豪州)戦に続くKO劇が披露される可能性が感じられる。

 それでもマロニーとマルティネスは別物と考えなければならない。少々の被弾を苦にしないマルティネスは打たれ強さといっしょに精神的なタフネスを兼備している。仮に中谷に距離を支配されても打開策を講じて来るに違いない。一筋縄ではいかない選手だと思える。1試合ごとに向上の跡が見受けられることも強みで好試合を予感させる。一番スリルが堪能できる試合だと推測する。

vs.井岡一翔

 井岡とは中谷よりも距離が狭まった攻防が展開されるのではないだろうか。そうなるとマルティネス有利の予想も出て来るが、井岡はイン&アウトの出入りが巧妙で、駆け引きに成熟した印象がある。マルティネスが強引に攻めるほど井岡の術中にはまってしまうことも考えられる。

 またマルティネスが相手の戦力を減退させる武器として使うボディー攻撃を井岡がすんなり許すかという疑問も生じる。そこで堤防が崩れるように井岡が劣勢に追い込まれる展開は想像しにくい。かと言って、井岡がコンスタントにヒットを重ねてコントロールできる保証もないように思える。

 一番ペース争いが面白いのが、このカードではないか。おそらく試合は中間距離からクロスレンジの間での攻防になると思われる。そこで、より距離が遠ければ井岡有利、より距離が近づけばマルティネス有利の展開となるのでは。チェスマッチ(頭脳戦)の様相も呈してくる。マルティネスの馬力が勝るか、井岡の経験とテクニックが上回るか?

vs.エストラーダ

 同じラテンアメリカでもメキシコのボクシングはアグレッシブ、アルゼンチンはテクニカル――大雑把に言えば、そう区分けできる。とはいえ、このカードはスキルのエストラーダ、攻撃的なマルティネスと逆のスタイルを2人は有している。まだスキルの勝負でマルティネスはエストラーダに太刀打ちできない。

 マルティネスが勝利を呼び込むためには乱戦に持ち込むのが手段となるだろう。また手数の勝負で渡り合うには今以上のアグレッシブさが要求される。ただスタミナや耐久力があるマルティネスはエストラーダのメカニズムを崩すバイタリティーを装備している。

 現状では総合点でエストラーダ優位は動かせない。しかし自身の長所を伸ばして行けばマルティネスにも見通しが拓けて来る。もし次戦でこの対戦が決まっても、ファンの観戦意欲を大いに刺激することになるだろう。

2度目の防衛に成功したマルティネスは統一戦を目指す(写真:Esther Lin/SHOWTIME)
2度目の防衛に成功したマルティネスは統一戦を目指す(写真:Esther Lin/SHOWTIME)

 初黒星を喫したボルネア(18勝12KO1敗=28歳)は挑戦者決定戦に勝ってランキングを上昇させたように侮りがたい相手だった。一皮むけた姿を披露したマルティネス(31歳)は統一王者の本命とは言えないまでも、どのチャンピオンと当たっても好勝負が約束される骨のある選手だと断言できる。まずは日本の中谷、井岡との一騎打ちを見てみたい。

ボクシング・ビート米国通信員

岩手県奥州市出身。近所にアマチュアの名将、佐々木達彦氏が住んでいたためボクシングの魅力と凄さにハマる。上京後、学生時代から外国人の草サッカーチーム「スペインクラブ」でプレー。81年メキシコへ渡り現地レポートをボクシング・ビートの前身ワールドボクシングへ寄稿。90年代に入り拠点を米国カリフォルニアへ移し、フロイド・メイウェザー、ロイ・ジョーンズなどを取材。メジャーリーグもペドロ・マルティネス、アルバート・プホルスら主にラテン系選手をスポーツ紙向けにインタビュー。好物はカツ丼。愛読書は佐伯泰英氏の現代もの。

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