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村田諒太、統一王者ゴロフキン戦までの未来予想図

三浦勝夫ボクシング・ビート米国通信員
アラム氏(左)メンドサ会長に祝福される村田(写真:イーストサイド・ボクシング)

米国でも反響は絶大

 今週日曜日、横浜アリーナで行われたWBA世界ミドル級“レギュラー”王者村田諒太(帝拳)の初防衛戦は本場米国でも大きな評判となった。王座を獲得したアッサン・エンダム戦同様、スポーツ専門局ESPNが早朝ながら生放送。試合内容は挑戦者エマヌエーレ・ブランダムラ(イタリア)がディフェンシブな対応に終始したため見せ場はそう多くなかったが、きっちり中盤でストップ勝ち。観戦した米国の共同プロモーター、ボブ・アラム氏は未来のビッグマッチのプランを明かした。華のある絢爛のクラス、ミドル級。ブランダムラ戦は村田にとり、リングのメジャーリーグ進出の礎石となる重要な出来事と認識される。ターゲットはズバリ、3冠王ゲンナジー・ゴロフキン(カザフスタン)だ。

 希望と失望が入り混じっているのが今のミドル級だ。前者はもちろん今回の村田の新時代を拓くイベント。そして今週土曜日21日ニューヨーク・バークレイズセンターで開始ゴングを聞くWBCミドル級暫定王座決定戦が控える。スーパーウェルター級王者から転向したジャモール・チャーロ(米)が同じく無敗のウーゴ・センテノ(米)とベルトを争う。正規王者はゴロフキンだが、WBC王座の指名戦から遠ざかることから設けられる一戦。暫定戦とはいえ、チャーロはメジャーリーグ参戦が確実視されるスラッガー。ほぼ同時期、日米のスター候補2人が重要なステージに立つ。

 失望の方はゴロフキンとのダイレクトリマッチをキャンセルしたサウル“カネロ”アルバレス(メキシコ)のドーピング違反に尽きる。現地時間今日18日、米ネバダ州コミッションの公聴会で処分が言い渡される予定。最初シロに近い灰色だったのが、同コミッションがライセンス一時停止を通告した後は限りなくクロに近づいている印象。彼のプロモーター、ゴールデンボーイ・プロモーションズ(GBP)はメキシコの独立記念日に伴った9月のイベントでゴロフキン戦をリセットさせたい意向だが、サスペンド期間は1年に及ぶ可能性も出ている。

公聴会の処分が気になるカネロ・アルバレス(写真:ボクシングシーン)
公聴会の処分が気になるカネロ・アルバレス(写真:ボクシングシーン)

 2月に実施された薬物検査で違反物質クレンブテロールが発見されたカネロはGBPとともにメキシコで食べた汚染肉が原因だと弁解した。だが以前対戦したミゲル・コット(プエルトリコ)とリアム・スミス(英)は「彼がトレーニングを実行するアメリカでは肉は汚染されていない」とシニカルな発言。以前からカネロに対し疑惑の目を向けていた関係者もおり、汚名が晴れるまで時間を要しそうだ。カネロとGBPの蜜月関係も今回のスキャンダルで変化が起こるかもしれない。

ゴロフキンの相手が決まらない

 カネロ戦が消滅したゴロフキンは同じ5月5日、別の相手との防衛戦を希望している。様々な名前が挙がり、会場も大アリーナから中規模アリーナへ移る見込みだが、試合まで20日を切っても対戦者が決まらない。これまでのキャリア進行で比較的多く試合をこなすタイプだったゴロフキンは自身のため、そしてファンのためにぜひリングに上がりたいと主張する。

 だが試合が実現してもカネロとの再戦に向けての前哨戦、調整試合の設定となる。多額の報酬は見込めない。17連続KO防衛など圧倒的な強さを誇った“GGG”ゴロフキンだが、今月8日で36歳になり、「退職金回収が急務」と揶揄するメディアもある。現在のミドル級シーンで大金が入る相手はカネロしかいない。その意味でメキシカン以上に再戦を切望している。他方でひとまずカネロ戦がなくなり、相手を探すゴロフキンに指名試合を強要するのがタイトル認定団体の一つIBF。指名挑戦者のセルゲイ・デレフヤンチェンコ(ウクライナ)と対戦しなければタイトル剥奪の動きを見せる。また地元メキシコに招待するなどゴロフキンと友好な関係を構築しているWBCにしても成り行き次第でどんな処置を通告するか予断を許さない。WBA(スーパー王座)を合わせ3本のメジャーベルトを保持するゴロフキンだが、タイトル認定団体はルールをちらつかせながら私欲優先の暴挙にはしるかもしれない。

村田はファルカンとV2戦か

 カネロの薬物反応に端を発し、GGGが統一した3冠は分裂の運命に立たされている。すでにIBFはデレフヤンチェンコとスーパーウェルター級王者から転向したデメトゥリアス・アンドラーデ(米)との王座決定戦をプッシュ。WBCは具体的な動きはないが、前記のチャーロvsセンテノの勝者が意外に早く正規チャンピオンに昇格することだってありえる。

 もしゴロフキンがカネロとの再戦に敗れるとスーパーミドル級に転級するのではないかと私は見ている。反対にGGGが勝てば第3戦の可能性が高いと見ていたが、カネロのトラブルでわからなくなった。当代人気ナンバーワンともいえるカネロだが、汚点を残したことで復帰が許されてもどんな未来が待っているか楽観はできない。

 そして村田。アラム・プロモーターはロンドン五輪金メダリストの2度目の防衛戦をラスベガスで開催したい主旨を明かした。相手はロンドンの決勝で当たった銀メダリスト、エスキバ・ファルカン(ブラジル)が有力。そこで勝利を収め、ゴロフキンも王座を守るといっそう夢の対決に前進しそうだが、WBAの“スーパー”王者(ゴロフキン)と同“レギュラー”王者(村田)の一騎打ちは果たしてすんなりグリーンライトが点るのか?

エンダム陣営は村田を高く評価

 先に触れたように米国メディアの中にはゴロフキンの黄昏時を指摘するところもある。しかし私は細部は別にして、まだまだ致命的な戦力低下はないと推測する。村田ファンにすれば「あっては困る」というべきか。カネロとの再戦は確かに難関に違いないが、中止になる前、テレビで具体的な攻略法を堂々と公開しており、揺るがない勝利への自信を感じさせた。もしかしたらそれはカネロを幻惑する作戦なのかもしれないが、真っ向勝負を貫くカザフスタン人に迷いは感じられない。

 一方、村田のブランダムラ戦のパフォーマンスは米国でも好意的に受け取られている。村田に王座を明け渡したアッサン・エンダムのペドロ・ディアス・トレーナーにたずねると「素晴らしい試合だった。今の日本のリングのリーダーは村田。ファンが望むものを披露し満足させたと思う。人間としてもエクセレントな人物だ」とベタぼめ。エンダム2戦との比較を聞くと「パワーやフィジカルはより強化された印象がした。これはチームの業績。テクニックも向上している。あとは試合運びが上達すれば完璧な選手に近づくだろう」とアドバイスする。

 ディアス氏に「村田はゴロフキンといつ対戦できるか?」と質問した。「やはりゴロフキン、カネロ、サンダース(ビリー・ジョー・サンダース=英。WBO王者)はトップグループ。彼らとは現状で不利な予想が立つだろう。ディフェンスの強化が急務だと思う。そして展開をコントロールする時間をできるだけ長く持ちたい。でも疑いなく、帝拳ジムのチームワークで村田は課題を次々と克服していくに違いない」(ディアス氏)。同氏は「いつ」とは言わなかったが、近い将来であることを匂わせた。

ゴロフキンは村田戦で何本ベルトを持っている?右はサンチェス・トレーナー(写真:ボクシングシーン)
ゴロフキンは村田戦で何本ベルトを持っている?右はサンチェス・トレーナー(写真:ボクシングシーン)

19年対決に向けて

 今のところゴロフキンvs村田のメガファイトが実現するのは来年2019年と予測される。これはアラム氏が米国メディアに語った時期と一致する。来年のいつになるかは今後の動向次第。その時ゴロフキンは何本ベルトを保持しているだろうか。

 ベルトの分散はファンに好意的に受け取られない。だが途中で村田が他の団体の王者に勝って統一チャンピオンに就いている可能性もあるわけで、それはそれでファンにはうれしい悲鳴となる。会場は東京ドームが濃厚。マイク・タイソンの2試合以来の世界的なビッグイベントが待っている。勝敗は別としてゴロフキンは引退の花道か。これまで述べたように実現まで困難が予想される。しかし村田とともに我々もしばらく壮大な夢を追い続けたい。

ボクシング・ビート米国通信員

岩手県奥州市出身。近所にアマチュアの名将、佐々木達彦氏が住んでいたためボクシングの魅力と凄さにハマる。上京後、学生時代から外国人の草サッカーチーム「スペインクラブ」でプレー。81年メキシコへ渡り現地レポートをボクシング・ビートの前身ワールドボクシングへ寄稿。90年代に入り拠点を米国カリフォルニアへ移し、フロイド・メイウェザー、ロイ・ジョーンズなどを取材。メジャーリーグもペドロ・マルティネス、アルバート・プホルスら主にラテン系選手をスポーツ紙向けにインタビュー。好物はカツ丼。愛読書は佐伯泰英氏の現代もの。

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