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打倒!帝京へ。早大、スクラム勝負

松瀬学ノンフィクション作家(日体大教授)

ラグビーの全国大学選手権の決勝を翌日に控えた11日、覇権奪回を目指す早大は、東京・上井草のグラウンドで約1時間、最終調整に取り組んだ。まずは全部員で円陣を組み、出場選手が決意表明。主将のプロップ垣永真之介は涙を流し、声を張り上げた。

「最後の約束をする。絶対、優勝してくる。見ていてくれ!」

『打倒!帝京』の条件は、何といっても、セットプレーで相手にプレッシャーをかけ、一次の攻防で優位に立つことである。とくに、この1年間、ひたむきに強化してきたスクラム。準決勝の筑波戦でスクラムトライを奪い、FWは自信を深めている。「(FW)8人で勝つぞ!」。そう声を出し、一回だけ、スクラムマシンを押し続けた。圧力がある。8人がぎゅっと固まる、タテ長のいいスクラムだった。

スクラムの大黒柱、3番の垣永主将は「もう楽しみです」と言う。

「こちらはチャレンジャーなので思い切ってやりたい。セットプレーの安定は(勝利の)絶対条件。スクラム練習は時期にかかわらず、(本数を)組みこんできた。やることはやってきました」。王者帝京の強さを認めているからだろう、なんども挑戦というコトバを口にした。「我慢比べです。(勝利への)執念がつよい方が勝つ」

早大は、ベストの布陣で決勝戦に挑む。対抗戦の試合(●31-40)でプレーしなかった日本代表のFB藤田慶和がこんどは出場する。他のバックス選手もプレーの精度が上がり、攻撃力という点では対抗戦の時より数段アップしている。

後藤禎和監督は、「僕はこの2年間、帝京しか見てこなかった」と打ち明ける。

マークするのは相手SHとしながらも、「ただ帝京の場合は、ほぼ15人全員、突破力がある」と警戒する。

「基本的には、多少、小細工はしますけど、やっぱり真っ向勝負の部分で勝てないと勝ち切れない。帝京からは、ずっと、ずっと分厚い攻撃がくるので、こっちも(ココロを)折れずに、ずっと、ずっと分厚いディフェンスをすることができるかどうか。勝つための準備はできました」

優勝した時にだけ歌うことを許される部歌『荒ぶる』まで、あと1勝となった。12日。帝京大の5連覇阻止へ、スクラムの如く、約130人の部員の魂が「ひとつ」になる。

ノンフィクション作家(日体大教授)

早稲田大学ではラグビー部に所属。卒業後、共同通信社で運動部記者として、プロ野球、大相撲、五輪などを担当。4年間、米NY勤務。02年に同社退社後、ノンフィクション作家に。1988年ソウル大会から2020年東京大会までのすべての夏季五輪ほか、サッカー&ラグビーW杯、WBC、世界水泳などを現場取材。人物モノ、五輪モノを得意とする。酒と平和をこよなく愛する。日本文藝家協会会員。元ラグビーワールドカップ組織委員会広報戦略長、現・日本体育大学教授、ラグビー部部長。著書は近著の『荒ぶるタックルマンの青春ノート』(論創社)ほか、『汚れた金メダル』『なぜ、東京五輪招致は成功したのか』など多数。

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