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藤井聡太名人に挑戦するのは誰か? 熾烈な残留争いで生き残るのは? 2月29日、A級順位戦最終9回戦

松本博文将棋ライター

 2月29日。静岡県静岡市・浮月楼において第82期順位戦A級最終9回戦、一斉対局がおこなわれます。対戦カードは以下の通りです。(▲=先手、△=後手)

△豊島 将之九段(6勝2敗)-▲菅井 竜也八段(5勝3敗)

▲永瀬 拓矢九段(5勝3敗)-△中村 太地八段(4勝4敗)

▲渡辺  明九段(4勝4敗)-△広瀬 章人九段(3勝5敗)

△佐藤 天彦九段(4勝4敗)-▲稲葉  陽八段(3勝5敗)

▲斎藤慎太郎八段(3勝5敗)-△佐々木勇気八段(3勝5敗)

 藤井聡太名人(八冠)への挑戦権を争うのは豊島九段、菅井八段、永瀬九段の3人です。

 渡辺九段は残留が決まっています。

 他6人は降級の可能性があります。佐藤九段、中村八段、広瀬九段、斎藤八段、稲葉八段の5人は勝てば自力で残留決定。佐々木八段は他力の立場ですが、勝てば残留の可能性があります。

△豊島将之九段(6勝2敗)-▲菅井竜也八段(5勝3敗)

 6連勝からの2連敗と、流れはよくない豊島九段ですが、それでも依然トップ。勝てば無条件で名人挑戦が決まります。菅井八段が勝てば6勝3敗で並び、プレーオフへと持ち込まれます。

 過去の対戦成績は豊島10勝、菅井11勝と拮抗。今年度は2023年11月、王将戦リーグで当たり、三間飛車に振った菅井八段が勝っています。本局も、まずは菅井八段がどこへ飛車を振るかが注目されます。

▲永瀬拓矢九段(5勝3敗)-△中村太地八段(4勝4敗)

 永瀬九段は挑戦争いの上では、他力の立場。自身が勝ち、豊島-菅井戦で菅井勝ちの場合のみ、3者プレーオフに持ち込めます。

 中村八段は残留を争う立場。勝てば自力で残留決定。負けると降級の可能性があります。

 両者の過去の対戦成績は永瀬4勝、中村3勝で、やはり拮抗した成績。相居飛車で現代最前線の戦型が予想されます。

▲渡辺明九段(4勝4敗)-△広瀬章人九段(3勝5敗)

 渡辺九段はただ一人、挑戦も降級もない立場。とはいえもちろん、勝つと負けるとでは、来期の順位が大きく違ってきます。

 広瀬九段は勝てば自力で残留決定。負けると降級の可能性があります。4勝5敗でダメとすればなんとも厳しいですが、過去のA級でも4勝で落ちた例はあります。

 両者の過去の対戦成績は渡辺21勝、広瀬15勝。今年度は2023年4月、竜王戦1組出場者決定戦で対戦し、相掛かりから広瀬九段が勝っています。やはりここも相居飛車の戦いとなりそうです。

△佐藤天彦九段(4勝4敗)-▲稲葉陽八段(3勝5敗)

 2017年に名人戦七番勝負を戦った両者。今期A級では残留を争うことになりました。

 佐藤九段は勝てば自力で残留決定。残留を争う6人の中では、もっとも有利な立場にあります。しかし、それでも負けると、他局の星取り次第では降級の可能性があります。

 稲葉八段は勝てば自力で残留決定。負けると降級決定です。

 両者の過去の対戦成績は佐藤11勝、稲葉7勝。今年度は2023年7月、日本シリーズ1回戦で対戦し、佐藤九段先手で横歩取りに。183手という大熱戦の末、佐藤九段が勝っています。

 両者の対戦ではこれまで、相居飛車の戦型がほとんどでした。しかし最近の佐藤九段は振り飛車をよく採用しています。また稲葉八段も7回戦で永瀬九段を相手に、先手で角換わり四間飛車を採用していました。

▲斎藤慎太郎八段(3勝5敗)-△佐々木勇気八段(3勝5敗)

 負けた方は無条件で降級という鬼勝負。A級の厳しさが端的に現れた大一番といえるでしょう。

 斎藤八段は勝てば無条件で残留が決まります。佐々木八段は他力の立場ですが、自身が勝ち、中村八段、広瀬九段、稲葉八段のうち誰か一人でも負ければ残留が決まります。

 過去の対戦成績は、佐々木2連勝のあと、斎藤3連勝。今年度は2023年11月、竜王戦2組昇級者決定戦決勝で対戦しています。斎藤八段先手で角換わり腰掛銀となり、斎藤八段が勝って1組昇級を決めています。

「将棋界の一番長い日」と言われるA級順位戦最終日。果たして今年は、どのようなドラマが生まれるのでしょうか。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)、『など。

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