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伊藤匠七段、対局数・勝数でトップ維持 藤本渚四段、藤井聡太八冠は史上最高勝率を更新できるか?

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 将棋界では2023年中の公式戦対局が終わりました。年度成績(2023年4月-2024年3月)のランキングは、年明け1月から終盤戦を迎えます。

 年末の大きな勝負となった棋王戦挑決二番勝負は伊藤匠七段がは広瀬章人九段を相手に第1局、第2局と連勝。伊藤七段が藤井聡太棋王(八冠)への挑戦を決めました。

 藤井八冠と伊藤七段は同じ21歳。竜王戦に続いて棋王戦と、タイトル戦番勝負で早くも2度目の対戦を迎えます。

 伊藤七段は現在9連勝中で、年度成績は39勝11敗(勝利0.780)。対局数、勝数の2部門でトップを走っています。

 伊藤七段の2021年度成績は45勝10敗(勝率0.818)。藤井聡太現八冠を抑えて、勝率1位を達成しています。

「藤井さんはタイトル戦中心の対局であの勝率を出しているので比べられないですし、最後は紙一重の勝負だったので、今年1位になれたのは運がよかったと思っています」
(『将棋年鑑2022』54p)

 今年度勝率部門でトップに立ったのは藤本渚四段(18歳)です。今年度成績は36勝6敗。勝率0.857は史上最高勝率ペースです。

 藤本四段は現時点における現役最年少棋士。早くからその才能は高く評価されていました。フルシーズン初参戦の今年度、いよいよその本領を発揮してきた感があります。若手が参加する棋戦では、新人王戦では準優勝。加古川青流戦では優勝を果たしています。また八大タイトル戦の叡王戦は参加1期目で四段戦を勝ち抜き本戦進出。王位戦も参加1期目でリーグ入りを果たしています。

 若き藤井八冠よりも、さらに3歳も若い藤本四段。挑戦権獲得に近づけば、新しいヒーローの登場と盛り上がることでしょう。

 そして中原誠五段(現16世名人)が1967年度に記録した不滅の勝率0.855(47勝8敗)を抜けるかどうかも、ここから年度末にかけての大きな注目ポイントとなりそうです。

 藤井八冠は銀河戦決勝(11月1日収録、12月23日配信)で丸山忠久九段を相手に敗戦。八冠達成(王座獲得)後、初めての黒星を喫しました。

 藤井八冠の今年度成績は33勝6敗(勝率0.846)。竜王も防衛し、日本シリーズも優勝と、トップクラスを相手に、驚異的な成績をあげ続けていることに変わりはありません。ただし、年間最高勝率ペースからは少し後退となりました。

 藤井八冠はこのあと、王将戦七番勝負と棋王戦五番勝負で防衛戦が始まります。また、朝日杯、NHK杯と早指しの棋戦の対局も控えています。

 史上初の八冠制覇が達成された2023年度。史上最高勝率更新はなるでしょうか。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)、『など。

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