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羽生善治九段(53)朝日杯二次予選決勝進出 新鋭・岡部怜央四段(24)を下す

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 12月14日。東京・将棋会館において第17回朝日杯将棋オープン戦二次予選1回戦▲羽生善治九段(53歳)-△岡部怜央四段(24歳)戦がおこなわれました。

 10時に始まった対局は11時59分に終局。結果は111手で羽生九段の勝ちとなりました。

 羽生九段は二次予選決勝に進出。14時から近藤誠也七段と対戦します。

レジェンド、さすがの勝利

 朝日杯は持ち時間40分で、使い切ったら1手60秒未満で指す設定です。

 多くの棋戦で圧倒的な実績を誇る将棋界のレジェンド羽生九段は、どんな持ち時間でもその強さを発揮してきました。朝日杯では過去に朝日杯で5回の優勝を誇ります。

 対して新鋭の岡部四段は参加2期目。今期は一次予選を勝ち抜いて、二次予選にまで進んできました。

 羽生九段先手で、戦型は相掛かりに。羽生九段が積極的に飛車で3筋の横歩を取ると、岡部四段は端1筋を突いて反発。以後、むずかしい中盤戦が続きました。

 両者ともに「一分将棋」に入っての終盤戦。羽生九段は飛車を取らせる代償に岡部玉に迫る形を得て、優位に立ちます。

 今期朝日杯は一次予選、二次予選と自動記録が採用されています。対局時計のボタンを押すのは棋士自身です。

 83手目。

「50秒、1、2、3、4、5、6、7、8」

機械の音声音で秒が読まれる中、羽生九段は金を取って香を成り、王手をかけます。そこで一瞬、ボタンの位置を迷ったか、右手が泳ぎました。

「9」

 そこまで読まれて羽生九段はぎりぎりボタンを押しました。時間切れは文字通り、機械的に即負けとなるので、最後までなにが起こるのかわかりません。

 羽生九段は相手の大駒を引き揚げさせながら、相手玉を寄せていく勝ち方を選びました。最後は羽生玉は安泰で、中段に引っ張りだされた岡部玉はあまり長く持たない形。

 111手目、羽生九段が桂で歩を取った手を見て、岡部四段は投了しました。

 レジェンド羽生九段は本戦進出まであと1勝です。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)など。

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