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羽生善治挑戦者、意表の金打ちで藤井聡太王将相手にペースをつかめるか? 王将戦第2局1日目終了

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 1月21日。大阪府高槻市「摂津峡花の里温泉 山水館」において第72期ALSOK杯王将戦七番勝負第2局▲羽生善治挑戦者(52歳)-△藤井聡太王将(20歳)戦、1日目の対局がおこなわれました。棋譜は公式ページをご覧ください。

 羽生九段先手で、戦型は相掛かり。現代最前線の戦いとなりました。

 角交換のあと、藤井王将は自陣に角を据えます。昨年度B級1組6回戦▲横山泰明七段-△藤井戦と同じ進行で、藤井王将にとっては経験のある形です。

 35手目。羽生九段は自陣端に角を打ちます。初見では驚きそうな一手。ただし今年度A級2回戦▲豊島将之九段-△斎藤慎太郎八段戦で現れています。豊島九段の研究の深さが話題となった一局でした。

 38手目。再度の角交換に、藤井王将は歩ではなく銀で応じます。ここからは前例を離れた戦いとなりました。

 羽生挑戦者が1筋に歩を打って攻め、激しい進行となったところで昼食休憩です。

 再開後、羽生九段の攻めに藤井王将の受けというやり取りが続きます。

 羽生挑戦者が角金交換したあとの59手目。羽生挑戦者は3筋の藤井玉から遠く離れた8筋に金を打ち込みます。視野の広い、いかにも羽生流という一手でした。

 これは事前の研究手なのか、あるいはこの場で考えたものなのかは、羽生挑戦者本人にしかわかりません。いずれにしても、さすがは羽生挑戦者といったところです。

 藤井王将も意表を突かれたか、熟慮に沈みました。受けを誤れば、たちまち寄り形となってしまう可能性もあります。

 考えること56分。藤井王将は4筋二段目に玉を上がって受けました。5筋からの飛車の打ち込みに備えたものですが、すると今度は2筋からの飛車の打ち込みが生じます。

 18時。61手目を羽生挑戦者が封じて、指しかけとなりました。

 現状はやや羽生挑戦者がペースをつかみつつある流れのようにも見えます。また持ち時間8時間のうち、残りは羽生5時間4分、藤井3時間36分。時間の面でも羽生挑戦者がリードしています。

 明日2日目は封じ手が開かれたあと、9時再開。昼食休憩をはさみ、夕食休憩はなく、通例では夕方から夜にかけて終局となります。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)、『など。

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