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全部勝ち抜けば最短で秋の王座戦! 藤井聡太五冠(20)全八冠制覇の可能性

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 竜王、王位、叡王、王将、棋聖と5つのタイトルをあわせもつ藤井聡太五冠(20歳)。これまでのタイトル戦番勝負登場回数は11回で、そのすべてを制するという、これまでの将棋界の常識では考えられないペースで勝ち続けています。

 藤井竜王自身は記録には興味がないと、常に言い続けています。しかし多くの観戦者にとってみれば、全八冠達成に関する興味は尽きません。その最短の可能性についてたどってみましょう。

王将防衛で五冠堅持

 羽生善治九段(52歳)を挑戦者に迎え、社会的にも大きく注目されているALSOK杯王将戦七番勝負。第1局は藤井王将が勝ち、1勝目をあげています。

 第2局は1月21日・22日におこなわれます。

棋王獲得で史上最年少六冠

  棋王戦コナミグループ杯。藤井竜王はベスト4で敗れ、挑戦権獲得はかなり厳しい状況に追い込まれていました。しかし敗者復活戦を勝ち抜き、挑決も制して、渡辺明棋王(38歳)への挑戦を決めています。

 棋王戦五番勝負は2月5日に開幕します。五冠を保持しながら棋王位を獲得すれば、羽生九段に続き、羽生九段よりも若い年齢で、史上2人目の六冠制覇となります。

名人挑戦で七冠チャレンジ

 名人挑戦権を争うA級順位戦では現在、藤井五冠は5勝1敗でトップに立っています。1月18日におこなわれる7回戦、4勝2敗で追う豊島将之九段(32歳)との一戦は大一番といえるでしょう。

 名人戦七番勝負は例年、年度が変わった4月から始まります。史上最年少名人および、七冠チャレンジとなるでしょうか。

叡王戦、挑戦者決定待ち

 防衛戦となる叡王戦は現在、挑戦権を争うトーナメントが開幕したばかりです。現在は1回戦が進行中です。

棋聖戦、挑戦者決定戦待ち

 防衛戦となるヒューリック杯棋聖戦。現在は二次予選決勝が進行中です。

王位戦、挑戦者決定待ち

 伊藤園お~いお茶杯王位戦はこれから挑戦権を争う紅白のリーグが始まります。

王座戦で八冠チャレンジとなるか?

 藤井五冠はこれまで、王座戦に6期参加。最初の1期目にベスト4まで進んだのが最高で、挑戦権獲得までは届いていません。

 挑戦者決定トーナメントでは4連勝が必要。1回戦、2回戦、準決勝、挑決と勝ち抜くためには1敗も許されません。

 藤井五冠は前期、1回戦で大橋貴洸六段(30歳)に敗れています。

 今期王座戦は現在、一次予選、および二次予選が進行中です。タイトル保持者の藤井竜王はシードで挑戦者決定トーナメントからの登場となります。

 トーナメントは例年、4月末から5月はじめにかけて1回戦が進行。7月末から8月はじめ頃、挑決がおこなわれます。藤井五冠が出るだけでも大変な注目が集まるところ、そこに八冠制覇の可能性も残っていれば、すさまじいフィーバーが起こる可能性もありそうです。

 五番勝負は例年、9月から10月にかけておこなわれます。待ち受けるのは、永瀬拓矢王座(30歳)です。永瀬王座は現在4連覇中。今期は名誉王座の資格がかかっています。

 1996年2月。羽生善治現九段は不可能とも思われた全七冠同時制覇を達成しています。将棋界の記録を次々と塗り替えつつある藤井五冠。はたして史上初の全八冠達成はなるでしょうか。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)など。

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