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広瀬章人挑戦者リードの中盤 反撃の機会をうかがう藤井聡太竜王 竜王戦七番勝負第1局2日目始まる

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 10月8日。東京都渋谷区・セルリアンタワー能楽堂において第35期竜王戦七番勝負第1局▲広瀬章人挑戦者(35歳)-△藤井聡太竜王(20歳)戦、2日目の対局が始まりました。棋譜は公式ページをご覧ください。

 昨日1日目。開幕に先立つ振り駒では「と」が3枚出て、広瀬挑戦者の先手と決まりました。

 両対局者は事前に、次のように語っています。

藤井「これまでの対局ですと、こちらが先手番の対局が多かったので。番勝負だと先後半々ということになるので。なんていうかそのあたりも・・・。後手番になったときも含めて考えてはきました」

広瀬「(作戦は)いくつかはもちろん考えてはいるんですけれども、どんな指し方にも対応される方なので、そこをどう見るかっていうか。じっくりした展開に持ち込むのか。それとも乱戦のような感じに持ち込むのかっていうところも含めて、試行錯誤をちょっとしながら進めたいとは思っています」

 2日目朝。両対局者は改めて、駒を初期配置に並べます。

 本局の立会人は島朗九段と松尾歩八段。記録係は福田晴紀三段です。

島「1日目の指し手を読み上げますので、よろしくお願いします」

福田「それでは読み上げます」

 両対局者は福田三段の棋譜読み上げにしたがって前日の指し手を再現していきます。広瀬八段が先手番で用意してきた作戦は角換わりでした。ただし先手側は飛車先の歩を2つ進めるのではなく、1つだけに保留しているのが、広瀬八段の工夫です。

 互いに腰掛銀に組んだあと、藤井竜王は一段目の飛車を左右に動かして間合をはかります。

 43手目。広瀬八段が4筋から仕掛けて開戦。昼食休憩の段階までで42手進みました。

 再開後、広瀬八段は桂を2筋に跳ねます。飛車先の歩の前進を1つだけに留めておいた効果で生じた手段でした。

 57手目。広瀬八段は藤井陣に銀を打ち込んで攻めます。形勢はそれほど差が離れているわけではありませんが、広瀬八段がペースをにぎりつつある流れか。

 59手目。広瀬八段は相手の銀頭に歩を打って攻めます。ここで藤井竜王が60手目を封じて、1日目終了となりました。

 2日目朝。島九段が封じ手を開いて読み上げます。

 藤井竜王の封じ手は、打たれた歩を同銀と応じる手でした。ここで報道陣が退出。両対局者とも茶碗に注がれたお茶を飲みました。

 72手目、広瀬八段は馬(成角)で桂を取りました。対して藤井竜王はすぐに、あたりになっている飛車を逃げます。形勢は広瀬八段リード。藤井竜王はこの先しばらく、好転の機会を待つ進行となりそうです。

 デビュー以来、将棋界の数々の記録を更新中の藤井竜王。2日制の対局で20勝2敗という驚異的な成績を残しています。そのわずかな2敗は、昨年、今年の王位戦第1局でした。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)、『など。

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