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3期連続名人挑戦なるか? 斎藤慎太郎八段(29)A級3回戦で佐藤康光九段(52)を降し2勝1敗

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 9月5日。東京・将棋会館において第81期A級順位戦3回戦▲斎藤慎太郎八段(29歳)-△佐藤康光九段(52歳)戦がおこなわれました。

 5日10時に始まった対局は6日0時19分に終局。結果は101手で斎藤八段が勝ち、リーグ成績は斎藤2勝1敗、佐藤0勝3敗となりました。

斎藤八段、王道の指し回しで勝利

 今期A級10人のうち、ダントツの最年長が佐藤九段です。

 斎藤八段は藤井聡太竜王に次いで、2番目に若いということになります。

 今期ここまで、佐藤九段は藤井竜王、広瀬章人八段に連敗というスタートでした。

 斎藤八段は菅井竜也八段に勝ち、豊島将之九段に負けで1勝1敗というスタートです。

 本局以前の両者の対戦成績は、ともに3勝ずつで五分。A級での対戦は、2期連続で斎藤八段が勝っています。

 本局、後手番の佐藤九段は一手損角換わりからダイレクト向かい飛車の作戦を採用しました。対して斎藤八段は筋違い角を打ち、馬を作って反発。序盤から大きな動きのある進行となりました。

 18手目、佐藤九段は新工夫を見せます。

斎藤「△5二同飛車はあんまり考えたことのない形で。従来の形との比較でけっこう悩ましいなというところはあって。油断してると△9六角(端歩を取って角を捨てる)って出られそうな感じが・・・。佐藤先生、端から銀を出る筋とか指されてたんで、端は常に狙われてるなと思ったんで。ちょっとおとなしく本譜は指したんですが。序盤は失敗したかなと思っていました」

 斎藤八段は奇手も警戒し、様々な可能性を考えながら、駒組を進めます。

斎藤「けっこう苦労の多い将棋になりました」

 佐藤陣は居玉でまとめづらそうなのに対して。斎藤陣は玉を囲って整然とした形。コンピュータ将棋ソフトが示す評価値は斎藤よしです。しかし、そんなの関係ないと言わんばかりの自由な指し回しが佐藤将棋の魅力でしょう。

 40手目。佐藤九段が中段に角を出た局面で夕食休憩に入りました。

斎藤「少し後手に攻勢を取られてるので、まとめにくい局面だなあ、と思っていました」「攻め筋がいろいろとあるんで、こっちは読む変化が多くて。けっこう神経を使う展開になってしまったなと思っていました」

 佐藤九段は斎藤陣左側で桂交換に持ち込んだあと、右側に打ち込み、右隅の香を取りに行きます。

斎藤「(50手目)△2七桂馬は常に気になってたので。ただタイミングがよければ▲3六歩、▲3七桂でかわす。本譜が成立してたかはわからないんですけど、一応そういう考えは常に持ってたんで」

 斎藤八段は手に乗って駒をさばき、優位を築きました。

斎藤「(67手目)▲6七金右と上がれて、なんか模様がよくなったかな、というふうに思ったので。一応、▲3六歩突いてからはプラン通り、比較的進められたかなという気はします」

 斎藤八段は自陣の飛車を取らせる間にスパートをかけ、一気に佐藤玉に迫ります。

斎藤「(勝ちになったと思ったのは)最後で(83手目)▲4三桂と打って▲4一角の筋が見えたところですかね」

 ずっと居玉のままがんばっていた佐藤玉は左側へと逃げていきますが、斎藤八段の追及が厳しく、逃げ切れない形に。佐藤九段は形を作り、斎藤八段がきれいな即詰みに討ち取って、終局となりました。

 斎藤八段はこれで2勝1敗です。

斎藤「今期の(ここまで)3局は、そうですね、序盤があまりうまくいかないことは多い気がするので。今期(A級)3局だけじゃなくて、今期の自戦の将棋が、全部序盤に問題があることが多いので、なにか考えを改めないとな、というのは思ってますね」

 2期連続でA級優勝、名人挑戦の斎藤八段。次節4回戦の藤井竜王戦に勝てば、3期連続も見えてきそうです。

斎藤「今日の将棋と次4回戦も先手番が続くので。やっぱり先手番で白星を先行したいという思いはありますし。次は藤井さんとで、当然大変な相手ですが。そうですね、先手番をがんばって活かせるようにというか。ちょっと課題が残ってる序盤をどうするか、考えたいなと思います」

 3連敗スタートとなった佐藤九段。次は菅井八段との対戦です。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)など。

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